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第二章
ゲレル神官の打算③
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三人とも、先程の私達みたいな反応をしているわね。
まあ、無理もないわ。
いきなり神殿の人間が、内部告発の協力を仰いできたのだから。
などと考えていると、ヴィンセントがおもむろに足を組む。
「ゲレル神官、か。聞いたこともない名前だね。恐らく、かなりの下っ端だと思う。でも……だからこそ、信用は出来そうだ。腐敗した上層部に毒されていない訳だから。ただ、身辺調査は必要かな」
『まだ結論は出せない』と主張し、ヴィンセントは天井を見上げた。
「それで、もし白なら────結託するのも一つの手だと思うよ。どの道、悪に染まってない神官とは接触を図りたいと考えていたからね。粛清後の神殿を任せるために」
「さすがに神殿内部を荒らすだけ荒らして、放置は出来ないからな」
『アフターケアは必要だろう』と語るルパート殿下に、私と祖父は共感を示す。
神殿の権威が失墜したままだと、様々な弊害を生むため。
民の混乱を鎮めるという意味でも、早めに復活してほしかった。
「────えっ?神殿を丸ごと潰す訳じゃないんですか?」
思わずといった様子で声を上げ、唖然とするのは妹のアイリス。
困惑気味に瞳を揺らす彼女を前に、私はパチパチと瞬きを繰り返した。
「いいえ、神殿という組織そのものは残すわ。ただ、内部……主に上層部の人間を入れ替えるだけ。神殿はなくてはならない存在だから」
「……そう」
アメジストの瞳に少し落胆を滲ませ、アイリスは俯いた。
多分、理解は出来ても納得は出来ないのだろう。
『あんなに酷い組織なのに……』とでも言いたげな態度を取る彼女の前で、私はそっと眉尻を下げる。
割り切れ、と言うのはあまりにも酷な気がして。
でも、だからと言って神殿の完全崩壊に賛同も出来ない。
『どうしよう?』とすっかり困り果てていると、不意にルパート殿下が口を開く。
「悪いのはあくまで上層部の人間であり、組織そのものじゃない。敵を見誤るな」
「!」
ハッとしたように目を見開き、アイリスは手を握り締めた。
ルパート殿下の鋭い指摘に、感銘を受けているのだろう。
先程までの暗い雰囲気が嘘のように霧散していく中、ヴィンセントは
「それに、君は神聖力のおかげで狩猟大会の一件を切り抜けられたんだろう?なら、その力の源である神の城には多少の情けを掛けてもいいんじゃないかい?」
と、最後のダメ押しを行う。
すると、アイリスは観念したかのように肩の力を抜いた。
「そうですね。報復の対象は、神殿の上層部のみに絞るとします」
おもむろに顔を上げ、アイリスは心からの納得を示した。
『良かった』と安堵する私と祖父を他所に、彼女はヴィンセントの方へ目を向ける。
「ところで、上層部の粛清はいつ頃になりそうなんですか?まだ時間、掛かります?」
調査の進捗状況を尋ねるアイリスに対し、ヴィンセントはスッと目を細めた。
かと思えば、人差し指を立てる。
『あと一ヶ月ってこと?』と疑問に思う私達の前で、彼はニッコリ笑った。
「上手く行けば、あと────一週間で終わるよ」
まあ、無理もないわ。
いきなり神殿の人間が、内部告発の協力を仰いできたのだから。
などと考えていると、ヴィンセントがおもむろに足を組む。
「ゲレル神官、か。聞いたこともない名前だね。恐らく、かなりの下っ端だと思う。でも……だからこそ、信用は出来そうだ。腐敗した上層部に毒されていない訳だから。ただ、身辺調査は必要かな」
『まだ結論は出せない』と主張し、ヴィンセントは天井を見上げた。
「それで、もし白なら────結託するのも一つの手だと思うよ。どの道、悪に染まってない神官とは接触を図りたいと考えていたからね。粛清後の神殿を任せるために」
「さすがに神殿内部を荒らすだけ荒らして、放置は出来ないからな」
『アフターケアは必要だろう』と語るルパート殿下に、私と祖父は共感を示す。
神殿の権威が失墜したままだと、様々な弊害を生むため。
民の混乱を鎮めるという意味でも、早めに復活してほしかった。
「────えっ?神殿を丸ごと潰す訳じゃないんですか?」
思わずといった様子で声を上げ、唖然とするのは妹のアイリス。
困惑気味に瞳を揺らす彼女を前に、私はパチパチと瞬きを繰り返した。
「いいえ、神殿という組織そのものは残すわ。ただ、内部……主に上層部の人間を入れ替えるだけ。神殿はなくてはならない存在だから」
「……そう」
アメジストの瞳に少し落胆を滲ませ、アイリスは俯いた。
多分、理解は出来ても納得は出来ないのだろう。
『あんなに酷い組織なのに……』とでも言いたげな態度を取る彼女の前で、私はそっと眉尻を下げる。
割り切れ、と言うのはあまりにも酷な気がして。
でも、だからと言って神殿の完全崩壊に賛同も出来ない。
『どうしよう?』とすっかり困り果てていると、不意にルパート殿下が口を開く。
「悪いのはあくまで上層部の人間であり、組織そのものじゃない。敵を見誤るな」
「!」
ハッとしたように目を見開き、アイリスは手を握り締めた。
ルパート殿下の鋭い指摘に、感銘を受けているのだろう。
先程までの暗い雰囲気が嘘のように霧散していく中、ヴィンセントは
「それに、君は神聖力のおかげで狩猟大会の一件を切り抜けられたんだろう?なら、その力の源である神の城には多少の情けを掛けてもいいんじゃないかい?」
と、最後のダメ押しを行う。
すると、アイリスは観念したかのように肩の力を抜いた。
「そうですね。報復の対象は、神殿の上層部のみに絞るとします」
おもむろに顔を上げ、アイリスは心からの納得を示した。
『良かった』と安堵する私と祖父を他所に、彼女はヴィンセントの方へ目を向ける。
「ところで、上層部の粛清はいつ頃になりそうなんですか?まだ時間、掛かります?」
調査の進捗状況を尋ねるアイリスに対し、ヴィンセントはスッと目を細めた。
かと思えば、人差し指を立てる。
『あと一ヶ月ってこと?』と疑問に思う私達の前で、彼はニッコリ笑った。
「上手く行けば、あと────一週間で終わるよ」
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