私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第二章

ゲレル神官の打算②

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「そうですか。では、今日のところはお暇させていただきます」

 『色良い返事をお待ちしております』と言い、ゲレル神官はソファから立ち上がった。
かと思えば、最後にもう一度お悔やみの言葉を口にして去っていく。
どうやら、継母の死を弔いたい気持ちに嘘はないようだ。
『単なる建前かと思ったのに』と思案しつつ、私は一つ息を吐く。

「予想外の方向へ話が転んだわね」

「そうね。私、神殿の関係者は全員敵だと思っていたけど……そうやって、一括りにしてはいけないと学んだわ」

 隣に座るアイリスは、どこか憑き物が落ちたかのような表情かおで前を見据える。
先程より明らかに澄んでいるアメジストの瞳を前に、私は少しだけ表情を和らげた。
ゲレル神官はアイリスにいい刺激を与えてくれたようね、と感じて。
『同席を許可して、正解だった』と頬を緩める中────不意に応接室の扉をノックされた。
『ゲレル神官が忘れ物でもしたのかしら?』と思い、直ぐに入室の許可を出すと、扉が開かれる。

「やあ、二人とも」

 そう言って、こちらに片手を上げるのはヴィンセントだった。
祖父より連絡を受けて駆けつけてくれたのか、少し髪が乱れている。
『神殿の者はもう帰った後かな?』と首を傾げる彼は、キョロキョロしながら室内へ足を踏み入れた。
すると、その後ろからルパート殿下や祖父も姿を現す。

「邪魔するぞ」

「無事に面会は終わったようだな」

 『入れ違いになったか』と肩を竦め、祖父は奥に歩を進めた。
かと思えば、ヴィンセント達の着席を待ってから自分も腰を下ろす。

「して、話し合いはどうなった?」

 どことなく緊張した面持ちで本題を切り出し、祖父は『何か失礼なことでも言われたか』と心配した。
ヴィンセントやルパート殿下も同じようにこちらの身を案じ、じっと見つめてくる。

「えっと……それがちょっと変な方向へ進みまして」

 私はどう説明しようか迷いつつ、髪を耳に掛けた。
と同時に、顔を上げる。

「実は────」

 ゲレル神官の言動を出来るだけ細かく……また、自分の感情抜きで語り、私は男性陣の反応を窺った。
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