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第一章

家族①

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◇◆◇◆

 こ、これは一体……!?どうなっているの!?

 『火事になった』と聞いて嫌な予感を覚え、現場に駆けつけてみれば……まさかのインフェルノ────地獄の業火を発見する。
黒い炎だと聞いていたため、何となく予想はしていたが……ここまで火力の高いものは初めて見た。
『どれだけ魔力を使ったの!?』と混乱しつつ、私も

「インフェルノ」

 黒い炎を顕現させる。
そして薄く広げ、盾にのようにすると────辺りの炎をじわじわ吸収していく。
これなら、盾の強度も増して一石二鳥だ。

「あら?案外すんなり支配下に置けたわね。普通は術者から抵抗されるのだけど」

 反発もせずに吸収されていく炎を前に、私はジリジリ前へ進んでいく。
その後ろには、皇室の騎士の姿があった。
というのも、私はあくまで事態収束に力を貸す形でここに来ているため。

 自分で言うのもなんだけど、炎の扱いはこの場に居る誰よりも上手いからね。

 『小さい頃から、たくさん練習してきたもの』と考えつつ、私は吸収した分だけ盾の範囲を広げる。
ジワジワと相手の炎を取り込んでいく中、不意に────

「セシリア……!何でここに……!?」

 ────聞き覚えのある声が、耳を掠めた。
ハッとして顔を上げる私は、キョロキョロと辺りを見回す。
すると、お得意の水魔法で地道に消火活動を行っているヴィンセントが目に入った。

「ヴィンセント……!やっぱり、ここに居たのね!」

 予想が的中していたことを確信し、私は『協力を申し出て良かった』と考える。

「ルパート殿下とアイリスは……!?まさか、この炎の中に居るの!?」

「分からない……ただ、一人は外へ脱出した筈だよ」

 二人の気配を探っているのか、ヴィンセントは目を閉じて神経を研ぎ澄ませた。
かと思えば、『うん、やっぱり一人は外へ出ている』と言い切る。

「でも、一人は炎の中に取り残されているのよね……!?なら、助けないと!」

 同じ炎の使い手として、『インフェルノ』の恐ろしさはよく理解しているので、私は焦りを覚える。
『この炎に触れたら、火傷程度じゃ済まない!』と思案する中、ヴィンセントはスッと目を細めた。

「それはもちろん。ただ、この炎をどうにかしないことには何も出来ない」

「それじゃあ、私の魔法で何とか……」

 ────する。

 とは到底言えず……口篭る。
どんなに優秀な魔導師でも、あったものをなかったことにするのは不可能だから。
しかも、ここは森の中……炎にとって、有利なフィールド。消火はより困難を極めるだろう。
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