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第一章
取り引き《ヴィンセント side》③
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「……何故、私がルパートに肩入れしていると思うんだ?」
『そんな素振りは一切見せなかった筈……』と訝しむ彼に対し、僕はこう切り返す。
「貴方の腹心である、ビルソン卿を一緒に行かせたからです」
「なっ……!?どうして、ビルソン卿が私の腹心だと……!?」
思わずといった様子で声を荒らげるロジャー皇帝陛下は、『誰も知らない筈なのに……!』と驚いた。
かと思えば、慌てて表情を取り繕う。
まさかそこまでバレているとは思ってなくて、柄にもなく取り乱してしまったのだろう。
コホンコホンと咳払いする彼を前に、僕は『へぇー……この情報も当たりだったんだ』と頬を緩める。
「とある方から聞きました」
「それは一体、誰だ────と言っても、答えくれる訳ないか」
「はい」
間髪容れずに首を縦に振り、僕はティーカップをソーサーの上に戻した。
『そろそろ、折れてくれるだろうか』と思案する中、ロジャー皇帝陛下は大きく息を吐いて黙り込む。
どうやら、まだ腹を決め兼ねているらしい。
余程慎重になっているのか、それとも年齢を気にしているのか……まあ、なんにせよ────そろそろ、鬱陶しいな。
『丁寧に対応するのも疲れた』と溜め息を漏らしつつ、僕はそっと口元に手を当てた。
「国境を警備しているクライン公爵家なら、ごく自然に殿下と接触出来る上、さりげなくサポートすることも可能です。その逆も然りですが」
「この私を脅すつもりか?」
「いえいえ、脅すなんてそんな……私はただ、『そういうことも出来ますよ』と可能性を提示しているだけです。謂わば、例え話ですよ」
おどけるように肩を竦め、僕はニコニコと笑う。
でも、きっとロジャー皇帝陛下は気づいているだろう。
────僕の目が笑っていないことに。
「陛下、僕は基本とても穏やかで温厚なのですが、この世に三つ許せないことがあります」
「ほう?それはなんだ?」
若干表情を強ばらせながら話の先を促すロジャー皇帝陛下に、僕は笑みを深める。
「一つ、セシリアの健康を害されること。二つ、セシリアの幸せを妨げられること。三つ、セシリアと僕の仲を引き裂かれること。今回は見事に全部、当てはまっていますね。なので────」
そこで一度言葉を切ると、僕は意味ありげに両手を広げた。
「────僕はたとえこの手を血で赤く染めてでも、セシリアをあの家から出しますよ。まあ、その血が誰になるかは分かりませんけど」
『高貴な方が血を流すことになるかもしれませんね』と述べ、僕は第三皇子の暗殺を匂わせる。
途端に顔色を悪くするロジャー皇帝陛下の前で、僕はクスリと笑みを漏らした。
「陛下、我が家の習性はご存じですよね?」
『そんな素振りは一切見せなかった筈……』と訝しむ彼に対し、僕はこう切り返す。
「貴方の腹心である、ビルソン卿を一緒に行かせたからです」
「なっ……!?どうして、ビルソン卿が私の腹心だと……!?」
思わずといった様子で声を荒らげるロジャー皇帝陛下は、『誰も知らない筈なのに……!』と驚いた。
かと思えば、慌てて表情を取り繕う。
まさかそこまでバレているとは思ってなくて、柄にもなく取り乱してしまったのだろう。
コホンコホンと咳払いする彼を前に、僕は『へぇー……この情報も当たりだったんだ』と頬を緩める。
「とある方から聞きました」
「それは一体、誰だ────と言っても、答えくれる訳ないか」
「はい」
間髪容れずに首を縦に振り、僕はティーカップをソーサーの上に戻した。
『そろそろ、折れてくれるだろうか』と思案する中、ロジャー皇帝陛下は大きく息を吐いて黙り込む。
どうやら、まだ腹を決め兼ねているらしい。
余程慎重になっているのか、それとも年齢を気にしているのか……まあ、なんにせよ────そろそろ、鬱陶しいな。
『丁寧に対応するのも疲れた』と溜め息を漏らしつつ、僕はそっと口元に手を当てた。
「国境を警備しているクライン公爵家なら、ごく自然に殿下と接触出来る上、さりげなくサポートすることも可能です。その逆も然りですが」
「この私を脅すつもりか?」
「いえいえ、脅すなんてそんな……私はただ、『そういうことも出来ますよ』と可能性を提示しているだけです。謂わば、例え話ですよ」
おどけるように肩を竦め、僕はニコニコと笑う。
でも、きっとロジャー皇帝陛下は気づいているだろう。
────僕の目が笑っていないことに。
「陛下、僕は基本とても穏やかで温厚なのですが、この世に三つ許せないことがあります」
「ほう?それはなんだ?」
若干表情を強ばらせながら話の先を促すロジャー皇帝陛下に、僕は笑みを深める。
「一つ、セシリアの健康を害されること。二つ、セシリアの幸せを妨げられること。三つ、セシリアと僕の仲を引き裂かれること。今回は見事に全部、当てはまっていますね。なので────」
そこで一度言葉を切ると、僕は意味ありげに両手を広げた。
「────僕はたとえこの手を血で赤く染めてでも、セシリアをあの家から出しますよ。まあ、その血が誰になるかは分かりませんけど」
『高貴な方が血を流すことになるかもしれませんね』と述べ、僕は第三皇子の暗殺を匂わせる。
途端に顔色を悪くするロジャー皇帝陛下の前で、僕はクスリと笑みを漏らした。
「陛下、我が家の習性はご存じですよね?」
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