私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第一章

狙われたのは《ヴィンセント side》①

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◇◆◇◆

 ────エーデル公爵と夫人を城の牢屋に放り込んでから、早一ヶ月。
僕はなかなか判明しない『元公爵の取り引き相手見知らぬ人物』に、苦悩していた。

 人相だけでなく、年齢や性別も分からないなんて……困ったね。
これじゃあ、特定出来ないよ。

「分かっている事と言えば、フードを深く被った人物ということくらいか」

 『徹底的に身元を隠しているな』と溜め息を零し、僕は自室のソファに腰を下ろした。
テーブルに広げた資料を眺めながら、トントンと指先で膝を叩く。

 皇族絡みという時点で厄介なのは分かっていたけど、まさかここまで情報が出てこないとは。
このまま、元公爵や夫人を問い質しても意味がないかもしれないな。

 『別の方向から攻めてみるか』と考えていると、突然目の前にローブの男が現れる。
サラリと揺れる紺髪をそのままに、膝をつく彼は静かにお辞儀した。

「当然の訪問、申し訳ございません。至急、ご報告したいことが」

 エーデル公爵家の監視兼護衛として派遣した筈のアルマンの登場に、僕は少し驚いた。
『何かトラブルでも起きたのか?』と思案しつつ、スッと目を細める。

「なんだい?」

「エーデル公爵家に────どこからか、暗殺者が送り込まれて来ました」

「!」

 ハッと息を呑む僕は、思わずソファから立ち上がった。
普段このように取り乱すことはないのだが、今回はセシリアも関わっているから。
『彼女の身に何かあったら……』と焦りを覚える僕の前で、アルマンは慌てて言葉を紡ぐ。

「エーデル公爵家の方々は全員無事です。暗殺者はこちらでこっそり処分しましたので」

「……生け捕りにはしなかったの?」

「そうしたかったのですが……全員毒を服用して、自害しました」

 プロの犯行を匂わせ、アルマンは『申し訳ございません』と頭を下げた。
今後のことを考えるなら、絶対に生け捕りにするべきだったから。
せっかくの情報源をダメにしてしまった、と反省しているのだろう。

「はぁ……もういいよ。エーデル公爵家の面々に内緒で守り抜くとなると、生け捕りは難易度が高かっただろうし」
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