私に成り代わって嫁ごうとした妹ですが、即行で婚約者にバレました

あーもんど

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第一章

祖父の話①

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「さて、何を話すか」

 ある程度緊張が解けたとはいえ、あくまで初対面。
共通の話題など、ないに等しい。
『どうするか』と悩んでいる様子の祖父を前に、私は侍女の淹れた紅茶へ手を伸ばした。

「あの、よろしければ家宝が紛失した当時のことを聞いてもよろしいですか?」

 家族団欒と程遠い話題ではあるものの、私達全員に関係のある話と言えばこれしかなく……私はおずおずと相手の顔色を窺う。
『やっぱり、ちょっと不躾だったかしら?』と不安に思っていると、祖父は

「ああ、構わんぞ。こちらへ来た以上、そのうち話そうと思っていたからな」

 と、快諾してくれた。
『情報共有は大事なことだ』と頷きながら、彼は膝に手を置く。

「まず、先にこれだけは言っておく。儂は本当に家宝の紛失に関わっていない。今まで、どこに保管されていたかも知らん。だから、陛下より発見したとの報告を受けた時は心底驚いた」

 『当時、あれだけ探して見つからなかったのに』と語り、祖父は小さく息を吐いた。
かと思えば、おもむろに顎を撫でる。

「それで、ここからは誰にも明かしていない話……いや、儂の憶測だが」

 そう前置きしてから、祖父は少しばかり顔色を曇らせた。

「屋敷から、家宝を持ち出したのは恐らく────ローガンだと思われる」

「!?」

 ここでまさか父の名が出てくるとは思わず、ティーカップを持ったまま固まる。
ヴィンセントの話から一枚噛んでいることは分かっていたが、そこまで深く関わっているとは思わなくて。
『えぇ……?』と困惑する私を前に、祖父は天井を見上げた。

「紛失当時のローガンは挙動不審でな。最初は慌てふためく大人達を見て、不安がっているのかと思っていたが……どうも、様子がおかしかった。それで注意深く行動を見張っていたら、ある場所によく足を運んでいたことが分かってな」

「ある場所というのは……?」

「屋敷の敷地外にある小川だ」

 裏手の山の方を指さし、祖父は『あやつが行きそうな場所じゃないだろう?』と肩を竦める。

 確かにお父様は小川なんて、興味なさそうね。
だからこそ、違和感があるのだけど。
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