37 / 208
第一章
混沌を律する剣③
しおりを挟む
「っ……!」
“混沌を律する剣”によって本来の姿へ戻った“均衡を司りし杖”を前に、父はたじろぐ。
カランと音を立てて床に転がったソレらの前で、思い切り顔を歪めた。
怒りに震える彼を他所に、ロジャー皇帝陛下は席を立つ。
「ふむ。確かにこれは“均衡を司りし杖”だな。昔、一度だけ実物を見たことがある故間違いない」
落ちた杖の近くまで足を運び、ロジャー皇帝陛下はまじまじとソレを眺めた。
「そうなると、セシリア嬢の証言にも信憑性が……」
「し、知りません!私はやってない!」
ここまで来てまだシラを切る父に、ロジャー皇帝陛下はもちろんルパート殿下まで呆れ返る。
『もうさっさと罪を認めておけよ』とでも言うように溜め息を零し、小さく頭を振った。
「まあ、入れ替わりの件は一旦置いておくとして────“均衡を司りし杖”を発見しておきながら秘匿していたこと、許可なく使用していたことは重罪に当たる。いくら、エーデル公爵家と言えど処罰は免れぬぞ」
「っ……!」
グッと両手を握り締め、父は俯く。
もはや入れ替わり云々の話じゃなくなってきたことに、焦りを覚えているのかもしれない。
下手したら、これ反逆罪になるからね。
だって、エーデル公爵家もクライン公爵家も家宝の力の使い道を皇室に委ねることによって、忠誠心を示してきたから。
このような対応は、非常に不味い。
『確実に信用は失っただろうな』と肩を竦め、ことの成り行きを見守る。
もう私の手に終える話じゃないため。
『陛下の咎を待つしかない』と考える中、父は床に膝をついた。
「何故、いつもこうなんだ……」
譫言のようにそう呟き、父はふとこちらを振り返る。
その目はとても濁っていた。
「お前の母も、そして私の父も……お前と同じだった。口を開けば、貴族としての義務や責任だのなんだのと……好きで貴族に生まれた訳じゃないのに」
贅沢すぎる悩みを吐露し、父は目尻に涙を浮かべる。
「私はただ普通に……人間らしく、生きたかっただけなんだ」
“混沌を律する剣”によって本来の姿へ戻った“均衡を司りし杖”を前に、父はたじろぐ。
カランと音を立てて床に転がったソレらの前で、思い切り顔を歪めた。
怒りに震える彼を他所に、ロジャー皇帝陛下は席を立つ。
「ふむ。確かにこれは“均衡を司りし杖”だな。昔、一度だけ実物を見たことがある故間違いない」
落ちた杖の近くまで足を運び、ロジャー皇帝陛下はまじまじとソレを眺めた。
「そうなると、セシリア嬢の証言にも信憑性が……」
「し、知りません!私はやってない!」
ここまで来てまだシラを切る父に、ロジャー皇帝陛下はもちろんルパート殿下まで呆れ返る。
『もうさっさと罪を認めておけよ』とでも言うように溜め息を零し、小さく頭を振った。
「まあ、入れ替わりの件は一旦置いておくとして────“均衡を司りし杖”を発見しておきながら秘匿していたこと、許可なく使用していたことは重罪に当たる。いくら、エーデル公爵家と言えど処罰は免れぬぞ」
「っ……!」
グッと両手を握り締め、父は俯く。
もはや入れ替わり云々の話じゃなくなってきたことに、焦りを覚えているのかもしれない。
下手したら、これ反逆罪になるからね。
だって、エーデル公爵家もクライン公爵家も家宝の力の使い道を皇室に委ねることによって、忠誠心を示してきたから。
このような対応は、非常に不味い。
『確実に信用は失っただろうな』と肩を竦め、ことの成り行きを見守る。
もう私の手に終える話じゃないため。
『陛下の咎を待つしかない』と考える中、父は床に膝をついた。
「何故、いつもこうなんだ……」
譫言のようにそう呟き、父はふとこちらを振り返る。
その目はとても濁っていた。
「お前の母も、そして私の父も……お前と同じだった。口を開けば、貴族としての義務や責任だのなんだのと……好きで貴族に生まれた訳じゃないのに」
贅沢すぎる悩みを吐露し、父は目尻に涙を浮かべる。
「私はただ普通に……人間らしく、生きたかっただけなんだ」
154
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】私はいてもいなくても同じなのですね ~三人姉妹の中でハズレの私~
紺青
恋愛
マルティナはスコールズ伯爵家の三姉妹の中でハズレの存在だ。才媛で美人な姉と愛嬌があり可愛い妹に挟まれた地味で不器用な次女として、家族の世話やフォローに振り回される生活を送っている。そんな自分を諦めて受け入れているマルティナの前に、マルティナの思い込みや常識を覆す存在が現れて―――家族にめぐまれなかったマルティナが、強引だけど優しいブラッドリーと出会って、少しずつ成長し、別離を経て、再生していく物語。
※三章まで上げて落とされる鬱展開続きます。
※因果応報はありますが、痛快爽快なざまぁはありません。
※なろうにも掲載しています。
(完結)私より妹を優先する夫
青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。
ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。
ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
偽聖女として私を処刑したこの世界を救おうと思うはずがなくて
奏千歌
恋愛
【とある大陸の話①:月と星の大陸】
※ヒロインがアンハッピーエンドです。
痛めつけられた足がもつれて、前には進まない。
爪を剥がされた足に、力など入るはずもなく、その足取りは重い。
執行官は、苛立たしげに私の首に繋がれた縄を引いた。
だから前のめりに倒れても、後ろ手に拘束されているから、手で庇うこともできずに、処刑台の床板に顔を打ち付けるだけだ。
ドッと、群衆が笑い声を上げ、それが地鳴りのように響いていた。
広場を埋め尽くす、人。
ギラギラとした視線をこちらに向けて、惨たらしく殺される私を待ち望んでいる。
この中には、誰も、私の死を嘆く者はいない。
そして、高みの見物を決め込むかのような、貴族達。
わずかに視線を上に向けると、城のテラスから私を見下ろす王太子。
国王夫妻もいるけど、王太子の隣には、王太子妃となったあの人はいない。
今日は、二人の婚姻の日だったはず。
婚姻の禍を祓う為に、私の処刑が今日になったと聞かされた。
王太子と彼女の最も幸せな日が、私が死ぬ日であり、この大陸に破滅が決定づけられる日だ。
『ごめんなさい』
歓声をあげたはずの群衆の声が掻き消え、誰かの声が聞こえた気がした。
無機質で無感情な斧が無慈悲に振り下ろされ、私の首が落とされた時、大きく地面が揺れた。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる