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本編
革手袋①
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「それでは、心行くまでパーティーを楽しんでくれたまえ」
『今夜は無礼講だ』と言い放ち、シャノン皇太子殿下は軽く手を上げた。
その瞬間、傍で待機していたオーケストラが音楽を奏でる。
パーティーの始まりを告げるかのように。
「レイチェル、行くぞ」
夫は私の手を引いて歩き出し、玉座の方へ向かって行った。
恐らく、シャノン皇太子殿下やデニス皇子殿下に面会するためだろう。
今回もさっさと挨拶だけ済ませて、帰るのかしら?
いや、でもデニス皇子殿下に対してそろそろ報復を行うと言っていたから、何か仕掛ける気かもしれない。
『パーティー開始直後から、不穏だな』と思いつつ、私は前へ進んでいく。
────と、ここで夫が足を止めた。
「アヴニール帝国の小太陽であらせられるシャノン・ルス・アヴニール皇太子殿下と、アヴニール帝国の輝く星であるデニス・ターラー・アヴニール第二皇子殿下にご挨拶申し上げます」
目の前に居る金髪翠眼の男性と赤髪碧眼の男性を見据え、夫は一礼した。
私も、それに倣ってお辞儀する。
と同時に、シャノン皇太子殿下が一瞬だけ表情を曇らせた。
が、直ぐにいつもの笑顔となる。
「ラニット公爵も夫人も、よく来てくれたね。近頃、何かと忙しいだろうに時間を作ってくれて嬉しいよ」
「こちらこそ、シャノン皇太子殿下に拝謁出来て恐悦至極です。それから、デニス皇子殿下も─────貴殿には、『借りを返さなければ』と思っていたので」
どこか含みのある言い方で話し掛け、夫は革手袋を片方脱いだ。
赤い瞳に、闘志のようなものを宿しながら。
「これはデニス皇子殿下の招いた結果です。どうぞ、受け止めてください」
そう言うが早いか、夫は脱いだ革手袋をデニス皇子殿下に投げつけた。
かと思えば、一歩前へ出る。
「私ヘレス・ノーチェ・ラニットは、デニス・ターラー・アヴニールに決闘を申し込む」
『尋常に勝負だ』と告げる夫に、デニス皇子殿下はもちろん周囲も唖然とした。
ただ一人、シャノン皇太子殿下だけは平然としているが。
多分、先に夫から何をするか聞いていたのだろう。
『だから、私達が挨拶に来たとき渋い顔をしたのね』と納得する中、シャノン皇太子殿下は口を開く。
「────じゃあ、審判役は私が請け負おう。もちろん、デニスが決闘を引き受けるならだけど」
敢えて引き受けない選択肢を提示し、シャノン皇太子殿下は『どうしたい?』と尋ねた。
答えなんて、分かり切っているのに。
名誉を何より重んじる貴族や皇族にとって、決闘を断るというのは有り得ない。
『戦いから逃げた情けない人間』と見なされて、一生馬鹿にされるため。
『下手したら、末代にまで影響を及ぼすかもしれないわね』と考えつつ、私は周囲を見回す。
一応内々で決闘の話を持ち消すという選択肢もあるが、この人数では無理だと悟って。
パーティー開始直後に仕掛けた意味を痛感する中、デニス皇子殿下は苦い顔をした。
「……引き受けよう」
『今夜は無礼講だ』と言い放ち、シャノン皇太子殿下は軽く手を上げた。
その瞬間、傍で待機していたオーケストラが音楽を奏でる。
パーティーの始まりを告げるかのように。
「レイチェル、行くぞ」
夫は私の手を引いて歩き出し、玉座の方へ向かって行った。
恐らく、シャノン皇太子殿下やデニス皇子殿下に面会するためだろう。
今回もさっさと挨拶だけ済ませて、帰るのかしら?
いや、でもデニス皇子殿下に対してそろそろ報復を行うと言っていたから、何か仕掛ける気かもしれない。
『パーティー開始直後から、不穏だな』と思いつつ、私は前へ進んでいく。
────と、ここで夫が足を止めた。
「アヴニール帝国の小太陽であらせられるシャノン・ルス・アヴニール皇太子殿下と、アヴニール帝国の輝く星であるデニス・ターラー・アヴニール第二皇子殿下にご挨拶申し上げます」
目の前に居る金髪翠眼の男性と赤髪碧眼の男性を見据え、夫は一礼した。
私も、それに倣ってお辞儀する。
と同時に、シャノン皇太子殿下が一瞬だけ表情を曇らせた。
が、直ぐにいつもの笑顔となる。
「ラニット公爵も夫人も、よく来てくれたね。近頃、何かと忙しいだろうに時間を作ってくれて嬉しいよ」
「こちらこそ、シャノン皇太子殿下に拝謁出来て恐悦至極です。それから、デニス皇子殿下も─────貴殿には、『借りを返さなければ』と思っていたので」
どこか含みのある言い方で話し掛け、夫は革手袋を片方脱いだ。
赤い瞳に、闘志のようなものを宿しながら。
「これはデニス皇子殿下の招いた結果です。どうぞ、受け止めてください」
そう言うが早いか、夫は脱いだ革手袋をデニス皇子殿下に投げつけた。
かと思えば、一歩前へ出る。
「私ヘレス・ノーチェ・ラニットは、デニス・ターラー・アヴニールに決闘を申し込む」
『尋常に勝負だ』と告げる夫に、デニス皇子殿下はもちろん周囲も唖然とした。
ただ一人、シャノン皇太子殿下だけは平然としているが。
多分、先に夫から何をするか聞いていたのだろう。
『だから、私達が挨拶に来たとき渋い顔をしたのね』と納得する中、シャノン皇太子殿下は口を開く。
「────じゃあ、審判役は私が請け負おう。もちろん、デニスが決闘を引き受けるならだけど」
敢えて引き受けない選択肢を提示し、シャノン皇太子殿下は『どうしたい?』と尋ねた。
答えなんて、分かり切っているのに。
名誉を何より重んじる貴族や皇族にとって、決闘を断るというのは有り得ない。
『戦いから逃げた情けない人間』と見なされて、一生馬鹿にされるため。
『下手したら、末代にまで影響を及ぼすかもしれないわね』と考えつつ、私は周囲を見回す。
一応内々で決闘の話を持ち消すという選択肢もあるが、この人数では無理だと悟って。
パーティー開始直後に仕掛けた意味を痛感する中、デニス皇子殿下は苦い顔をした。
「……引き受けよう」
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