77 / 126
本編
帰宅②
しおりを挟む
「はい」
────と、首を縦に振った翌日。
私は朝から忙しく動き回り、身支度やら客人の持て成しやらに時間と労力を割いた。
来るのがフェリクス様だけなら、ここまでご大層な準備しなくていいのだけど────見届け人として、シャノン皇太子殿下もいらっしゃるそうだから、手を抜けないのよね。
『ラニット公爵家の威信に関わる』と危機感を持ちながら、私は応接室へ向かう。
ちょうど、義弟とシャノン皇太子殿下が来たとの知らせを受けたため。
『二人とも、時間ピッタリね』と思いつつ、目的地の前で足を止めた。
と同時に、扉をノックする。
「私です。入ってもよろしいでしょうか?」
きちんと扉越しに声を掛けると、直ぐに向こうから
「入れ」
と、返事をもらった。
なので、遠慮なく扉を開ける。
すると、そこには義弟やシャノン皇太子殿下の他に夫の姿もあった。
どうやら、私が一番最後だったみたい。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません」
胸元に手を添えてお辞儀する私に、シャノン皇太子殿下はニッコリ笑う。
「いや、気にしないで。約束の時間は過ぎていないのだから。それに女性の準備が多少長引いてしまうのは、仕方のないことだよ」
『待つのも、紳士の嗜みさ』と語り、シャノン皇太子殿下はウィンクした。
こちらが罪悪感を持たなくて済むようわざとお茶目に振る舞う彼の前で、夫が顔を上げる。
「早くこっちに来い」
自身の隣の席を軽く叩き、夫は座るよう促してきた。
一応、空いているソファだってあるのに。
フェリクス様のことを警戒して、念のため傍に置いておきたいのかしら?
などと考えながら、私は素直に夫の隣へ腰を下ろす。
と同時に、シャノン皇太子殿下がパンッと手を叩いた。
「じゃあ、役者も揃ったことだし────早速本題へ入ろうか」
挨拶もそこそこに話を切り出し、シャノン皇太子殿下はおもむろに足を組む。
その途端、この場に張り詰めたような空気が流れた。
思わず誰もが表情を硬くする中、シャノン皇太子殿下は片手を上げる。
すると、壁際で待機していたロルフが何かの書類とペンを持ってきた。
「まず、ラニット夫人と令息には誓約書にサインしてほしい」
「「誓約書?」」
つい聞き返してしまう私と義弟に対し、シャノン皇太子殿下は苦笑を漏らす。
「前公爵夫妻の死の真相について、一切口外しないという契約を交わしたんだ。証拠に残る形で、ね」
────と、首を縦に振った翌日。
私は朝から忙しく動き回り、身支度やら客人の持て成しやらに時間と労力を割いた。
来るのがフェリクス様だけなら、ここまでご大層な準備しなくていいのだけど────見届け人として、シャノン皇太子殿下もいらっしゃるそうだから、手を抜けないのよね。
『ラニット公爵家の威信に関わる』と危機感を持ちながら、私は応接室へ向かう。
ちょうど、義弟とシャノン皇太子殿下が来たとの知らせを受けたため。
『二人とも、時間ピッタリね』と思いつつ、目的地の前で足を止めた。
と同時に、扉をノックする。
「私です。入ってもよろしいでしょうか?」
きちんと扉越しに声を掛けると、直ぐに向こうから
「入れ」
と、返事をもらった。
なので、遠慮なく扉を開ける。
すると、そこには義弟やシャノン皇太子殿下の他に夫の姿もあった。
どうやら、私が一番最後だったみたい。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません」
胸元に手を添えてお辞儀する私に、シャノン皇太子殿下はニッコリ笑う。
「いや、気にしないで。約束の時間は過ぎていないのだから。それに女性の準備が多少長引いてしまうのは、仕方のないことだよ」
『待つのも、紳士の嗜みさ』と語り、シャノン皇太子殿下はウィンクした。
こちらが罪悪感を持たなくて済むようわざとお茶目に振る舞う彼の前で、夫が顔を上げる。
「早くこっちに来い」
自身の隣の席を軽く叩き、夫は座るよう促してきた。
一応、空いているソファだってあるのに。
フェリクス様のことを警戒して、念のため傍に置いておきたいのかしら?
などと考えながら、私は素直に夫の隣へ腰を下ろす。
と同時に、シャノン皇太子殿下がパンッと手を叩いた。
「じゃあ、役者も揃ったことだし────早速本題へ入ろうか」
挨拶もそこそこに話を切り出し、シャノン皇太子殿下はおもむろに足を組む。
その途端、この場に張り詰めたような空気が流れた。
思わず誰もが表情を硬くする中、シャノン皇太子殿下は片手を上げる。
すると、壁際で待機していたロルフが何かの書類とペンを持ってきた。
「まず、ラニット夫人と令息には誓約書にサインしてほしい」
「「誓約書?」」
つい聞き返してしまう私と義弟に対し、シャノン皇太子殿下は苦笑を漏らす。
「前公爵夫妻の死の真相について、一切口外しないという契約を交わしたんだ。証拠に残る形で、ね」
806
あなたにおすすめの小説
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています
オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。
◇◇◇◇◇◇◇
「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。
14回恋愛大賞奨励賞受賞しました!
これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。
ありがとうございました!
ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。
この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
死に役はごめんなので好きにさせてもらいます
橋本彩里(Ayari)
恋愛
【書籍化決定】
フェリシアは幼馴染で婚約者のデュークのことが好きで健気に尽くしてきた。
前世の記憶が蘇り、物語冒頭で死ぬ役目の主人公たちのただの盛り上げ要員であると知ったフェリシアは、死んでたまるかと物語のヒーロー枠であるデュークへの恋心を捨てることを決意する。
愛を返されない、いつか違う人とくっつく予定の婚約者なんてごめんだ。しかも自分は死に役。
フェリシアはデューク中心の生活をやめ、なんなら婚約破棄を目指して自分のために好きなことをしようと決める。
どうせ何をしていても気にしないだろうとデュークと距離を置こうとするが……
たくさんのいいね、エール、感想、誤字報告をありがとうございます!
※書籍化決定しております!
皆様に温かく見守っていただいたおかげです。ありがとうございます(*・ω・)*_ _)ペコリ
詳細は追々ご報告いたします。
アルファさんでは書籍情報解禁のち発売となった際にはサイトの規定でいずれ作品取り下げとなりますが、
今作の初投稿はアルファさんでその時にたくさん応援いただいたため、もう少し時間ありますので皆様に読んでいただけたらと第二部更新いたします。
第二部に合わせて、『これからの私たち』以降修正しております。
転生関係の謎にも触れてますので、ぜひぜひ更新の際はお付き合いいただけたら幸いです。
2025.9.9追記
幸せな政略結婚のススメ【本編完結】
ましろ
恋愛
「爵位と外見に群がってくる女になぞ興味は無い」
「え?だって初対面です。爵位と外見以外に貴方様を判断できるものなどございませんよ?」
家柄と顔が良過ぎて群がる女性に辟易していたユリシーズはとうとう父には勝てず、政略結婚させられることになった。
お相手は6歳年下のご令嬢。初対面でいっそのこと嫌われようと牽制したが?
スペック高めの拗らせ男とマイペースな令嬢の政略結婚までの道程はいかに?
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
・11/21ヒーローのタグを変更しました。
殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる