駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

フィオーレ伯爵家へ③

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「元を正せば、こちらの身内の不始末だというのに……頭の硬い連中だ」

 『感謝なぞ、する必要ないだろうに』と主張し、夫は小さく肩を竦める。
身から出た錆だと認識しているが故に、素直に気持ちを受け取れないようだ。
どこか悶々とした素振りを見せる彼の前で、私はスッと目を細める。

「それでも、旦那様のおかげで助かったことは事実ですから」 

 『お姉様の場合、自業自得な部分もありますし』と語り、私はあまり気にしないよう告げた。
すると、夫は

「そうか」

 とだけ言って、黙り込む。
多分、もう話すことがないのだろう。
いや、もしかしたら精神的に疲弊している私を気遣ってくれたのかもしれない。
今朝まで、姉の心配と今後の不安でいっぱいになっていたから。
『そういえば、昨日はあまり眠れなかったな』と思い出す中、私はウトウトと船を漕ぐ。
そして────気づいた時には、ベッドの上に居た。

 あ、れ?私、さっきまで馬車に乗って……?

 寝起きでぼんやりしつつも何とか視線を動かし、私は状況を把握しようとする。
────と、ここで横から手が伸びてきた。

「もう少し寝ていろ」

 そう言って、私の目元を手で覆うのは夫のヘレス・ノーチェ・ラニット。
ベッド脇で書類仕事でもしているのか、仄かにインクの匂いを漂わせる彼は指先で優しく瞼に触れた。
かと思えば、強制的に私の目を閉じさせる。
『さっさと眠れ』という意思を強く感じる行動に、私は少しばかり頬を緩めた。

「あの、二度寝する前に一つお聞きしたいんですが」

「なんだ?」

 『長くなりそうなら、打ち切るからな』と牽制しつつ、夫は話の先を促した。
なので、私は遠慮なく言葉を紡ぐ。

「ここはどこですか?」

 何となく予想はついているものの、私は敢えて質問した。
すると、夫は間髪容れずにこう答える。

「私達の屋敷だ」

 私達の、か。旦那様にとっては何気ない一言かもしれないけど、家族としてちゃんと数えられていることに喜びを覚えるわ。
最初は本邸にすら入れてもらえなかったことを思うと、余計に。

 『なんだか感慨深い』と思いつつ、私は柔らかい表情を浮かべる。

「そうですか。本当に帰って来れたんですね」
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