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本編
迎え③
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「当たり前のことを聞くな。連れ帰る気がなければ、そもそも迎えに来ない」
『私は暇じゃないからな』と言い、夫はチラリと義弟の方を見る。
「昨日のことを憂いているなら断言しておくが、私は気にしていない。責任の所在は明らかだからな」
『レイチェルが悪くないことは理解している』と主張し、夫はこちらに視線を戻した。
かと思えば、差し伸べた手を更に前へ突き出す。
「とにかく、何も心配は要らない。他に何か問題がある訳じゃないなら、早くこの手を取れ。私の元へ帰ってこい」
真っ直ぐ目を見て説得してくる夫に、私は大きく瞳を揺らした。
と同時に、少しばかり頬を緩める。
「はい、旦那様」
夫の言葉に突き動かされるまま……自分の感情の赴くまま、私は手を重ねた。
すると、直ぐにギュッと握られる。
そのおかげか、やっと『嗚呼、帰れるんだ』と実感が湧いてきた。
『なんにせよ、これで一件落着ね』なんて考えていると、義弟が
「ちょっと待った」
と、声を上げる。
どことなく焦りを見せる彼は、さりげなく扉の方へ回った。
「悪いけど、義姉さんを帰す訳にはいかない」
「知るか。貴様の意見など、聞いていない」
夫は間髪容れずに言い返し、義弟のことを軽く睨む。
『邪魔だ』と威嚇するかのように。
「今日のところは何もせず帰ろうと思っていたが、こちらの行動を妨げるなら容赦しないぞ」
抜いたままの剣を握り直し、夫は『さっさと退け』と告げた。
が、義弟にも意地があるのか……それとも、もう後がないからか道を譲ろうとしない。
「そう。なら、僕のことも殺せば?父さんと母さんの時みたいにさ」
前公爵夫妻の死を話題に出し、義弟は挑発してきた。
多分……夫を怒らせて自分に牙を剥くよう仕向けることで、私にトラウマを植え付ける算段なのだろう。
それでまた結婚生活を考えるキッカケになればいい、と思って。
まさに捨て身の作戦だ。
半ば自暴自棄になっているのね。
だって、もうフェリクス様の目標は達成出来ないから。この挑発が成功しようと、失敗しようと。
貴族令嬢の誘拐、ラニット公爵夫人の脅迫、離婚の強要……どれをとっても、厳罰は免れないだろう。
当主の座を奪い取るとか、そんなこと言っている場合ではない。
『だから、せめて一矢報いたいんだろうけど……』と思案する中、夫はただ冷静に
「私は────殺していない。前公爵も、その夫人も」
と、主張した。
その途端、義弟はハッと乾いた笑みを零す。
「なにそれ?義姉さん達の前だから、浅はかにも自分の罪を隠そうとしているの?そんな見え透いた嘘をついてまで、さ」
「嘘では、ない」
すかさず義弟の言い分を否定し、夫は自分が無実であることを訴えた。
すると、義弟は『なに今更……』と呟いて目を吊り上げる。
ややピンク寄りの赤い瞳に、苛立ちを滲ませながら。
「じゃあ、誰が僕の両親を殺したって言うのさ!」
「それは言えない」
どことなく硬い声色でキッパリ断る夫に対し、義弟は顔を顰める。
「なら……!」
「だが、準備が出来次第……皇室の許可が取れ次第、真実を明かすと約束する。それこそ、明日にでも」
「……はっ?」
思わずといった様子で固まり、義弟は大きく瞳を揺らした。
まさか、兄が自ら真実を話す気になるとは思わなかったのだろう。
『今までどんなに懇願しても、ダメだったのに……』と呆然とする義弟の前で、夫はスッと目を細める。
「こちらも、そろそろ我慢の限界だからな。全く関係のない第三者まで巻き込むような能無しには、付き合い切れない」
『私は暇じゃないからな』と言い、夫はチラリと義弟の方を見る。
「昨日のことを憂いているなら断言しておくが、私は気にしていない。責任の所在は明らかだからな」
『レイチェルが悪くないことは理解している』と主張し、夫はこちらに視線を戻した。
かと思えば、差し伸べた手を更に前へ突き出す。
「とにかく、何も心配は要らない。他に何か問題がある訳じゃないなら、早くこの手を取れ。私の元へ帰ってこい」
真っ直ぐ目を見て説得してくる夫に、私は大きく瞳を揺らした。
と同時に、少しばかり頬を緩める。
「はい、旦那様」
夫の言葉に突き動かされるまま……自分の感情の赴くまま、私は手を重ねた。
すると、直ぐにギュッと握られる。
そのおかげか、やっと『嗚呼、帰れるんだ』と実感が湧いてきた。
『なんにせよ、これで一件落着ね』なんて考えていると、義弟が
「ちょっと待った」
と、声を上げる。
どことなく焦りを見せる彼は、さりげなく扉の方へ回った。
「悪いけど、義姉さんを帰す訳にはいかない」
「知るか。貴様の意見など、聞いていない」
夫は間髪容れずに言い返し、義弟のことを軽く睨む。
『邪魔だ』と威嚇するかのように。
「今日のところは何もせず帰ろうと思っていたが、こちらの行動を妨げるなら容赦しないぞ」
抜いたままの剣を握り直し、夫は『さっさと退け』と告げた。
が、義弟にも意地があるのか……それとも、もう後がないからか道を譲ろうとしない。
「そう。なら、僕のことも殺せば?父さんと母さんの時みたいにさ」
前公爵夫妻の死を話題に出し、義弟は挑発してきた。
多分……夫を怒らせて自分に牙を剥くよう仕向けることで、私にトラウマを植え付ける算段なのだろう。
それでまた結婚生活を考えるキッカケになればいい、と思って。
まさに捨て身の作戦だ。
半ば自暴自棄になっているのね。
だって、もうフェリクス様の目標は達成出来ないから。この挑発が成功しようと、失敗しようと。
貴族令嬢の誘拐、ラニット公爵夫人の脅迫、離婚の強要……どれをとっても、厳罰は免れないだろう。
当主の座を奪い取るとか、そんなこと言っている場合ではない。
『だから、せめて一矢報いたいんだろうけど……』と思案する中、夫はただ冷静に
「私は────殺していない。前公爵も、その夫人も」
と、主張した。
その途端、義弟はハッと乾いた笑みを零す。
「なにそれ?義姉さん達の前だから、浅はかにも自分の罪を隠そうとしているの?そんな見え透いた嘘をついてまで、さ」
「嘘では、ない」
すかさず義弟の言い分を否定し、夫は自分が無実であることを訴えた。
すると、義弟は『なに今更……』と呟いて目を吊り上げる。
ややピンク寄りの赤い瞳に、苛立ちを滲ませながら。
「じゃあ、誰が僕の両親を殺したって言うのさ!」
「それは言えない」
どことなく硬い声色でキッパリ断る夫に対し、義弟は顔を顰める。
「なら……!」
「だが、準備が出来次第……皇室の許可が取れ次第、真実を明かすと約束する。それこそ、明日にでも」
「……はっ?」
思わずといった様子で固まり、義弟は大きく瞳を揺らした。
まさか、兄が自ら真実を話す気になるとは思わなかったのだろう。
『今までどんなに懇願しても、ダメだったのに……』と呆然とする義弟の前で、夫はスッと目を細める。
「こちらも、そろそろ我慢の限界だからな。全く関係のない第三者まで巻き込むような能無しには、付き合い切れない」
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