駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

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本編

救出《ヘレス side》①

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◇◆◇◆

 ────妻を弟へ預けた日の深夜。
私はロルフの持ち帰った情報とフィオーレ伯爵より届いた長女失踪の報告を思い浮かべ、一つ息を吐いた。
これはもう確実だな、と考えて。

「クラリス・アスチルベ・フィオーレを人質に取って、我が妻を脅すとは……やってくれたな、フェリクス」

 手に持ったペンをへし折り、私は眉間に深い皺を刻み込む。
頭が沸騰するような感覚を覚えながら、強く奥歯を噛み締めた。

 正直、フェリクスがここまでやるとは思ってなかった。
私に関することだけは過激だが、基本は気の良い奴だから。
故に、レイチェルの身柄の譲渡も許可したんだが……今思えば、軽率だったかもしれない。
もっと抵抗していれば、あるいは……いや、それでもしもクラリス・アスチルベ・フィオーレに何かあれば、レイチェルは精神を病んでいただろう。

 なんだかんだ言いながらも家族に甘い妻のことを考え、私はトントンと指先で執務机を叩く。
『なんにせよ、過ぎたことはもう仕方ない』と自分に言い聞かせて。

「ロルフ、クラリス・アスチルベ・フィオーレの居場所を特定しろ。無論、周囲に気取られぬようにな」

 執務室の端で待機していた幼馴染みへ指示を出し、私は懐からハンカチを取り出した。
と同時に、インクで汚れた手を拭う。

 とにかく、私のすることはただ一つ。
クラリス・アスチルベ・フィオーレを救出・保護して、レイチェルを迎えに行く。
ただ、それだけだ。

 離婚なんて端から頭にない私は、『こんな茶番、さっさと終わらせたい』と願う。
妻の居ない屋敷は、なんだか妙だから。
『つい数ヶ月前までは、それが普通だったのにな』と思案する中、ロルフは姿勢を正した。

「畏まりました。明日の早朝までには、特定してみせます」

 ────と、啖呵を切った五時間後。
ロルフは本当にクラリス・アスチルベ・フィオーレの現在位置を割り出した。
限られた人材、時間、手掛かりだったのに。
『弱腰で頼りない風貌だが、有能なんだよな』と考える私を前に、ロルフは目の前の建物を見据える。

「────ここです。この倉庫にクラリス嬢が、いらっしゃいます」
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