駆け落ちした姉に代わって、悪辣公爵のもとへ嫁ぎましたところ 〜えっ?姉が帰ってきた?こっちは幸せに暮らしているので、お構いなく!〜

あーもんど

文字の大きさ
50 / 126
本編

夫と過ごす一日③

しおりを挟む
「私は軽く身支度を整えてから、食堂に参ります」

 『先に召し上がっていても、構いません』と告げ、私は隣室へ足を運んだ。
そこで乱れた髪や服を直すと、食堂へ直行。
夫と共に昼食を頂いた。

「次は昼寝だったな」

 夫は私をエスコートして部屋へ戻り、またもやこちらを凝視。
────というやり取りを得て昼寝し、夕食もご一緒する。

 あとは就寝だけね。なんというか、あっという間だわ。

 『ほとんど寝ているせいかしら?』と思案しながら、私は食事を終えて自室へ戻った。
当然の如く、夫も一緒に。
『やっぱり、就寝まで見届けるのか』と思いつつ、私は再びベッドへ横になる。
そして、早速うつらうつらしていると────

「貴様、本当によく眠るな」

 ────と、夫に感心された。いや、引かれたと言った方がいいかもしれない。
まあ、この睡眠欲には私自身も驚いているので無理ないが。

「実家に居たときは逆に全然寝れなかったので、その反動かもしれません」

 わりと真剣に自分なりの見解を述べ、私はチラリと夫の方を見やる。
と同時に、彼が少し頭を捻った。

「フィオーレ伯爵家では、眠りづらい環境だったのか?」

 『騒音や寝具の影響か?』と考える夫に、私は苦笑を漏らす。

「いえ、そういう訳ではなく……実家の仕事を手伝っていた関係で、あまり睡眠時間を取れなくて」

 身内の恥を晒すようなものなので姉のことには触れず、表面的な理由だけ明かした。

 それでも、旦那様なら『訳あり』だと勘づきそうだけど。
娘……それも次女が家業を代わりにやっているなんて、普通は有り得ないから。

 『違和感は持つ筈』と思案し、私は自身の口元に手を当てる。
────と、ここで夫が少しばかり身を乗り出した。

「そうか。それは────」

 何を思ったのかこちらに手を伸ばし、夫は僅かに目元を和らげる。

「────よく頑張ったな」

 ポンッと軽く私の頭を撫で、夫はこちらの尽力をただ評価してくれた。
飾りのない、真っ直ぐな言葉で。

「っ……」

 つい泣きそうになる私は、唇を噛み締めて耐える。
ここで涙を流すのは、違う気がしたから。

「ぁ……ありがと、ございます」

 震える声で礼を言い、私はうんと目を細めた。
これまでの自分の努力が、忍耐が、苦労が全て報われたような感動を覚えながら。

 別に実家を支えてきたことに、後悔はない。
きっと時間を巻き戻しても、私はまた同じことをするだろう。
ただ、やっぱり……凄く辛かったの。それを、誰かに分かってほしかった。労ってほしかった。褒めてほしかった。

 『負担を掛けてごめんね』と謝るばかりだった両親や何も知らずに活き活きしていた姉を思い出し、私はそっと目を伏せる。
と同時に、夫が私の目元へ手を当てた。

「私は当然のことを言ったまでだ。礼を言われる筋合いはない。それより、早く寝ろ────これまで頑張ってきた分、今は休め」

 『ゆっくり心と体を回復させるんだ』と語る夫に、私は表情を和らげる。
その優しさが、ただ嬉しくて。

「はい。おやすみなさい、旦那様」

 とても幸せな気分のまま目を瞑り、私は静かに船を漕いだ。
『ああ』と返事する夫の声を聞きながら。
────この日、いつもよりぐっすり眠れたのはきっと彼のおかげだろう。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

継母の嫌がらせで冷酷な辺境伯の元に嫁がされましたが、噂と違って優しい彼から溺愛されています。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアーティアは、継母に冷酷無慈悲と噂されるフレイグ・メーカム辺境伯の元に嫁ぐように言い渡された。 継母は、アーティアが苦しい生活を送ると思い、そんな辺境伯の元に嫁がせることに決めたようだ。 しかし、そんな彼女の意図とは裏腹にアーティアは楽しい毎日を送っていた。辺境伯のフレイグは、噂のような人物ではなかったのである。 彼は、多少無口で不愛想な所はあるが優しい人物だった。そんな彼とアーティアは不思議と気が合い、やがてお互いに惹かれるようになっていく。 2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。

MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。 記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。 旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。 屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。 旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。 記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ? それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…? 小説家になろう様に掲載済みです。

無能だとクビになったメイドですが、今は王宮で筆頭メイドをしています

如月ぐるぐる
恋愛
「お前の様な役立たずは首だ! さっさと出て行け!」 何年も仕えていた男爵家を追い出され、途方に暮れるシルヴィア。 しかし街の人々はシルビアを優しく受け入れ、宿屋で住み込みで働く事になる。 様々な理由により職を転々とするが、ある日、男爵家は爵位剥奪となり、近隣の子爵家の代理人が統治する事になる。 この地域に詳しく、元男爵家に仕えていた事もあり、代理人がシルヴィアに協力を求めて来たのだが…… 男爵メイドから王宮筆頭メイドになるシルビアの物語が、今始まった。

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

処理中です...