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本編
前公爵夫妻の死の謎③
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フェリクス様はもう立派な大人で、一応事件の関係者。
真相を伝えても、問題ない人物だと思う。
それなのに、旦那様はずっと沈黙を貫いている……あと、皇室も。
通常なら、調査結果を公表する筈なのに前公爵夫妻の件については調査終了だけ告げて、詳細を明かさなかったようだから。
『それもあって、噂に拍車が掛かったのよね』と思い返し、私はスッと目を細める。
何か不都合な事実でもあったのだろう、と考えて。
皇室もただでは済まない案件となると、恐らく前公爵夫人関連……彼女は皇帝陛下の妹だから。
もう他家に嫁いだ身と言えど、皇族であることは変わらない。
『血筋とは、一生ついて回るもの』と思案しつつ、私は嘆息する。
「……もし、そうだとしたらフェリクス様の言い分もちょっと否定出来なくなるわね」
不都合な事実を隠したい皇室と、自分の罪を無かったことにしたい夫による取り引き。
この可能性を視野に入れれば、事情はかなり変わってくる。
でも────
「────やっぱり、旦那様が特に理由もなく人の命を奪うとは思えない」
理屈も何もない、単なる勘だ。あるいは、夫への信頼。
そんな不確かなものを当てにするなんて実に馬鹿げているが、私は義弟の仮説を否定する方に賭けてみたくなった。
「とはいえ、一抹の不安はある」
『何か安心出来る材料が、欲しい』と考え、私は胸元を握り締める。
「だから、本人に聞きに行ってみましょう」
『素直に答えてくれるかは分からないけど』と思いつつ、私は身を起こした。
と同時に、ベッドを降りて部屋から出ていく。
目指すは、夫の執務室である。
デニス皇子殿下は一時間ほど前に帰ったらしいから、多分もう書類仕事を再開している筈。
などと考えながら、私は廊下を突き進んだ。
すると、向こうの曲がり角からロルフが姿を現す。
「おや?奥様では、ありませんか。珍しいですね、この時間帯に出歩くなんて」
『いつもはお部屋で過ごしているのに』と言い、ロルフはゆっくりと足を止めた。
彼も執務室へ行く途中だったのか、小脇には何かの資料が。
「旦那様にちょっと用があって。今、お忙しいでしょうか?」
一日の大半を夫と過ごしているロルフなら、スケジュールも把握しているだろうと思い、確認する。
もし多忙なら日を改めよう、と考えて。
『さすがにこちらの事情で振り回すのは、忍びない』と思案していると、ロルフが口を開いた。
「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、今は執務室じゃなくて訓練場の方に居まして」
『別邸とは、逆の方向にある建物です』と補足するロルフに、私は相槌を打つ。
「そうだったんですね。教えていただき、ありがとうございます」
『訓練場の方に行ってみます』と言い残し、私はクルリと身を翻した。
一応待つという選択肢もあるが、出来るだけ早く真相を確かめたかったので。
『そしたら、考えもまとまる筈』と思いつつ、私は歩を進めた。
そして、訓練場に辿り着くと、開けっ放しの扉から中を覗く。
何もないところね。天井が物凄く高いこととだだっ広いことを除けば、広間とあまり変わらない造りだわ。
訓練場に来るのは初めて来たので、ついまじまじと見つめてしまう私は少し目を凝らす。
夫を探すために。
「────あっ、居た」
真相を伝えても、問題ない人物だと思う。
それなのに、旦那様はずっと沈黙を貫いている……あと、皇室も。
通常なら、調査結果を公表する筈なのに前公爵夫妻の件については調査終了だけ告げて、詳細を明かさなかったようだから。
『それもあって、噂に拍車が掛かったのよね』と思い返し、私はスッと目を細める。
何か不都合な事実でもあったのだろう、と考えて。
皇室もただでは済まない案件となると、恐らく前公爵夫人関連……彼女は皇帝陛下の妹だから。
もう他家に嫁いだ身と言えど、皇族であることは変わらない。
『血筋とは、一生ついて回るもの』と思案しつつ、私は嘆息する。
「……もし、そうだとしたらフェリクス様の言い分もちょっと否定出来なくなるわね」
不都合な事実を隠したい皇室と、自分の罪を無かったことにしたい夫による取り引き。
この可能性を視野に入れれば、事情はかなり変わってくる。
でも────
「────やっぱり、旦那様が特に理由もなく人の命を奪うとは思えない」
理屈も何もない、単なる勘だ。あるいは、夫への信頼。
そんな不確かなものを当てにするなんて実に馬鹿げているが、私は義弟の仮説を否定する方に賭けてみたくなった。
「とはいえ、一抹の不安はある」
『何か安心出来る材料が、欲しい』と考え、私は胸元を握り締める。
「だから、本人に聞きに行ってみましょう」
『素直に答えてくれるかは分からないけど』と思いつつ、私は身を起こした。
と同時に、ベッドを降りて部屋から出ていく。
目指すは、夫の執務室である。
デニス皇子殿下は一時間ほど前に帰ったらしいから、多分もう書類仕事を再開している筈。
などと考えながら、私は廊下を突き進んだ。
すると、向こうの曲がり角からロルフが姿を現す。
「おや?奥様では、ありませんか。珍しいですね、この時間帯に出歩くなんて」
『いつもはお部屋で過ごしているのに』と言い、ロルフはゆっくりと足を止めた。
彼も執務室へ行く途中だったのか、小脇には何かの資料が。
「旦那様にちょっと用があって。今、お忙しいでしょうか?」
一日の大半を夫と過ごしているロルフなら、スケジュールも把握しているだろうと思い、確認する。
もし多忙なら日を改めよう、と考えて。
『さすがにこちらの事情で振り回すのは、忍びない』と思案していると、ロルフが口を開いた。
「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、今は執務室じゃなくて訓練場の方に居まして」
『別邸とは、逆の方向にある建物です』と補足するロルフに、私は相槌を打つ。
「そうだったんですね。教えていただき、ありがとうございます」
『訓練場の方に行ってみます』と言い残し、私はクルリと身を翻した。
一応待つという選択肢もあるが、出来るだけ早く真相を確かめたかったので。
『そしたら、考えもまとまる筈』と思いつつ、私は歩を進めた。
そして、訓練場に辿り着くと、開けっ放しの扉から中を覗く。
何もないところね。天井が物凄く高いこととだだっ広いことを除けば、広間とあまり変わらない造りだわ。
訓練場に来るのは初めて来たので、ついまじまじと見つめてしまう私は少し目を凝らす。
夫を探すために。
「────あっ、居た」
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