黒炎の宝冠

ROSE

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11 偉大なる力2

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 翌日、少し落ち着かないまま商人を呼んだ。ルイスへの贈り物と、最近目が疲れやすいのでなにか良い物はないかと探している。即位前の引き継ぎなのか書類仕事に投入されることが増えてきたのが原因かもしれない。正直、黒咲凜の知識があればさほど苦労しない内容もあるがこの世界にはパソコンが存在しない。全て手作業。ファイル名で欲しい文書を探すようなことはできない。うっかり同じ文書を何度も読む羽目になることもある。そしてそんなことに時間を取られてしまうから、楽譜の読み込みで夜更かしをしてしまう。練習時間は減らせない。悪循環だ。
「殿下、こちらなどは持ちやすく長時間の使用でも手が疲れない構造になっております」
 商人が丁寧に説明してくれるけれど、違いがわからない。当たり前のように側にいるホセを見ても、楽器以外は興味がないという様子だ。
「なんだか地味ね。男性は装飾が少ない方が良いのかしら? ねえ、ホセ、ルイスにはどの色が合うかしら?」
 自分で選ぶとは宣言したがいざ並べられると選べない。そもそも違いが色以外殆どわからない。
「レイナが選んだ物ならなんでも喜ぶかと」
 ホセが静かに答える。たぶんその通りだ。
「青系がいいかしら。落ち着いた印象だし。ルイスの心が落ち着く物だといいけれど」
「レイナの魔力を込めた石を装飾に使えばルイスを護る物になります」
 あのピアスのことを言っているのだろうか。
「ピアスだけじゃ不十分?」
「ルイスは不安定ですから」
 そう言われてしまえばなにも反論できない。
 けれども考えようによっては世界でたったひとつしかないレイナの魔力入りの万年筆が仕上がる。ルイスに特別感を出すには丁度いいかもしれない。
 ホセに渡された石に魔力を込める。レイナの瞳によく似た暗い赤に染まったその石は不思議な煌めきを秘めていた。
「これを加工して万年筆の装飾に」
 ホセが商人に言う。
「殿下の魔力を……また随分と変わった魔力ですね。このような煌めきは初めて見ました」
 商人はじっと石を観察した。あの煌めきは金粉を閉じ込めた様にも見える。もしかすると、ノアが言っていたレイナがルイスのことを考えたときに舞うなにかなのかもしれない。
「万年筆のお色はいかがなさいますか? 石が赤いので同系で纏めるか、暗い色をお選びになられた方が良いかと」
「レイナの髪の色と同じ黒を選べば石と相まってすぐにレイナを思い出すかと」
 なるほど。思わず納得してしまう。
 結局自分で選ぶと言ったくせにホセに言われるままに贈り物を決めてしまった。
 なんとか戴冠式前に仕上がりそうだ。
 それから目の疲れを軽減できる品物を見せて貰おうと思った頃に勢いよく扉が開く。
「レイナ、探したよ。君が練習室にいないなんて本当に珍しいから」
 慌てた様子のルイスだった。昨日の不安定さというよりは既に顔色があまり良くない。むしろ、怖い目をしている。
「ごめんなさい。ちょっと必要な物を揃えるのに、いろいろ見せて貰っていたの」
 商人に先程の石と万年筆を隠してと合図しながらルイスを見る。
「すまない、客人がいたとは……必要な物なら私が揃えるのに」
「自分の目で見たかったの。この頃書類を読むことが増えたから視力が下がっているみたいで、目の疲れを軽減するものがあるといいなって」
 万年筆のことは完成するまでは秘密だ。
「そう。ところで……どうしてホセが一緒なのかな?」
 にっこりと笑みながらも空気がとても冷たい。これは魔力が暴走しているのではないだろうか。現に部屋の中で雪がちらちらと舞っている。楽器も弾かずに具現化するなんて余程だ。
「私ひとりだとお金の計算がきちんと出来ないから誰かに一緒に居て貰いなさいとお兄様に言われたの。丁度部屋から出たときにホセがいたから連れてきたわ」
 たまたま遭遇したのは本当だけれど、お金の計算はちゃんとできる。ただ、レイナとしては買い物をするのは初めてだけど。大抵はメイドに任せればどこか経由で手に入るのだから。
「ホセはどうしていつもレイナと一緒に居るのかな?」
 まだルイスは落ち着かないらしい。
「私はレイナの僕」
 ホセが静かに答える。彼は全く動揺していない。ルイスの今の状況を全く気にしていない様子だ。ということは単なる魔力の暴走なのだろう。
 レイナの考えは外れていた。ホセがそっと囁く。
「ルイスを落ち着かせてください」
 ホセでは落ち着かせることが出来ないとでも言うように、密やかに伝えられた。
「ルイスも書類仕事が多いでしょう? 疲れ目にはどうやって対応しているの? 今まで殆ど楽譜しか読んでいなかったのにいきなり予算だとか嘆願だとか言われてもさっぱりよ」
 話を振ればルイスの意識はレイナに向く。
「そうだね。目を温めたりとか、うつ伏せになってしばらくなにも見ない時間を作ったり、あとは遠くの景色を見たりかな」
「なるほどね。温めるのは試したことがないわ。目を温められるものはあるかしら?」
 商人に問えば待っていましたと言わんばかりに商品紹介をしてくれる。
「でしたらこちらはいかがでしょう。この布を折りたたんで目に当てると魔力に反応して温まります。温度が上がりすぎないようになっていますから安全にお使い頂けますよ」
 魔力に反応してと言うことは毎回自分の魔力を使わなくてはいけないのだろう。
「それはちょっと不安ね。私あまり魔力の制御が得意ではないの。楽器で発散はしているけれど布だけに上手く使えるか……」
「なら素直に蒸しタオルを使った方がいいかもしれないね。メイドに言えば用意してくれるだろう?」
 ルイスはさり気なくレイナに接近し、まるで商人が必要以上に近づくことを警戒するように間に入り込んだ。
「あとは疲れる前に軽減させる方法はないかしら?」
「でしたらこちらの眼鏡がよろしいかと」
 商人はすぐに品物を並べる。様々なフレームの眼鏡だが装飾性は低く、どちらかというと男性向けのデザインに見えてしまう。
「特殊なレンズで目の負担を軽減させます」
「あら素敵。でもいろんなのがあるのね。なにが違うの?」
「フレームの形以外は同じですよ。視力を矯正する物ではありませんので」
「ふーん、じゃあ好みの問題ってことね」
 いろいろあると迷ってしまう。そもそもレイナの性格上、機能以外の部分にはさほど拘りがない。チェロを弾くときに邪魔にならない物であればどうでもよくなってしまう。それに、書類仕事の時にしか使わないのだ。
「どれでもいいわ。耐久性が高い物を」
「ちょっと待った。レイナ? 君が身に着ける物だよ? いろいろ試して一番似合う物を選ばないと」
 商人に任せきろうと思ったのがいけなかったらしい。ルイスが慌てて止めに入る。そしていくつかの眼鏡を手に取りレイナの顔の前に当てながら選別を始めてしまう。これはルイスに任せるのが良さそうだ。
「もう少し女性向けのデザインはないのか?」
「本日はあまりおご用意できていませんが、こちらなどはいかがでしょう?」
 商人は更に追加の眼鏡を五本ほど並べる。今までのものよりは丸みを帯びたデザインが多いようだ。
「うーん、丸い方がかわいいかな。でもレイナの顔の形ならどれを選んでも問題なさそうだ。ああ、これなんてかわいいな。蜂蜜色だ」
 琥珀のような雰囲気の所謂ボストンタイプという物だろうか。ルイスは上機嫌でそれを手に取り、レイナに装着させる。
 少し視界が暗くなるというか、色がほんの少し減退したように見える。これが目の疲れを軽減させる秘密なのだろうか。そんな風に考えながらルイスを見れば既に冷気は消えたようだ。
「うん。凄くかわいい」
「そう? じゃあ、これにするわ。折角だしルイスもなにか買う? 私が奢るわ。自分でお買い物をするのは初めてなの。お小遣いがたくさん貯まっているからお金のことは心配しなくて良いわ」
 王宮から出歩かないレイナはお金を使う機会がなかった。とはいえ黒咲凛の記憶があるのだから買い物自体に問題はないはずだ。それでも、レイナとしては初めての買い物に少しばかり浮き足が立っている。
「いや、自分の物は自分で購入するよ」
「そう? 残念。じゃあ、この眼鏡を頂くわ。あとはそうね……ノアお兄様にもひとつ眼鏡を買おうかしら」
 同じ物をもうひとつ買おうとするとまたルイスに止められてしまう。
「レイナ、ノア殿下と君では顔の作りが違うんだ。似合う物も変わってしまうよ」
「そうかしら?」
 確かに次兄とは顔の作りもいろいろ違うかもしれない。
「じゃあ、ルイスが選んで。私、身嗜みに関する物は大抵減点されるみたい」
 センスはそんなに悪くないとは思う。けれども実用を重視しすぎる。そもそもレイナは音楽意外に興味がないと思われているから周囲もレイナにそれ以外のことを期待しない。兄の部屋に遊びに行くときにお菓子を持って行ったら驚かれる程音楽以外の部分には期待されていない。
 しかしルイスは先程レイナの眼鏡を選んでいたときの真剣さは見せず。並んだ男性向け眼鏡の中からオーバルフレームと呼ばれるような形の物を選び短く「これで」と商人に告げた。まるで綺麗に整列された本棚から目当ての本を探し出すほどの速度だ。真剣度が違う。
「こういうのは直感も大事だからね。ノア殿下もどんな形でも合う顔の作りだとは思うよ」
「ふーん、じゃあルイスは?」
「私は……眼鏡の跡が顔に残るのが嫌でね」
 買わないよと仕種で示す。けれどもホセが首を傾げている。
「ルイスは既に持っていたのでは?」
「……輸入され始めた頃に興味本位で買ってみたけれど……壊滅的に似合わないから人前では絶対に掛けたくない」
 どうやら触れられたくない部分に触れてしまったらしい。ルイスは普段は見せないような不快そうな顔を一瞬見せ、それからまたとってつけたような笑みを浮かべる。これは相当疲れそうだ。
「今日はこれでいいわ。ルイス、昨日はお散歩に行けなかったけれど今日は体調大丈夫?」
 お散歩に行きましょうと誘えば、少しだけ機嫌の良さそうな顔になる。
「喜んで。丁度君を誘おうと思って探していたんだ」
 そう言われると悪い気はしない。
 商人に代金を支払い、ホセには外してもらうことにする。万年筆のことは勿論秘密だ。
「私のお気に入りの場所に連れて行ってあげる」
 まるで幼い子供のように得意気に言ってみたけれど、たぶんルイスはもう何度も行ったことがあるだろう。それでも、笑顔で楽しみだと言ってくれるその優しさは何年経っても変わらない。
 たぶん、王女へのご機嫌取り。ずっとそうだったかもしれない。最初はそれが苦手だった。けれど、今はそれでも嬉しいと思ってしまう。
「ルイス、来週空いている日はある?」
「レイナの為ならいつでも空けるよ」
 彼はそれが当たり前のことだと言うようにいつもの笑みを見せる。
「そう? じゃあ、私があまり会いたくない人と会わなくてはいけないの。あなたの意見も聞きたいから同席して欲しいわ。当日はエレナお姉様も一緒よ」
 戴冠式のドレスを作らなくてはいけない。
「あまり会いたくない人?」
 ルイスは首を傾げる。レイナが他人に対してそういう評価をすること自体が珍しいと思っているのだろう。
「そう。体のあちこちを測ったりピンを刺したりされるのって嫌よ。その間大人しくじっとしていなくちゃいけないから楽器を弾けないわ」
 そう答えればルイスも答えがわかったようでふふふと上品に笑った。
「そう言えばレイナは昔からドレスを作るのが嫌いだったね。着られればなんでもいいって」
「ええ。でも、今回は……面倒だけどそういうわけにはいかないわ。一緒に結婚式のドレスも注文してしまおうと思うのだけどルイスはそれでいい?」
 採寸は一度に済ませてしまいたい。レイナにとってはただそれだけの話だった。
 けれどもルイスは一瞬硬直し、それから顔を覆ってしゃがみ込む。
 恥ずかしがっているのだろうか。一体どうしたのだろう。不思議に思いながら手を出そうとすれば、待ってと仕種で示される。
「……君から求婚された気分だ……」
「私たち、婚約しているのよね? だったら結婚するものじゃないの? もう、ルイスは家族の一員みたいな部分があるけれど、私はルイスと本当の家族になりたいわ」
 嘘ではない。ただ、本心かと訊ねられるとレイナは落ち着かなくなってしまうだろう。
 とても不安だ。この先を考えると不安になってしまう。
 まだシナリオの開始地点ではない。ルイスの心変わりが怖い。
「レイナ、その……義務感だけではない、よね?」
 不安そうに訊ねられ、戸惑う。
 ここで選択を間違えてはいけないと頭は考えるのに、胸の奥が痛む。
 どうもルイスとレイナの間にズレがあると感じてしまう。
 お互い、相手を信じ切れていない。大切に思い合っている、はずだ。けれども感情にズレがある。
「ルイスは……私を信じてくれない?」
 狡い訊ね方だ。こんなの誠実ではない。レイナ自身そう思うのに、頭の中で過るのは黒咲凜の描いたシナリオ。
 いずれ道を踏み外す悪い女王になる。まだ頭のどこかで信じているから、ルイスに対して怯えている。
「ごめんなさい。今のは卑怯だったわ」
 ドレスの話は延期した方がいいかもしれない。
「今回は戴冠式のドレスだけにする。その……私、焦りすぎていたかしら?」
 不安になって訊ねれば揺れる瞳に見つめられる。
「すまない。レイナ……私は君を傷つけてしまったかな?」
「ルイスになら傷つけられても構わないわ」
 これは間違いなく本心だ。ルイスになら構わない。
 そう思うのに、ルイスは強い戸惑いを見せる。
「レイナ……君は、どうして私が君を傷つけると思うんだい?」
「それは……」
 黒咲凛の記憶があるから。
 だからきっと、ルイスは心変わりしてしまう。
「私、あなたが去ってしまってもいいと思っていたわ。いつかそうなってしまうってずっと思ってる。けれど……心がなくても、側に居て欲しいなんて……狡いことを考えてしまうようになって……ねぇ、あなたの心が他を向いてしまっても、その器だけは私の側に置いて? 心は誰にも縛れないけれど……その器は……権力で縛れてしまうわ」
 あの物語の中のルイスは、器だけ縛られていた。
 きっと同じ道を辿ってしまう。だって即位は拒めないもの。
 そう考えた瞬間、体が揺らいだ。
 強引に引き寄せられ、ルイスの腕に閉じ込められる。
「レイナは……愛情表現が不器用すぎるよ」
 困ったような声色にどう反応を示せば良いのかと悩んでしまう。
「レイナ、普通は自分の愛する相手に浮気なんてしないで欲しいと願う物だよ。現に私は、君が他の男と同じ空気を吸っているだけでも嫉妬で狂いそうになってしまう」
 大袈裟な。そう思うけれど、ルイスの言葉はどこまでが本気か読みにくい。
「私は、君を愛している。けれど、君の立場からすると信用出来ないかもしれない。誓って君の身分が目当てではないよ。レイナ。君と婚約が決まった日、初めて話した瞬間から君に惹かれていたんだ。でも……君が王族だから、私の言葉は権力が目当てだと思われてしまう。どうしたら君に伝えることが出来るだろうか」
 ぎゅっと抱きしめられると彼の鼓動が伝わって、そこから音楽が溢れてくるような気がする。
「……言葉は要らないわ。私も……きっとこの先も言葉には出来ないから」
 言葉にすると嘘みたいになってしまう。
「私は、あなたを縛ることしかできないもの」
 ただのひとりになれればどんなに良いだろう。
 レイナは生まれた瞬間から王女で、そしてこの先は女王として生きる。ただの女になることはできない。
「君を攫って逃げられたらどんなにいいだろう」
「どうせ、王宮の敷地内から出られないわ」
 試したわけではないけれど、凜は王宮の外のマップを作っていない。だからきっとレイナはここから出ることができない。
 悪いのは凜? それともレイナ?
 考えても無駄なのに、そんなことを考えてしまう。
 意思とは関係なく、体が震える。
 まるで怯えているみたいに。
「大丈夫。君から離れたりしないから」
 優しく頭を撫でられても、あの展開が脳内を巡ってしまう。
「私……王になんてなりたくないわ。大きな力に……責任なんて持てない……」
 きっと暴走してあの結末に辿り着いてしまう。
 音楽のことだけ考えていきたいのに、世界はそうさせてくれない。
 楽器が恋しい。チェロを抱きしめて、気を失うまで演奏し続けたい。
「レイナ……君は私の腕の中でも楽器のことしか考えられないのかな?」
 寂しそうな響きが胸の表面をひっかいたような感覚。
 レイナの感情が微かに揺さぶられた気がする。
「……音楽のことだけ考えて生きていたいのに、あなたは……そうさせてくれないの。私の中に入り込んで……私の軸を揺さぶるわ」
 もう自覚している。けれどもどうしても言葉に出来ない。
 言葉にするのが怖くて、きっと音に出したら失ってしまう。
「私たち、少し距離を置くべきかしら?」
「……レイナが望むなら……二日が限界だと思う……やっぱり一晩。今のままの君を放っておくなんて出来ない」
 優しい手に背を撫でられる。
「離れたくない」
「……ルイスがチェロならいいのに。そうしたら……ずっと私の手の中よ」
 大切に手入れするわ。毎日たくさん弾き込んで……誰にも邪魔させないのに。
 もう良いわとルイスの胸を押す。
「……今日は、ひとりにして。考えが纏まらないときはやっぱりチェロを弾くのが一番よ」
 ルイスを残し、部屋を出る。
 命に等しい楽器を次兄の部屋とは言え自分の手元から離すなんてやっぱりどうかしていた。
 足早に次兄の部屋を目指す。
 今日は気絶するまで感情を吐き出す。
 そう。音楽でルイスのことを考えてしまうのだから。
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