黒炎の宝冠

ROSE

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10 蜥蜴と蜘蛛

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 使用人を断ってお茶の準備をする。自分がやると言うルイスに今日はもてなさせて欲しいと告げれば少し居心地が悪そうに席に着いた。
 皿の上に弦楽器型のクッキーを並べ、カップを温めていると珍しく来客があった。
「ルイス」
 来客はレイナの私室だというのに、真っ先にルイスを呼ぶ。なんて失礼なんだろう。と彼でなければ少し腹を立てていたかもしれないが、既に諦めているので怒る気すら起きない。彼に関しては好きにさせておくのが一番だ。
「ホセ、ここはレイナの私室だ。まずは彼女に挨拶をするべきだと思う。それに、王宮の魔術師とはいえ君が足を踏み入れて良い場所ではないのでは?」
 ルイスは無駄だとわかってはいるけれど一応小言くらいは言わせて貰うという様子でホセを叱る。
「そう。レイナ、お詫びに一曲披露するべき?」
 ホセはルイスの小言を気にする様子も見せず、感情の読めない表情でレイナに訊ねる。彼は演奏を披露さえすればなにをしても許されると思っている節がある。普段なら勿論お願いするところだけれど、今日はそんな気分ではない。
「これからルイスとお茶をしようと思っていたの。あなたは大人しいから招いてあげてもいいわ。用事があったのでしょう? 私じゃなくてルイスに。それとも、私の前では話しにくい?」
 カップをひとつ追加しながら訊ねれば、ホセは感情の読めない表情で見つめ返し、それからルイスを見た。
「蜥蜴が付いている」
 一瞬、なにを言われたのか理解できなかった。
 ホセの言葉はいつだって突然で、あまり他人と会話をする気がなさそうに感じられる。
 ルイスもまた困惑している様子だ。
 そして、ホセは無言でルイスの首の後ろを掴む。驚いたルイスが一瞬女の子みたいなかわいい悲鳴を上げたけれど、それさえ気にせず彼の首からなにかを取った。
「それ、なに?」
 ホセが掴んでいるのは黒い影のようなもの。チェロの糸巻きよりも少し大きい黒い影はじたばたと暴れているようにも見える。そしてそれは次第に蜥蜴の様な形になった。
「蜥蜴」
 ホセは静かに答える。見れば蜥蜴に見える。けれども、生きものの蜥蜴ではない。
「呪術の類いかい? レイナに悪意がある?」
 ルイスは驚いたようだが、すぐに真剣な顔で訊ねる。
 自分の首に潜んでいたものだというのに、自身よりもレイナの身を案じてくれるらしい。
「うん。呪詛。でも、ルイスを狙っている」
「私を?」
 ルイスは驚きを見せ、それから納得したように頷く。心当たりがあるのだろうか。
 ホセは蜥蜴を小瓶にしまい込む。蜥蜴は瓶の中で出せとでもいうように暴れた。
「それ、どういう呪詛なの?」
「不安を増幅させるもの。でも、今のルイスはレイナが居れば安全」
 ホセは暴れている蜥蜴を小さな魔法円の様なものを使って消してしまう。それから少し考えて、上着の内ポケットから小さな石を取り出した。
「レイナ、握って」
 よくわからないが、レイナはその言葉に従う。ホセはよくわからないけれど害になることはしないはずだ。
「そのまま魔力を込めて」
「うまく出来るかしら」
 楽器を持たずに魔力を制御するのは少し苦手だ。けれどもホセが真面目な様子なので努力はしてみる。これは一体なにになるのだろう。
 ホセの合図があり、石を返す。
「これ、なにに使うの?」
 訊ねても、ホセは石の上で指を動かし口笛で旋律を紡ぐばかりで答えない。こんなに綺麗な口笛を吹ける人なんてホセ以外に居るのだろうかと思えるほど綺麗な音で、擦れもなく音程の狂いさえない。質問を忘れてしまうほど聞き惚れ、特別な術なのだろうと感じられた。
 丸かった石は宝石のように整えられ、それから少し大きな宝石のピアスになった。
「ルイス、肌身離さず身につけて」
 ホセはピアスをルイスに渡す。
「え? 私? あー、つまり、耳に穴を開けるのかい?」
 耳に穴を開けるのが怖いのだろうか。ルイスの顔が引きつっている。そう言えば彼は基本的に痛いことが苦手だ。
「レイナの魔力がルイスを護る」
「そう言うことに使うなら先に言って頂戴。わかっていたらもうちょっと真面目に頑張ったのに」
「そう? 十分な量だと思う」
 ホセはあまり興味がなさそうだ。けれども、たぶんレイナがルイスを大切と言ったことを覚えていてくれたのだと思う。
「ルイスを狙ったのが誰かわかる? 私の権限で国外追放にしてもいいわ」
「それはできない。レイナ、即位するまでは」
 つまり、ルイスを狙っているのは王族かそれに近い立場の人物なのだろう。
「ホセ」
 彼の腕を掴み、屈むように仕種で示す。彼はすぐに従った。
「ルイス、危険なの?」
 耳元で囁くように訊ねる。
「今は少し安定しています」
「お願い、ルイスのことを護ってあげて。私には彼が必要なの」
 たぶんホセは敵じゃない。そう思うから彼に頼む。
「はい、あなたがそう命じられるのでしたら」
 ホセは相変わらず感情の読めない顔で静かに答えた。
「あなたも同席なさい。今日はルイスを助けてくれたのだもの。なにかご褒美をあげないと。なにがいい? 私の権限で動かせる物なら……ルイス以外はなんでもあげるわ」
 ルイスを助けたご褒美にルイスはあげられない。たとえホセが彼を気に入っていても。
「褒美……いえ、私は職務を全うしただけ」
 ホセは少しだけ困惑を見せた。確かに王宮魔術師としての仕事の範疇かもしれない。
「未来の王配を救ったのよ? ご褒美をあげないのは不自然だわ。異国の楽器を取り寄せる? それとも禁書の閲覧許可?」
 ホセが興味を持ちそうな物なんてこのくらいしか思い浮かばない。
 ホセは一瞬目を伏せる。そして深く息を吐いて跪いた。
「では、私を……レイナの僕にしてください」
 深く頭を下げられ、困惑する。
「あなた、王宮魔術師よね?」
「私の仕えるべき主はレイナただ一人」
 これは、『EVER』の中でホセが忠実な従者だったことと関係があるのだろうか。
「ルイス、これって可能なの?」
「いや、私も困惑はしている……しかし……ホセがレイナに仕えるとなると……正直今とあまり変わらない気はする」
 そうだ。ホセはいつだって突然現れてレイナの手助けをしてくれるし、楽器の手入れも完璧にしてくれる。それに頼まなくたって監視網を敷いてレイナの護衛まで兼任してくれている。あの監視網があれば、ルイスの安全も確保できそうだ。
「そうね。ホセ、許可するわ。これからもルイスのこと、ちゃんと護ってね」
 そう告げると、ホセはレイナの爪先に口づけた。その瞬間、足下に魔法円のようなものが現れる。
 これは……契約だ。
 レイナも古い本でしか読んだことのないとても古い、今となっては誰も使わないような魔術だ。魂の絆を結ぶ術とでもいうのだろうか。この契約を交わせば、転生しても離れることはないと言われている。
「……ホセ、本気? この術、解けないはずよ?」
「私はレイナの駒。あなたの望むように動かすべきです」
 ホセの本心は見えない。けれども、この契約で彼はレイナの命を奪えない。
「前から変わっているとは思っていたけれど……やっぱりあなた変よ。まぁ、ルイスの護衛としてこき使ってあげる。あと楽器の点検ね。そう、ルイスのヴィオラも中々素敵なの。ホセの調節でもっと良くなるんじゃないかって思っているのだけど」
 そう口にして、しまったと思う。今日はルイスの話をするつもりだったのに、また楽器の話になっている。
「だめよ。今日はルイスの個人的な話を聞く日なのに私ったらまた楽器のことばかり話しているわ。ルイス、お茶にお砂糖はいる?」
 まるで誤魔化すようにお茶の好みの確認をする。これじゃあまたルイスに気を遣われて終わりそうだ。
 落ち着かない気持ちのままルイスに視線を向けると、少しだけ困ったように微笑まれる。
「レイナは普段どうやって飲んでいるのかな? 同じようにして欲しいな。私は特に味に対する好みがないんだ。味覚が少し鈍いみたいで」
 ルイスの言葉に驚く。
「味がわからないの?」
「まったくわからない訳ではないけれど、薄味だと感じにくいかな」
「いつから?」
 そんな話は初めて聞いた。生まれつきのものなのだろか。
「子供の頃からだからあまり気にしてはいないんだ」
 けれどもホセがじっとルイスの口元を見ていることが気になる。
「ホセ、なにかあるの? ルイスを見つめすぎよ」
 お茶を差し出しながら訊ねる。
 やはりルイスの美貌は男性にも通用してしまうのだろうか。
 一瞬過った思考をなんとか振り払う。
「……呪が刻まれている。アルベルトも同じ物が」
 ホセの言葉に、少し集中してルイスを観察してみる。確かに口になにかおかしな色があった。たぶん舌だろう。
「なにを言っているんだい? おかしなものはホセがさっき取ってくれたのだろう?」
「古すぎて見落としていた」
 ホセはじっとルイスの口を見つめ、指を動かす。
「……古すぎて外すのは時間が掛かりそう」
「悪い呪いなの?」
 訊ねれば、ホセは黙り込む。アルベルトにも同じ物があるということは、レイナの側にいる人間を狙っているのかもしれない。
「……今は悪さをしていない。けど……レイナ、あなたが危ない」
 どういうことだろう。呪いを掛けられているのはルイスのはずだ。
「レイナに危険があるなら取り除いてくれ」
「今は無害」
 ホセは静かに答える。そしてそれ以上答える気がないのか黙り込んでしまった。
「なんとなく犯人に心当たりがあるけれど、アルベルトも確かめてみないとだめかしら? 取り除くには二人揃ってる方がいいのでしょう?」
 訊ねれば、ホセは静かに頷く。
「レイナが王宮から出ようとしなければ無害」
 その言葉に驚く。
 レイナは生まれてから一度も王宮から出たことがない。けれども不自由もなかった。王宮の敷地はとんでもなく広い。図書館も劇場も博物館も揃っている。もうそれに慣れてしまっていたのでそういうものなのだと思っていた。ただ、なんとなく出られないのではないかと言う気はしていた。なにせ王宮の外のマップは作っていないのだから。
「外の世界があるなんて思いもしなかったわ」
 少しおどけてみたが、実際ルイスもアルベルトも外から王宮に、それもかなり頻繁に足を運んでいる。普通に考えればその事実の方がおかしい。王女の婚約者と友人とはいえ、殆どの時間を王宮で過ごしている彼らはおかしい。
「ルイスもアルベルトも王宮に居過ぎなのよね。てっきり王宮に住んでいるのかと思っていたわ」
 そう告げると、ルイスは目を伏せ、ホセは黙り込む。
 どうもレイナには言いたくないなにかがあるようだ。
「別に、今更出たいなんて言わないから気にしないで。ルイスが会いに来てくれるからそれで満足しているわ」
 そうは言ったけれど、レイナの交友関係は狭すぎる。兄姉以外に接するのは婚約者のルイスと唯一の友人アルベルト、そしてホセだけだ。
「あら? 私、寂しい人? 友達がアルベルトしかいないわ」
 でも兄と姉が二人ずつ居るから寂しいなんて感じないわね。
 妙な沈黙が続いて少し居心地が悪い。私が王宮から出られないことはマップを作っていないこととは別の理由が用意されているのだろう。それも、ルイスの反応からしてあまり喜ばしくはない理由だ。
「ルイスったら隠し事が下手過ぎるわ。私にとってあまり嬉しくない話なのはわかったけれど教えて頂戴。あなたはなにを知っているの?」
 私が出られないこととルイスのまじないはなにか関係がありそう。
「私が言えることは……私とアルベルトの立場は逆だったかもしれないということくらいだよ」
 ルイスの言葉が理解できずに首を傾げてしまう。
「どういう意味?」
「あの日、私が先にレイナに会わなければアルベルトがレイナの婚約者になっていたということだよ」
 忌々しそうに言う姿に少し驚く。なんということだ。
「ルイスが先に来てくれて助かったわ」
 アルベルトが婚約者だったらたぶん殺傷事件を起こしている。彼は五分間のお喋りは楽しいけれどずっと一緒に居ると自慢話ばかりでうんざりするもの。
「レイナは……アルベルトと親しいのに彼とは上手くやれなかったと思うの?」
 驚いたように訊ねられた事実に驚く。てっきりルイスはアルベルトという人間をきちんと理解していると思ったのに、逆に彼はアルベルトとの結婚生活に耐えられるのかと訊ねたくなってしまう。
「アルベルトはちょっとしたお喋りは楽しいわ。情報収集力もあるから家臣にはしてあげてもいいかも。でも、ずっと一緒に居るには向かない人よ。彼は自分のことが好きすぎるから気がつけばずっと自慢話の連続だわ」
 自覚してわざとやっている部分もありそうだけど。
「ルイスなら、友人としても上手くやっていけたと思うけど……私が投獄されても面会に来てくれるでしょう?」
「……アルベルトを物理的に始末すること前提で考えているんだね?」
 ルイスの笑顔が珍しく引きつっている。
 どうやらアルベルト抹殺計画に同意はしてもらえないらしい。
「あまり本人には言えないけど、彼と結婚するくらいならたぶん牢の方が少しは快適よ」
 あのお喋りなお口はとっても生意気で……レイナの地位をすっかり忘れてしまっている。それが居心地が良いと感じるときもあるけれど、度が過ぎれば腹が立つと言ったものだ。
「ルイスは大人しくて控えめでいいわ。それにとっても努力家だもの。最初の頃は少し怖い人かと思ったけれど、今はそうじゃないってわかっているわ」
 黒咲凜の知識が、ルイスに近づくことを躊躇わせているけれど、レイナとしてはルイスに惹かれている。いや、惹かれているなんて言葉では足りない。
「この先もずっとルイスと居たいと思うのは迷惑かしら?」
 なんて卑怯な訊ね方なのだろう。こんなの誠実じゃない。
 でも、まだ言葉にしてしまうのが怖いの。言葉にしなければ、今ならまだ引き返せるのではないかと考えてしまう。そんなものは無駄だと知っているのに。
 ルイスは黙り込んで、それから少し戸惑うようにレイナの手を握る。
「私は君が望む限り君の物だ」
 その言葉はとても残酷に思えた。
 卑怯なレイナが悪いのに、彼の言葉に酷く傷ついた気がした。
「私が王族でなかったら、きっとルイスとは一緒に居られないのね」
 こんな言い方はずるいとわかっている。けれども口から飛び出した言葉を抑えることが出来なかった。
 そもそも王女に生まれなければ出会うこともなかったはずの人だ。
「かもしれない。でも……君が王女でなかったら、きっと私は君を探したと思うよ」
 そっと手の甲に口づけられた。
 唇が触れた熱が火傷しそうな程に熱く感じられる。
「レイナ、どうか私を手放さないで」
 その言葉を放ったルイスを恐ろしいと感じてしまった。
 彼の目を見れば、あの演奏会の日と同じように見える。なにかの術に掛かったような、異常な執着をむき出しにしている目だ。
「ルイス」
 ホセがルイスの背を撫でた。その手に糸の様ななにかが付着しているように見える。直感的に蜘蛛を連想させられた。
「……レイナ、今日はもうルイスを休ませた方がいい。ここは……彼にはあまりよくない」
 ホセが静かに言う。
 つまりルイスが狙われていると言うことだろう。
「レイナ、気をつけて。あなたの言動がルイスを揺さぶってしまう」
「え?」
 ホセの言葉を理解できずに思わずルイスを見る。
「彼の不安を増幅させる術を使っている人間が居る。一時的に外すことは出来ても、元を絶たなければ何度でもルイスは揺さぶられる」
 誰かが悪意を持ってルイスを不安にさせていると言うことだろうか。
 もう一度ルイスを見れば、彼は目眩がすると言うように目元に手を当てているところだった。
「レイナ、すまない……急に目眩が……今日はもう……帰るよ。折角誘ってくれたのに……」
「いいの。ホセ、ルイスを家まで送ってあげて。途中で倒れたら大変よ。必要だったら医者を派遣して」
 顔色まで悪いルイスの瞳は光が点ったり消えたりと忙しい。彼の中でなにかと戦っているのだろうと予想出来た。
「大丈夫だよ。私にも主治医は居るから」
 いつものように笑みを見せたつもりなのだろうけれど、無理して笑っているようにしか見えない。
「ゆっくり休んで」
 頬に口づけてルイスを見送る。
 去り際のホセに後で話があると告げ、真っ直ぐと次兄の部屋を目指した。


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