黒炎の宝冠

ROSE

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9 変わりゆく関係

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 あの演奏会の日からレイナの日常は変化した。勉強することがとても増えたし、二人の兄は常にどちらかがレイナの側に付き添おうとする。
 姉たちはと言えば、長姉は以前よりもレイナの着るものに口うるさくなった。化粧や髪型にも口を挟む。次姉はいつも以上に怯えるようになり、引きこもりがちだ。夕食の席にも顔を出さない日すらある。
 勉強自体はそれほど大変ではない。けれども社交性の乏しいレイナは多くの貴族や他国の王族との交流となると不安要素が多い。知識としてのマナーは身に付いていたとしても、実践できるかはまた別の話だ。
「ほんっと、私の婚約者がルイスでよかった」
 練習室で零せば、アルベルトは笑う。
「レイナ様、本当にルイスのこと大好きですね」
 どこかからかうようだ。
「模擬だったからまだいいけれど、昨日のお茶会、ルイスがいなかったらきっと大惨事になっていたと思うわ」
 ご婦人方とのお話は、レイナの最も苦手なことだ。噂話を囀っている時間があったら一秒でも長く練習したい。そう思うのに、大人しく座って優雅に微笑みながら粗相せずに相槌を打たねばならない。退屈すぎて話を聞いていなかったのをフォローしてくれたのはルイスだ。
「アルベルトはいつも自分の話に持って行ってしまうけれど、ルイスはちゃんとあの退屈な話を全部聞いているのね。すごく的確な返答をしていて驚いたわ」
 婚約を解消されるようなことがあっても家臣としては欲しい。そう思ってしまうくらいには彼の社交能力の高さに惚れてしまう。
「一瞬でご婦人方を魅了していたし……あ、これ私いらないって思ってしまったわ」
「もう、レイナ様。ルイスが頑張っているのはレイナ様の為ですよ? あいつはレイナ様のことが好きすぎてレイナ様のこととなると周りが見えないというか、時々レイナ様のことも見えていないというか」
 アルベルトの言葉に、瞬きを繰り返してしまう。
 好きだと言われても、ここ数日のルイスの態度は少しおかしいように思えてしまう。
「……ルイス、最近私と目を合わせてくれないわ。嫌われてしまったのかしら?」
 出来が悪すぎて呆れられてしまっていないかと不安になってしまう。それに、考え込んでいる時間が長いようにも思える。もしや婚約解消をどう切り出させるか悩んでいるのでは。そんな恐ろしい考えが過るほどに。
「会いたくて早くお勉強を終わらせても面会を断られてしまうし……」
 確かにお茶会や社交界の練習の時には会えるけれど、必要最低限の会話以外交わしていない気がする。
 やはりルイスに捨てられるのではないだろうか。
「四重奏の楽譜を渡したのがいけなかったかしら?」
 ルイスがヴィオラを演奏すると聞いたから、つい、嬉しくなってしまって楽譜をいくつか渡してしまったけれど、そんなに難易度の高い曲ではないはずだ。
「あー、それは……あいつ、今頃必死に練習しているんじゃないかな」
 アルベルトは苦笑する。
「そんなに難しい曲じゃないはずだけど」
「新しい楽器は補正が付いていないから。レイナ様の魔力と合わせやすいように調節されているんです。だから、ルイスはかなり苦戦してると思いますよ」
 自分なら楽勝だと言わんばかりの得意気な表情で言うアルベルトに呆れてしまう。
 確かに前の楽器と違いすぎて難易度が上がっているのかもしれない。
「もういい。ルイスが来てくれないなら、自分の部屋で練習する」
 今日はアルベルトの自慢話を聞かされるだけの元気はない。
 楽器ケースを背負い、練習しようと思っていた楽譜をかき集めれば、扉が開く。
「レイナ、ごめん。遅れてしまったね」
 入ってきたのは少し呼吸を乱したルイスだった。
「ルイス、どうしたの? あなたが走るなんて珍しい」
 いつだって優雅で余裕があるような仕種を見せるのに、どうしてしまったのだろう。心なしか衣服まで乱れている気がする。
「あー、いや、たいしたことじゃないよ」
 少しだけ疲れた笑みを見せられるが、普通ではないことが起きたにちがいない。
「言わないならホセに訊くけど」
 ホセは王宮内の出来事は全て把握している。彼に訊けばわからないことなどない。
「……マンダミエント卿に、訓練に参加しろと強制連行されてね。レイナと約束があると言っても、ああ……私は弦楽器奏者だというのに、素手の殴り合いをさせられるとは思わなかったよ」
 マンダミエント。まさかここでその名前が出てくるとは思わなかった。
 ヘラルド・マンダミエント。宮廷騎士。長兄ジェイコブの部下の一人になる。トランペット奏者だが、音楽よりも剣術や武術の腕が素晴らしい。ジェイコブのお気に入りだったはずだ。
「お兄様、ルイスを鍛え直すって張り切っていたから……ヘラルドを使うなんて。彼、ものすごく強いって聞いたわ。私のルイスが怪我をしたらどう責任を取るつもりなのかしら」
 これは一言ヘラルドに文句を言っておくべきかも知れない。
「レイナ、心配してくれるのは嬉しいけど、君の心配は私が手を負傷して合奏出来なくなったら困るという意味かな?」
 息を整えたルイスが訊ねる。
「それもあるけどルイスが痛い思いをするのは嫌よ」
 否定できないのがレイナだ。
「嘘でも否定して欲しいな」
 ルイスは少し疲れたように笑う。
「仕方がないだろう。レイナ様は嘘が吐けないのだから。先程なんてルイスが来ないなら今日の練習は中止だと拗ねていたくらいだ。社交辞令でもアルベルトとの練習はとても楽しいと言ってくださればいいのに」
 アルベルトはからかうつもりらしい。
「アルベルト、あなた、大事なことを忘れているわ。私、王位継承するのよ。つまりもうすぐ女王になるの。あまり私をからかうなら、そうね、あなたの素敵な奥さん、没収して博物館に展示するわよ。日当たりのいい、劣化しやすそうな場所で」
 勿論そんなことはしないけれど、からかわれるのは気分が悪い。
「ちょ、レイナ様、それは流石に権力の乱用では?」
「じゃあ、アルベルトが代わりにヘラルドの訓練に参加しなさいよ。そうしたら私もルイスと過ごせるもの」
 ねぇルイス、と彼の手を握れば、困ったように微笑まれる。そしてアルベルトは深い溜息を吐いた。
「レイナ様、ルイスの訓練なんですから僕が行ったところでルイスも強制参加させられるだけですよ」
 それもそうだ。ルイスの訓練なのだから。
「だってルイス最近あまり会ってくれないのだもの。頑張ってお勉強早く終わらせてるのにルイスは構ってくれないなんて、なにもかも放り投げてどこかへ行ってしまいたいわ」
 王宮を抜け出して、どこか遠くへ。
 現実的ではないことはレイナ自身自覚している。どこか遠くへ行くにしてもチェロは重すぎる。王宮から出たことのないレイナは門を抜ける前に騎士に捕まってしまいそうだ。
「レイナ、本当にすまない。けれど、この鍛錬に参加しないと結婚まで君との面会すら禁じられてしまう」
「別にルイスに剣術的な強さは求めていないわ。私、女王になるのよ? ルイスに最高の護衛を用意するくらいしてあげるわ」
 そう、ルイスのことはレイナが護ればいい。
 誰にも取られないように厳重に鍵をかけて保管したい。
「男としてはそれはかなり複雑ですよ。惚れた女性を護りたいのが男ですし、嘘でもルイスを頼ってやって下さい」
 アルベルトはどこかからかっているようにも見える。
「嘘でもって、私は嘘は吐かないわよ。それに、頼ってるわ。特に社交的な面で。たとえルイスに振られたって外交官として逃がさないって思うくらいには頼ってる」
「そう言う頼り方じゃなくて……」
 アルベルトは溜息を吐く。
「私の苦手分野を得意としてくれるルイスには本当に助かっているわ。でも、居てくれるだけでいいの。最近いろいろぴりぴりしてる気がするから……ルイスがいると少し落ち着くわ」
 勿論アルベルトも友人として和ませてくれる。けれども、アルベルトと二人になるとどうしてもルイスに会いたくなってしまう。
「アルベルトにも勿論感謝しているのよ。いつもその生意気なお口で和ませてくれるもの」
 だけど、特別なのはルイス。
「練習、さぼっちゃおうか」
 思わずそんな言葉が飛び出る。
「え?」
「レイナ?」
 二人ともとても困惑した顔をしている。
「大丈夫? どこか悪いの?」
「レイナ様、すぐに医者を呼びますから、とりあえずそこに座って下さい」
 数秒遅れて慌て出す二人にこちらが驚いてしまう。
「どこも悪くないわよ。悪い? 私がさぼったら」
 思わずアルベルトを睨む。
「一体どうしてそんな……寝食忘れて練習漬けのレイナ様が」
 まぁ、許されるなら毎日気絶するまでチェロを弾きたいけれど。天変地異の前触れの如く扱われるのは心外だ。
「べつに、お勉強で疲れちゃったからたまにはルイスとのんびりお茶でもしようかと思っただけよ。アルベルトは無礼だから誘ってあげないわ」
 わざと拗ねた仕種をしてみせれば、二人とも目を丸くしている。結局のところ、この二人は似たもの同士ね。ただルイスの方が依存しやすくてアルベルトは自己愛が過ぎるだけ。
「いや、本当に珍しい……ってかレイナ様が練習さぼるとか初めてじゃ……え? チェロよりルイスを選んだって……明日には国が崩壊するのでは……」
 アルベルトは大袈裟に無礼なことを言う。
「ミラゲロ侯爵家を崩壊させてもいいわよ。まったく……アルベルトは私の友人だからってちょっと礼儀を忘れすぎよ」
「でもこんな僕がいないと寂しいでしょう?」
 笑顔で言い返されると言葉に詰まってしまう。アルベルトはこういう人間だ。
「……私の婚約者にルイスを選んで下さったお父様に心から感謝するわ。アルベルトを選ばれてたら殺人事件を起こしていたかもしれないもの」
 行きましょうとルイスの手を取れば、彼は硬直している。
「ルイス? 私とのお茶は嫌?」
「あ、いや……その……まさかお茶に誘われるなんて思わなくて」
「散歩の方がいい?」
 ルイスはとても困惑している様子だ。
「折角レイナが誘ってくれたのだからお茶にしよう。その後に散歩もなんて言ってしまったら欲張りかな?」
 いつもの穏やかな笑みが戻る。無理をさせていないだろうか。それでなくともルイスは悩んでいるように見えるのに。
「ううん。嬉しい。ルイスと過ごせるのが凄く嬉しいわ」
 ルイスを不安にさせないためにはこのくらい言わないと。それに、ちゃんと本心だ。最近少し距離を感じていたから。
「あーあ、お邪魔虫は退散しますよ。僕もこれでもご婦人方には黄色い悲鳴を上げられる美男子なんだけどな」
 アルベルトは大袈裟に不満そうな態度を見せるが笑っている。気にしていないのだろう。
「気を利かせて頂戴。最近あなたの方が私のルイスと過ごす時間が長いんじゃないかって妬いてたところなの」
 私のを強調すればアルベルトは口を大きく開けて笑い出す。気取ってない分こういう笑顔の方が素敵なんて思ってしまうことは黙っておく。
「レイナ様も冗談言えるんですね」
「あら、結構本気よ」
 同性愛者枠はテオドラ一人で十分だとは思っているけれど、ここはなにかが歪んだ世界だ。アルベルトがルイスに気があると言っても信じてしまう。
「大丈夫ですよ。ルイスはレイナ様一筋ですから」
 アルベルトは笑って、大切そうに楽器を抱えて出て行く。
「ルイスのことは心配していないわよ。ルイスの貞操は少し心配したけど」
 見送りながらそう呟くと、今度は隣から噴き出すような音が聞こえた。珍しい。ルイスがお腹を抱えて笑っている。
「……レイナ……それはいったい誰の影響かな? ふふっ……君がそんな冗談を口にするなんて……」
 相当面白かったらしい。笑いのツボまで似てるなんて、二人は来世で夫婦になるべきね。いえ、前世で夫婦だったのかもしれない。真剣に考えながら楽器のケースを手に取る。
「チェロって持ったままお散歩には向かない楽器よね」
 圧倒的に重い。特にケースが。それに、ドレスで楽器ケースを背負うなんて前世の記憶のせいかシュールに思ってしまう。御伽話のお姫様は間違っても楽器ケースを背負ってデートなんてしない。
「でも、手元にないと落ち着かないのだろう?」
 ルイスは優しい笑みを見せてくれる。どうやら爆笑状態から回復したらしい。少し残念に思ってしまう。爆笑している彼は彼で珍しいのでもう少し見たかった。
「今日はお部屋に置いてくるわ。どこでお茶をしようかしら? 私の部屋ならすぐに用意できると思うけれど」
 未婚の男女がとか小言を貰ってしまうだろうか。ルイスを見れば、僅かに頬を染めている。
「……君は……私を部屋に誘うことに抵抗がないのかな?」
 少し言葉に悩んだ様子でそう口にする。
「どうして? 何度か来た事があるじゃない」
 どうせ暇さえあればルイスはレイナを監視しているのだ。見られて困る物もない。なにも問題がないはずだ。
「……レイナ……それは……私を信頼してくれているのだと思っていいのかな?」
「え? 勿論よ。ルイスのことは凄く信頼しているわ」
 ルイスはどこか複雑そうだ。一体どうしたのだろう。
「美味しいクッキーがあるの。弦楽器の形なのよ。最近とても気に入っていて、毎日用意してくれるの」
 クッキーはあまり手を汚さずに作業しながらつまむのにも良いからお気に入りのお菓子だ。特にレイナは毎日同じ物が続いても全く気にならないどころか気付かないことさえある。むしろあまり気分で今日はあれの方がいいなんて言い出すこともないので比較的日持ちするクッキー類は毎日補充されている。
 チェロケースを背負ってルイスの手を引けば、少しだけ笑顔が引きつっているようにも見える。
「チェロケース背負うような女とお茶は嫌?」
「まさか。けど、使用人に預けてもいいのにと思ってしまうことはあるよ」
「そんなことしないわ。楽器は命よ。自分の命を使用人に預けるなんて正気じゃないわ。自分の身は自分で守らないと。いつ暗殺されてもおかしくない立場よ」
 本気で暗殺されるなんて今のところは思っていないけれど、王族という立場を考えればありえる。
「君の楽器は防具にも武器にもなりそうだからね」
 ルイスが笑ったことに安心する。彼も暗殺の危機はないと考えているのだろう。
「でしょう? ホセがこんなに重いケースを用意したときは恨んだけれど、これ、凄く頑丈なの。だからジェイコブお兄様が暴れたときは楽器の後ろに隠れることにしたわ」
 勿論兄が暴れることなんてないと知っているけれど、このケースに拳を当てれば拳の方が負傷するんじゃないかと思うほどに頑丈だ。
「ルイスが入れるケースを作って貰おうかしら。ちゃんとずっと運べるように鍛えるわ」
「レイナ、随分冗談を言うようになったね」
「あら、今のは本気よ。楽器と同じくらいずっと側に置きたいの。それに、頑丈なケースの中ならジェイコブお兄様も怖くないでしょう?」
 正直なところレイナよりルイスの方が暗殺の危機は多いと思う。彼はまだ王族ではないし、アルベルト派の貴族達に取っては邪魔な存在だろう。
「ルイスが楽器だったら毎日大切にお手入れして一日中一緒に過ごすのに……きっと良い声で鳴るわ」
 弾き込めば弾き込んだだけ応えてくれる楽器のように、ルイスとずっと一緒に過ごしたい。
「それは、レイナなりの愛情表現と思って良いのかな?」
 少し嬉しそうなルイスに驚く。
「構わないわ。でも、私少し思ったの。ルイスのこと、あまりよく知らないんじゃないかって」
 アルベルトはお喋りだし、いつだって自分の話ばかりするから、彼については知らなくていいことまで知っているかもしれない。だけど、ルイスはどこか控えめで、どちらかというと人の話を聞きたいように振る舞うから彼自身のことはあまりよく知らない。
「あなたがなにが好きなのかとか、そう言うこと、今まで知ろうともしていなかったかもって思ってしまったの。私っていつも音楽のことばかりで、あなたと会うと合奏したいばかり言ってるじゃない? だから、今日はルイスのことをたくさん教えて欲しいわ」
 ルイスは最初からレイナのことをたくさん知ろうと努力してくれた。贈り物ひとつにしたって、なにを喜ぶか試行錯誤してくれたし、本当はあまり好きではないヴァイオリンもたくさん努力してくれた。
 ルイスを見ればどうしてか顔を両手で覆い、しゃがみ込んで、それから深い溜息を吐く。
「……参ったな……そんなこと言われるなんて考えもしなかった……」
 呆れていると言うよりは、なにかに悶えているようにも見える。
「大丈夫?」
 思わず声をかければ、少し震えているように見える。
「ちょっと待って……今……幸せを噛み締めてる……」
 よくわからない。けれども深呼吸をしたルイスは突然立ち上がってレイナをきつく抱きしめた。が、ケースの存在を忘れていたらしい。
「ああ、今日ほど君の楽器が憎らしいと思ったことはないよ」
 思いっきり利き手をぶつけたルイスは忌々しそうに言う。
「ハグは嬉しいけどケースを下ろしてからにして欲しかったわ。怪我はない?」
「大丈夫」
 まだ利き手が痛むだろうに、それでももう片方の手はレイナを離そうとしない。
「レイナが……私に興味を持ってくれて凄く嬉しい」
「あら、前から興味はあったわよ? ただ、伝え方に失敗していたとは思うけれど。ほら、私って言葉でなにかを伝えるのが下手でしょう?」
 感情は全て音楽に向けてきたから表情でなにかを伝えるのも下手だと思う。
「君にそんなことを言われる日が来るなんて考えもしなかったから……凄く嬉しい」
 はにかむようなルイスにどきりとする。
 普段は本当に余裕ある貴族という印象なのに、こういう表情を見ると少しだけ幼さを感じて親しみやすい印象になる。それに、やっぱり近くで見ると美形だ。時々依存心が強いところを恐ろしいと感じてしまうこともあるけれど、彼はやっぱり容姿が整っている。
 別に、美形だから目を奪われた訳ではない。レイナは頭の中で反論する。ただ、ルイスにこんなに些細な事で喜ばれたことがなんとなくくすぐったいような気がした。
「今日はたくさんお喋りを楽しめそうね」
 そう言って、少しだけルイスを急かす。
 美味しいお菓子とお茶で、もう少しルイスと近づけるだろうか。
 そう考え、少しだけ今までを後悔する。
 もっと早く彼と向き合っていれば、今ほど依存心は強くなかったかもしれない。
 けれども、それと同じくらい、彼に依存されていることを嬉しいと思うレイナの存在に気付いてしまった。
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