30 / 53
7 求めていた物2
しおりを挟む 言うや、ディオメデスは、先ほどメロペが触れたリィウスの太腿の内側を撫であげた。どこかで、これは俺のものだ、という意思表示の気持ちもあったかもしれない。
正直、メロペがリィウスの身体に触れた瞬間、ディオメデスはかなり不快に思ったのだ。
「まぁ、今夜はまず俺にまかせておけ。俺が一晩かけてしっかりと仕込んでやる。おまえたちが楽しむのはそれからだ」
あまりにも屈辱的な暴言に、リィウスは耳朶まで恥辱に燃やして、ディオメデスを睨みつけた。いつもは怜悧な青い瞳は、今は火を吹きそうに燃えている。
「出ていけ! 下種ども!」
その言葉はメロペとアウルスに向けたものだった。さすがに客となるディオメデスを拒絶することはできない身だとリィウスも身に染みているのだろうが、メロペたちにたいしては別だった。
「わ、私を買ったのはディオメデスだろう? おまえたちがここにいる権利はないはず!」
「いーや、実はそうじゃない」
身を起こしてわめきたてるリィウスの上半身を軽く抱きしめ、ディオメデスはなだめるように告げた。
「ちゃんと、それだけの金はタルペイアに払っているさ。こいつらはここにいて、花嫁が純潔かどうか見届ける証人になるんだ」
リィウスは怒りに真っ赤になり、次に恐怖にか真っ青になった。薄紅のたゆたうようなほのかな光のなかで感情をたぎらすリィウスからは、以前の取り澄ました冷たい雰囲気が消え、感情むきだしで、ディオメデスを興奮させた。
「こ、こんなこと……許されていいわけがない! あ、あんまりだ!」
ディオメデスは吹き出したいのをこらえた。
可哀想なリィウス。純情なリィウス。世の中に、こんなことはいくらでもあることを、この歳になるまで知らなかったとは。
「初心だな……。可愛い」
小馬鹿にしたように、リィウスのこわばった白い頬に音をたてて接吻する。メロペがのけぞって笑う。
「では、可愛い花嫁の身体をとくと拝見させていただくとするか」
人並みはずれて聡明なはずのリィウスの、思いもよらぬ幼稚さを見て、ディオメデスは悪い癖だが嗜虐心をたかめられた。
正直、メロペがリィウスの身体に触れた瞬間、ディオメデスはかなり不快に思ったのだ。
「まぁ、今夜はまず俺にまかせておけ。俺が一晩かけてしっかりと仕込んでやる。おまえたちが楽しむのはそれからだ」
あまりにも屈辱的な暴言に、リィウスは耳朶まで恥辱に燃やして、ディオメデスを睨みつけた。いつもは怜悧な青い瞳は、今は火を吹きそうに燃えている。
「出ていけ! 下種ども!」
その言葉はメロペとアウルスに向けたものだった。さすがに客となるディオメデスを拒絶することはできない身だとリィウスも身に染みているのだろうが、メロペたちにたいしては別だった。
「わ、私を買ったのはディオメデスだろう? おまえたちがここにいる権利はないはず!」
「いーや、実はそうじゃない」
身を起こしてわめきたてるリィウスの上半身を軽く抱きしめ、ディオメデスはなだめるように告げた。
「ちゃんと、それだけの金はタルペイアに払っているさ。こいつらはここにいて、花嫁が純潔かどうか見届ける証人になるんだ」
リィウスは怒りに真っ赤になり、次に恐怖にか真っ青になった。薄紅のたゆたうようなほのかな光のなかで感情をたぎらすリィウスからは、以前の取り澄ました冷たい雰囲気が消え、感情むきだしで、ディオメデスを興奮させた。
「こ、こんなこと……許されていいわけがない! あ、あんまりだ!」
ディオメデスは吹き出したいのをこらえた。
可哀想なリィウス。純情なリィウス。世の中に、こんなことはいくらでもあることを、この歳になるまで知らなかったとは。
「初心だな……。可愛い」
小馬鹿にしたように、リィウスのこわばった白い頬に音をたてて接吻する。メロペがのけぞって笑う。
「では、可愛い花嫁の身体をとくと拝見させていただくとするか」
人並みはずれて聡明なはずのリィウスの、思いもよらぬ幼稚さを見て、ディオメデスは悪い癖だが嗜虐心をたかめられた。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説

醜い傷ありと蔑まれてきた私の顔に刻まれていたのは、選ばれし者の証である聖痕でした。今更、態度を改められても許せません。
木山楽斗
恋愛
エルーナの顔には、生まれつき大きな痣がある。
その痣のせいで、彼女は醜い傷ありと蔑まれて生きてきた。父親や姉達から嫌われて、婚約者からは婚約破棄されて、彼女は、痣のせいで色々と辛い人生を送っていたのである。
ある時、彼女の痣に関してとある事実が判明した。
彼女の痣は、聖痕と呼ばれる選ばれし者の証だったのだ。
その事実が判明して、彼女の周囲の人々の態度は変わった。父親や姉達からは媚を売られて、元婚約者からは復縁を迫られて、今までの態度とは正反対の態度を取ってきたのだ。
流石に、エルーナもその態度は頭にきた。
今更、態度を改めても許せない。それが彼女の素直な気持ちだったのだ。
※5話目の投稿で、間違って別の作品の5話を投稿してしまいました。申し訳ありませんでした。既に修正済みです。

【短編】復讐すればいいのに〜婚約破棄のその後のお話〜
真辺わ人
恋愛
平民の女性との間に真実の愛を見つけた王太子は、公爵令嬢に婚約破棄を告げる。
しかし、公爵家と国王の不興を買い、彼は廃太子とされてしまった。
これはその後の彼(元王太子)と彼女(平民少女)のお話です。
数年後に彼女が語る真実とは……?
前中後編の三部構成です。
❇︎ざまぁはありません。
❇︎設定は緩いですので、頭のネジを緩めながらお読みください。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる