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2 生まれ変われるなら
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今日のアルジャン様はなにかいつもと違う気がする。
馬車の中で声を掛けられたのは数える程度しかないというのに「着くまで寝てろ」だなんて普段の彼なら絶対にしないような気遣いだ。
恐ろしい。
きっとまた無理難題を押しつけられるに違いない。
校門から教室まで送り届けられたのなんて初めてだし、それに、学校であんなにがっちりと腰を抱かれるなんて思わなかった。あれは、夜会で仲のいい婚約者だと言いふらしたい時用の彼の外面行動なのだと思っていたけれど、単純に私が逃げ出さないように捕獲していただけなのかもしれない。
考えが読めない。
そして、たぶん怒らせてしまった。
お昼休みの誘いは昼食だけではなく、昼寝の枕になれというものも含めてだったと思う。それを断れば当然彼の機嫌を損ねてしまうだろう。
けれども、私には時間がない。あの難曲を音楽祭までには仕上げなければいけない。
伴奏者の登録取消申請をして、伴奏予定だった下級生に謝罪した。最初は不満そうにした彼女も曲が変わったと耳にした途端目つきを変え、それから同情するように「頑張って下さい」と口にした。やはり難易度は理解できるらしい。
昼休み、予約を入れた練習室に入ろうとすると後ろから誰かに捕まった。
「きゃっ」
思わずヘンな声が出る。
「しーっ、俺だ。静かに」
心地よい低音が響く。聞き覚えがあるけれど、咄嗟に誰かは思い出せない。アルジャン様でないことだけは確かだ。
驚いて視線だけ後ろに向ければ褐色の肌が目に入る。
「……イルム様……一体なにを?」
「ん? 珍しくシシーがひとりだったから。つい。俺とお昼、どう?」
穏やかな笑みを浮かべる彼は控えめに言っても美形だろう。異国の雰囲気が一層神秘的に見え、女子生徒にとても人気だ。なにより、とても穏やかで気配り上手。とてもアルジャン様と同じ歳とは思えない。
「これから練習室で練習なので」
「え? お昼は? 休憩始まったばかりでしょ」
「音楽祭までに仕上げないといけませんので」
お昼はご一緒できませんと断ろうとすれば、じっと見つめられる。
「シシーなら余裕でしょ?」
「……アルジャン様から課題曲を出されてしまい……私の腕ではかなり必死になっても仕上がるか不安な曲でして……」
正直にそう答えれば、ようやく手を離してくれる。
「また彼か。君はよく彼に付き合っていられるな」
少し呆れを含んだ声。
「……アルジャン様は私の婚約者ですし……私の腕に期待して下さっているので……」
あの夢を見る前なら、もっと胸を張って挑めたかもしれない。ヴァイオリンの腕だけは認めて下さっているのだと、そこに自分の価値があるのだと信じられたから。けれども、今は不安が膨らむばかりだ。
「シシー、彼と別れたくなったら、俺がいつでも攫ってあげる。逃げたくなったら俺の祖国へ連れて帰るよ」
うっとりするほど美しい笑みを見せられる。
なんてきれいなんだろう。
アルジャン様は男性的な、彫刻のような美しさだけれど、イルム様はどこか中性的な、神秘的な美しさだ。美しさの種類が違う。
微笑まれただけで頭がぼんやりとしてしまいそうになる。
「えっと……れ、練習があるので……」
逃げるように、予約した部屋に駆け込む。
一体どうしたと言うのだろう。私はあくまでアルジャン様の婚約者だ。喩え用なしと捨てられる未来だったとしても、今は。
一瞬、揺らいでしまいそうになった自分を恥じる。
それを誤魔化すように練習を開始した。
放課後、ふたたび練習室を予約し練習していると、突然扉が開く。驚いて大きく音を外してしまった。
「……下手くそ」
不快そうに睨まれる。アルジャン様だ。
「も、申し訳ございません……音を外してしまいました……」
最早泣いてしまいそうだ。
今のはアルジャン様がいきなり扉を開けなければこんなに酷く音を外さなかったというのに。
「あ、あの……練習中ですので……」
「寝る」
アルジャン様はずかずかと部屋に入り込み、それから床にそのまま寝転んでしまう。
「アルジャン様、制服が汚れてしまいます」
「どうせメイドが洗う」
大きな欠伸をして、それから「練習を続けろ」と睨まれてしまう。
つまり、音を外して起こすなという忠告だ。
ただでさえ、不機嫌なアルジャン様が居るだけで緊張してしまうと言うのにこれは酷い。けれども練習をしなければしなかったできっと睨まれてしまう。
意を決して弓を持ち直す。
仕上がらなかったときが一番怖い。そう思えば、起こしてしまって睨まれるくらい……。
ぎゅっと唇を噛めば、アルジャン様の視線を感じる。なるべくそちらを見ないようにしようと、意識を譜面に向けた。
苦手部分の部分練習だ。この曲の難易度を上げるのは同じフレーズの繰り返しが少ないという部分だろうか。間違っても二週間で仕上げられる曲じゃない。
思わず半泣きになりながら弓を動かす。
もし、生まれ変わるなら本当に、次はアルジャン様と関わらずに済む人生がいい。
そんなことを願いながら。
帰りの馬車、アルジャン様はやっぱり不機嫌そうだった。その様子に気付かないふりをして、譜面に視線を向ける。やはりトリル部分の重音が苦手だ。ここさえ乗り越えれば全体もなんとかなるかもしれないと思えるほど、そこが難しい。
幸い、練習中にアルジャン様が目覚めることはなかった。というより、そもそも眠っていなかったのかもしれない。
そんなことを考えていると、突然頬になにかが触れる。
驚いて顔を上げれば、すぐ傍にアルジャン様の顔があった。
「……イルムの香……匂いが移るほど近づいたのか?」
とても不機嫌そうに睨まれた。
アルジャン様は、イルム様と仲が悪い。というよりも、一方的に彼を嫌っている節がある。それは彼が異国人だからなのか、絵に描いたような優等生だからなのか。とにかく彼を敵視している節がある。
「えっと、お昼休みに……後ろから捕獲されてしまって……お昼に誘われたのですが、練習があるからと断らせて頂きました」
絶対に嘘は許さないという猛禽類のような鋭い視線の前では正直に吐き出すしかない。
すぐ傍で舌打ちが聞こえる。
「あいつ……」
苛立った声に思わず背筋を伸ばしてしまう。
怖い。きっとものすごく不機嫌。ただでさえイルム様と仲が悪いのに、アルジャン様の誘いを断った時間に彼と会ったなんて……この暴君婚約者様が許してくれるはずがない。
今度はなにこそ言われるかわからない。
怖くなって思わず目を瞑った。その時だった。
唇になにかが触れた。
驚いて目を開けば強引に頭を抑えられる。
それから、口の中になにかが入ってきた。ねっとりとかき回されるような感覚。
アルジャン様の舌だと気がつくまで随分と時間が掛かり、頭が蕩けそうになってしまう。
一体なにが起きているのだろう。
呼吸が苦しい。
まるで呼吸を奪われるようなその行為が恐ろしくなって、咄嗟に彼の胸を叩けば、力強い手に取り押さえられ、更に深く噛みつかれる。
頭がふわふわする。折角覚えた譜面が飛んでしまいそうだ。
息が苦しくて涙が出そうになった頃、ようやく解放される。
「……セシリア……」
名を呼んだ彼の猛禽のような瞳が僅かに潤んで見える。
「……ア、アルジャン……さま……?」
一体どうしてこんなことをと訊ねるには、声が震えすぎていた。
「……セシリア」
再び彼の手が顎に触れる。
また、口づけられると思った瞬間、馬車の扉が開かれた。
「……おい、邪魔をするな」
とても不機嫌に視線と声だけで殺しそうな勢いで御者を睨むアルジャン様。
けれども正直、私は助かったと思ってしまった。手が離れた隙に、逃げるように馬車を降りる。
また、舌打ちが響いた。
そしてアルジャン様は当たり前の様に家の中までついてくる。
「アル? こんな時間に珍しいな」
既に帰宅していたらしい兄と鉢合わせた。
「ヴィニー、今日は早いな。丁度むしゃくしゃしていたところだ。付き合え」
どうやらアルジャン様の興味は兄の方へ逸れたらしい。
助かった。思わず兄を生贄にする道を選んでしまう。
「あの、私、練習にしますから、お夕食は部屋で頂きますね」
それはもう、大慌てで逃げるように自分の部屋に駆け込む。消音器を使えば夜でも練習できる。
折角必死で覚えた譜面が抜け落ちてしまっていないか不安のまま楽器の用意をする。
今日のアルジャン様はいつも以上になにをお考えなのかわからなくて……怖い。
なにかがおかしいのに、その正体が全くわからない。
そんな考えが音に乗ってしまったのか、練習室に居た時以上に音が乱れてしまった。
馬車の中で声を掛けられたのは数える程度しかないというのに「着くまで寝てろ」だなんて普段の彼なら絶対にしないような気遣いだ。
恐ろしい。
きっとまた無理難題を押しつけられるに違いない。
校門から教室まで送り届けられたのなんて初めてだし、それに、学校であんなにがっちりと腰を抱かれるなんて思わなかった。あれは、夜会で仲のいい婚約者だと言いふらしたい時用の彼の外面行動なのだと思っていたけれど、単純に私が逃げ出さないように捕獲していただけなのかもしれない。
考えが読めない。
そして、たぶん怒らせてしまった。
お昼休みの誘いは昼食だけではなく、昼寝の枕になれというものも含めてだったと思う。それを断れば当然彼の機嫌を損ねてしまうだろう。
けれども、私には時間がない。あの難曲を音楽祭までには仕上げなければいけない。
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昼休み、予約を入れた練習室に入ろうとすると後ろから誰かに捕まった。
「きゃっ」
思わずヘンな声が出る。
「しーっ、俺だ。静かに」
心地よい低音が響く。聞き覚えがあるけれど、咄嗟に誰かは思い出せない。アルジャン様でないことだけは確かだ。
驚いて視線だけ後ろに向ければ褐色の肌が目に入る。
「……イルム様……一体なにを?」
「ん? 珍しくシシーがひとりだったから。つい。俺とお昼、どう?」
穏やかな笑みを浮かべる彼は控えめに言っても美形だろう。異国の雰囲気が一層神秘的に見え、女子生徒にとても人気だ。なにより、とても穏やかで気配り上手。とてもアルジャン様と同じ歳とは思えない。
「これから練習室で練習なので」
「え? お昼は? 休憩始まったばかりでしょ」
「音楽祭までに仕上げないといけませんので」
お昼はご一緒できませんと断ろうとすれば、じっと見つめられる。
「シシーなら余裕でしょ?」
「……アルジャン様から課題曲を出されてしまい……私の腕ではかなり必死になっても仕上がるか不安な曲でして……」
正直にそう答えれば、ようやく手を離してくれる。
「また彼か。君はよく彼に付き合っていられるな」
少し呆れを含んだ声。
「……アルジャン様は私の婚約者ですし……私の腕に期待して下さっているので……」
あの夢を見る前なら、もっと胸を張って挑めたかもしれない。ヴァイオリンの腕だけは認めて下さっているのだと、そこに自分の価値があるのだと信じられたから。けれども、今は不安が膨らむばかりだ。
「シシー、彼と別れたくなったら、俺がいつでも攫ってあげる。逃げたくなったら俺の祖国へ連れて帰るよ」
うっとりするほど美しい笑みを見せられる。
なんてきれいなんだろう。
アルジャン様は男性的な、彫刻のような美しさだけれど、イルム様はどこか中性的な、神秘的な美しさだ。美しさの種類が違う。
微笑まれただけで頭がぼんやりとしてしまいそうになる。
「えっと……れ、練習があるので……」
逃げるように、予約した部屋に駆け込む。
一体どうしたと言うのだろう。私はあくまでアルジャン様の婚約者だ。喩え用なしと捨てられる未来だったとしても、今は。
一瞬、揺らいでしまいそうになった自分を恥じる。
それを誤魔化すように練習を開始した。
放課後、ふたたび練習室を予約し練習していると、突然扉が開く。驚いて大きく音を外してしまった。
「……下手くそ」
不快そうに睨まれる。アルジャン様だ。
「も、申し訳ございません……音を外してしまいました……」
最早泣いてしまいそうだ。
今のはアルジャン様がいきなり扉を開けなければこんなに酷く音を外さなかったというのに。
「あ、あの……練習中ですので……」
「寝る」
アルジャン様はずかずかと部屋に入り込み、それから床にそのまま寝転んでしまう。
「アルジャン様、制服が汚れてしまいます」
「どうせメイドが洗う」
大きな欠伸をして、それから「練習を続けろ」と睨まれてしまう。
つまり、音を外して起こすなという忠告だ。
ただでさえ、不機嫌なアルジャン様が居るだけで緊張してしまうと言うのにこれは酷い。けれども練習をしなければしなかったできっと睨まれてしまう。
意を決して弓を持ち直す。
仕上がらなかったときが一番怖い。そう思えば、起こしてしまって睨まれるくらい……。
ぎゅっと唇を噛めば、アルジャン様の視線を感じる。なるべくそちらを見ないようにしようと、意識を譜面に向けた。
苦手部分の部分練習だ。この曲の難易度を上げるのは同じフレーズの繰り返しが少ないという部分だろうか。間違っても二週間で仕上げられる曲じゃない。
思わず半泣きになりながら弓を動かす。
もし、生まれ変わるなら本当に、次はアルジャン様と関わらずに済む人生がいい。
そんなことを願いながら。
帰りの馬車、アルジャン様はやっぱり不機嫌そうだった。その様子に気付かないふりをして、譜面に視線を向ける。やはりトリル部分の重音が苦手だ。ここさえ乗り越えれば全体もなんとかなるかもしれないと思えるほど、そこが難しい。
幸い、練習中にアルジャン様が目覚めることはなかった。というより、そもそも眠っていなかったのかもしれない。
そんなことを考えていると、突然頬になにかが触れる。
驚いて顔を上げれば、すぐ傍にアルジャン様の顔があった。
「……イルムの香……匂いが移るほど近づいたのか?」
とても不機嫌そうに睨まれた。
アルジャン様は、イルム様と仲が悪い。というよりも、一方的に彼を嫌っている節がある。それは彼が異国人だからなのか、絵に描いたような優等生だからなのか。とにかく彼を敵視している節がある。
「えっと、お昼休みに……後ろから捕獲されてしまって……お昼に誘われたのですが、練習があるからと断らせて頂きました」
絶対に嘘は許さないという猛禽類のような鋭い視線の前では正直に吐き出すしかない。
すぐ傍で舌打ちが聞こえる。
「あいつ……」
苛立った声に思わず背筋を伸ばしてしまう。
怖い。きっとものすごく不機嫌。ただでさえイルム様と仲が悪いのに、アルジャン様の誘いを断った時間に彼と会ったなんて……この暴君婚約者様が許してくれるはずがない。
今度はなにこそ言われるかわからない。
怖くなって思わず目を瞑った。その時だった。
唇になにかが触れた。
驚いて目を開けば強引に頭を抑えられる。
それから、口の中になにかが入ってきた。ねっとりとかき回されるような感覚。
アルジャン様の舌だと気がつくまで随分と時間が掛かり、頭が蕩けそうになってしまう。
一体なにが起きているのだろう。
呼吸が苦しい。
まるで呼吸を奪われるようなその行為が恐ろしくなって、咄嗟に彼の胸を叩けば、力強い手に取り押さえられ、更に深く噛みつかれる。
頭がふわふわする。折角覚えた譜面が飛んでしまいそうだ。
息が苦しくて涙が出そうになった頃、ようやく解放される。
「……セシリア……」
名を呼んだ彼の猛禽のような瞳が僅かに潤んで見える。
「……ア、アルジャン……さま……?」
一体どうしてこんなことをと訊ねるには、声が震えすぎていた。
「……セシリア」
再び彼の手が顎に触れる。
また、口づけられると思った瞬間、馬車の扉が開かれた。
「……おい、邪魔をするな」
とても不機嫌に視線と声だけで殺しそうな勢いで御者を睨むアルジャン様。
けれども正直、私は助かったと思ってしまった。手が離れた隙に、逃げるように馬車を降りる。
また、舌打ちが響いた。
そしてアルジャン様は当たり前の様に家の中までついてくる。
「アル? こんな時間に珍しいな」
既に帰宅していたらしい兄と鉢合わせた。
「ヴィニー、今日は早いな。丁度むしゃくしゃしていたところだ。付き合え」
どうやらアルジャン様の興味は兄の方へ逸れたらしい。
助かった。思わず兄を生贄にする道を選んでしまう。
「あの、私、練習にしますから、お夕食は部屋で頂きますね」
それはもう、大慌てで逃げるように自分の部屋に駆け込む。消音器を使えば夜でも練習できる。
折角必死で覚えた譜面が抜け落ちてしまっていないか不安のまま楽器の用意をする。
今日のアルジャン様はいつも以上になにをお考えなのかわからなくて……怖い。
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