俺がお前を英雄にする~あの最弱の女冒険者が実は最強だという事に気がついているのは俺だけらしい~

ジョク・カノサ

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一日の始まり

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「まずは寝具を買いたいと思います!」

 昨日のクエスト報酬が入った袋を俺に見せながら、フリューゲルはそう宣言した。朝、朝食を済ませた後だった。

「まあ、流石に何も無さすぎるな」

 昨日まで物置だった部屋を見渡す。あるのは窓と物置の中に埋もれていた小さな椅子と机、使わなくなった小さなチェストのみ。

「まずは何とかここで寝られるようにしたいです」

「適当に毛布を買って何枚か下に敷けば……いや、ハンモックというのもアリか?……流石にそれじゃベッドは買えないぞ。どうするか考えてるのか?」

「お、お店に行ってから考えます!」

「……まあ良い。他は?」

「えっと、机と椅子は良いとして……服も必要です。い、いつまでもオーウィンさんの服を着る訳にもいきません」

「妥当だな。そういえばお前、下着はどうしてるんだ?」

「……聞かないでください」

 前に仕立てた服は冒険者用の服、つまりは仕事着だ。普段の恰好まであれを着る訳にはいかないだろう。

 今は俺が普段使っている服を貸しているが、サイズが合ってない上にそもそもが男用だ。

「服を買ったら、それを入れる為のチェストが必要になりますし……あれじゃ多分小さすぎるし……」

「服はとりあえず俺の部屋のチェストに入れておけばいいんじゃないか」

「オ、オーウィンさんの部屋で着替えるんですか!?」

「いや、着替えはここでしろ」

「あ、そ、そうですね……」

 フリューゲルの様子が若干おかしいのはいつもの事だが、今日はいつにもましてそれが酷い。張り切っているというか、空回っているというか。

 俺が起きるより先に起きて朝食を用意したのもフリューゲルだ。料理は得意らしくそれは問題なかったが。

「寝具を買おうが服を買おうがお前の勝手だとは思うが、そもそもここにいつまで居るつもりなんだ?」

「え……」

「流石にどこかしらで家族と話を付けて家に戻るなり、一人で暮らし始めるなりしなきゃいかんだろう。何を買うにしろそれを考えて何を買うか決めろよ」

「……は、はい」

 俺の言葉を聞いてフリューゲルは気落ちしたようだった。家族関係の問題は早急に解決してほしい問題ではある。

「とりあえず、昼までの間に必要な物を買ってこい。足りなかったら面倒だ、いくらか俺の金も持っていけ。午後はどうする?」

「……クエストを。今はお金が欲しいです」

「そうか。お前も、冒険者らしくなってきたんじゃないか?」

「そ、そうですか?」

 以前のフリューゲルではここまで積極的にモンスターとの戦闘を許容する事は出来なかっただろう。着実にフリューゲルは前へ進んでいる。

「俺は適当にクエストをこなしておくから、昼にギルドで合流しよう。……今のお前なら、大物を狙ってみるべきかもな」
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