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金等級冒険者
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早朝のギルド内は昼夜に比べて冒険者の数は少ない。しかしクエストの種類が多く、自分にあった難易度、討伐対象、報酬を選びやすいという利点から精力的な冒険者はこの時間帯から動き出す。
その中にフリューゲルは居た。
「次の方……あ、フリューゲル様ですね」
「……はい」
「こちら、フリューゲル様が銅等級冒険者である事を示す証になります。紛失してしまうと再発行に手数料が必要になるのでご了承を。そして――」
受付員は証を渡した後も昇給の際の注意点や今までとの相違点といった説明を続けた。フリューゲルにとっては既にオーウィンに聞かされていた話でもあった。
「――以上になります。早速クエストをお選びになりますか?」
「あ、あの、どれを受ければ早く銀等級に成れますか」
「……少々お待ち下さい」
銅等級以上に昇級する場合、念入りな審査を通過する必要がある。
それまでにこなしたクエストの数、内容、実力、人柄といった点から判断が下される。中でも成功させたクエストという点が与える影響は大きい。
「フリューゲル様が銅等級になったばかりであるという事を考えますと、難易度と評価の釣り合い的にはこれらのクエストが適していると思われます」
「ブルームの森のクエストは……」
「その条件ですとこちらの三つが該当しますが……」
「じゃ、じゃあ三つともお願いします」
「……かしこまりました。では印をお願いします。……はい、フリューゲル様のクエスト受諾を確認しました。ご武運を」
手渡された三枚の紙を手に、フリューゲルは受付を後にする。
「早く……早く省級してもっとお金を稼げるようにしなくちゃ……っ!」
速足で出入口へと向かっていたフリューゲルは突然の眩しさから顔を背けた。扉が開いた事によって朝日が射し込んできた為だった。
「あれ、もしかして君は……」
新たにギルド内へと入って来た一人の女が、フリューゲルを前に足を止めた。
「……!フェリエラじゃないか。遠出から帰ってきたとは聞いていたが……」
「朝っぱらから金等級を拝めるなんてな。それにしても中身はともかく相変わらずイイ女だ。……目の前のヤツはウワサの駆け出しか?」
二人はギルド内から注目を浴びていた。フリューゲルも原因の一つではあるが、それ以上にもう一人の存在が大きかった。
「相変わらず雑魚共の視線がうっとおしいな、ここは。……で」
肩の辺りまで伸びた美しい金の髪。戦いに必要であるしなやかさと艶美さの両立を感じさせる身体。整った顔立ちは自負の表情を浮かべている。
金等級冒険者フェリエラが、フリューゲルを見下ろしていた。
「君、オーウィンさんに気に入られてるんだって?」
「えっ、あの、あっ」
「へえ……依頼を三つ。時間制限もあるのに強気だね。オーウィンさんの指示かな?」
「か、返して下さ――っ!」
「調子に乗らない方が良いよ」
無造作に投げ渡された紙を何とか手に取ったフリューゲルの耳元に近寄り、フェリエラは呟いた。
「オーウィンさんは遊んでるんだよ。君みたいな見込みの無いクズを適当に騙してその気にさせてね」
「え……」
「身の程を弁えろ。……じゃあね、鉛のバンシー。あ、髪を切る前の方がブサイクで良かったよ、あはは」
外野から見ても分かるフェリエラの横暴を前に、止めに入る者は誰一人として居ない。それ程までに金等級冒険者の肩書は大きかった。
「……」
その場から逃げるように、フリューゲルはギルドから立ち去った。
その中にフリューゲルは居た。
「次の方……あ、フリューゲル様ですね」
「……はい」
「こちら、フリューゲル様が銅等級冒険者である事を示す証になります。紛失してしまうと再発行に手数料が必要になるのでご了承を。そして――」
受付員は証を渡した後も昇給の際の注意点や今までとの相違点といった説明を続けた。フリューゲルにとっては既にオーウィンに聞かされていた話でもあった。
「――以上になります。早速クエストをお選びになりますか?」
「あ、あの、どれを受ければ早く銀等級に成れますか」
「……少々お待ち下さい」
銅等級以上に昇級する場合、念入りな審査を通過する必要がある。
それまでにこなしたクエストの数、内容、実力、人柄といった点から判断が下される。中でも成功させたクエストという点が与える影響は大きい。
「フリューゲル様が銅等級になったばかりであるという事を考えますと、難易度と評価の釣り合い的にはこれらのクエストが適していると思われます」
「ブルームの森のクエストは……」
「その条件ですとこちらの三つが該当しますが……」
「じゃ、じゃあ三つともお願いします」
「……かしこまりました。では印をお願いします。……はい、フリューゲル様のクエスト受諾を確認しました。ご武運を」
手渡された三枚の紙を手に、フリューゲルは受付を後にする。
「早く……早く省級してもっとお金を稼げるようにしなくちゃ……っ!」
速足で出入口へと向かっていたフリューゲルは突然の眩しさから顔を背けた。扉が開いた事によって朝日が射し込んできた為だった。
「あれ、もしかして君は……」
新たにギルド内へと入って来た一人の女が、フリューゲルを前に足を止めた。
「……!フェリエラじゃないか。遠出から帰ってきたとは聞いていたが……」
「朝っぱらから金等級を拝めるなんてな。それにしても中身はともかく相変わらずイイ女だ。……目の前のヤツはウワサの駆け出しか?」
二人はギルド内から注目を浴びていた。フリューゲルも原因の一つではあるが、それ以上にもう一人の存在が大きかった。
「相変わらず雑魚共の視線がうっとおしいな、ここは。……で」
肩の辺りまで伸びた美しい金の髪。戦いに必要であるしなやかさと艶美さの両立を感じさせる身体。整った顔立ちは自負の表情を浮かべている。
金等級冒険者フェリエラが、フリューゲルを見下ろしていた。
「君、オーウィンさんに気に入られてるんだって?」
「えっ、あの、あっ」
「へえ……依頼を三つ。時間制限もあるのに強気だね。オーウィンさんの指示かな?」
「か、返して下さ――っ!」
「調子に乗らない方が良いよ」
無造作に投げ渡された紙を何とか手に取ったフリューゲルの耳元に近寄り、フェリエラは呟いた。
「オーウィンさんは遊んでるんだよ。君みたいな見込みの無いクズを適当に騙してその気にさせてね」
「え……」
「身の程を弁えろ。……じゃあね、鉛のバンシー。あ、髪を切る前の方がブサイクで良かったよ、あはは」
外野から見ても分かるフェリエラの横暴を前に、止めに入る者は誰一人として居ない。それ程までに金等級冒険者の肩書は大きかった。
「……」
その場から逃げるように、フリューゲルはギルドから立ち去った。
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