俺がお前を英雄にする~あの最弱の女冒険者が実は最強だという事に気がついているのは俺だけらしい~

ジョク・カノサ

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フリューゲルの悩み

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「無事昇級出来たな。どうだ、気分は」

「……まだ実感が」

「銅等級なんてすぐに通過点になる。お前なら実感なんて伴う前に次に行けるさ」

 フリューゲルがマナの存在を自覚してから数日が経った。その間、マナの扱い方も含めて基本的な身体の動かし方、剣の扱い方、基礎体力の向上を目指し訓練を続けた。

「お、大げさですよ」

 マナの自覚を経て多少は自信がついたようにも見えるが、この覇気の無さは健在だ。しかし外から見てフリューゲルは確実に変化している。

 以前の乾燥した唇や目元の隈といった不健康さは薄くなった。少し前屈み気味だった姿勢や周囲を警戒するような視線も改善されつつある。さっき他の冒険者に絡まれていた反応を見るに、人付き合いの不慣れさはあまり変わってないが。

「モンスターを相手にするのにも慣れてきただろ。今後は銀等級へさっさと昇格するのも兼ねて積極的に討伐クエストを受けよう。お前の現時点での実力でも、大抵の銅等級は相手にならんがな」

 未だにモンスターに対する恐怖感は残っているようだが、それも数をこなせば慣れるだろう。現に今さっき昇格クエストとして三匹のゴブリンの群れを討伐している。

 一匹目を奇襲で斬り、それに気づいた二匹目を正面から迎撃、残った三匹目に落ち着いて対処、上々な戦闘だった。最初の奇襲の前、隠れていた際に慌てたのか勢い良くすっ転んだのは流石に擁護出来ないが。

 それらを総合して、フリューゲルは順調に成長していると言えるだろう。

「……」

 しかし、それに対してフリューゲルの表情は少し暗い。ここ最近はずっとこんな調子だ。
 俺と話す時に作る不慣れな笑顔もより不自然になっている。

「何かあったか?」

「えっ?」

「誤魔化さなくて良い。訓練中に集中が欠けているタイミングがある。それに最近はやけに訓練に積極的だ。――何かを焦っている、そう見える」

「……そんな事も分かるんですね、オーウィンさんは」

「最近はお前しか見てないからな」

「うえっ!?」

 カエル型のモンスターであるトードのような声を出し、フリューゲルが歩くのを止めて俺の方を向いた。何がうえ、なのかは知らないが、やはりコイツにはこういう明るい表情が似合う。

「俺には言えないか?」

「……」

「俺はお前を何としてでも英雄にしたい。英雄と呼ばせたい。その為なら出来る事は何でもするつもりだ。もちろん、お前が望む事も、抱えている問題の解決も」

「……ぅ」

「……突っ立ってする話でもないな。場所を移そう」

 フリューゲルとは一度行っておきたかった場所。丁度良い機会だ。

「俺の思い出に、少し付き合ってくれ」
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