俺がお前を英雄にする~あの最弱の女冒険者が実は最強だという事に気がついているのは俺だけらしい~

ジョク・カノサ

文字の大きさ
上 下
6 / 20

何を思うのか

しおりを挟む
「ひいっ、ひいっ」

「腰が下がってるぞ。姿勢を意識するんだ!」

「はひぃぃ」

 腑抜けた姿勢で剣を振ったフリューゲルに対し注意をする。返ってきたのは返事と吐息が混ざったような声だった。

「マナ云々の前にフリューゲル、お前は体力が無さすぎる。身体が未熟すぎる。マナを扱えるようになればそれも解決出来るが、だからといって素の肉体の鍛錬を怠っていい理由にはならん」

「はひっ、あっ」

「良し、そこまででいい」

 手から剣がずり落ちたのを見て一旦停止させる。フリューゲルは膝から崩れ落ちるように地面に座り込んだ。

「はあ、はあ」

「後半、疲れが出る前はかなり様になっていた。その調子だ」

「はあ、あ、ありがとう、ございまひゅ」

「マナは感じるか?」

「……!……!」

 首が横に振られる。どうやらダメだったらしい。
 肉体を限界に追い込む、要するに疲れ果てた状態でマナを認識したという人物は多い。力を絞り出す意識がマナの認識に繋がるのだろう。しかしフリューゲルは何も感じていない。

「ほら、飲め」

「……!」

 冷えた飲み水を渡すと勢い良く飲み始めた。それを見ながら次のアプローチの仕方を考える。

 マナを扱えるようになる切っ掛けは人によるとしか言えない。極度の疲労、何かしらの覚悟、死を目の前にした時の恐怖。

 ただそれらに共通しているのは。

「なあ、お前は何でここに居る?」

「へ?」

「俺は自分がやってる事の無茶苦茶さを自覚してるつもりだ。俺から見てお前に才能があるのは間違いない。だがこれまで真っ当に冒険者をしてこなかったお前が、自分の才能を疑うのも分かる。現にお前はまだ自分を信じていない」

「……」

「何故なんだ?何故俺の言葉に従う?あの時、お前なら得られると言った金目的か?それとも名誉か?家族か?」

 共通しているモノ、それは精神。心の動きと言っても良い。

 何を思うのか、何を感じるのか。状況の差はあれど、マナを自覚した者はこういった感情が起点になる。

 フリューゲルが強く思う何か。何の為に俺に従うのか。それがきっとマナの自覚に繋がる。

「お前は何を思って――丁度良い、見ろ」

「……えっ、あっ!」

 フリューゲルが大げさに飛び退いた。森がある方向、草木から俺達に近づく小さな人影。
 ゴブリンだ。

「この辺りまで来るなんて珍しいな。誰かの取りこぼしか?」

「こ、ここ、こっち来てます!睨んでます!」

「慌てすぎだ」

 恐らくモンスターとしては最弱の部類に入るのがコイツだ。身体は小さく力も頭も弱い。群れれば多少は厄介になるがそれでもたかが知れてる。

「銅級の昇格クエストは大体コイツが相手だ。要するに基本中の基本」

 フリューゲルがマナを無意識に扱ったのはモンスターとの戦闘が原因だ。相手は雲泥の差があるがあの状況を再現するにはコイツは持ってこいの相手だった。

「コイツを倒してみろ、フリューゲル」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

食うために軍人になりました。

KBT
ファンタジー
 ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。  しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。  このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。  そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。  父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。    それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。  両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。  軍と言っても、のどかな田舎の軍。  リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。  おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。  その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。  生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。    剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。

孤児院で育った俺、ある日目覚めたスキル、万物を見通す目と共に最強へと成りあがる

シア07
ファンタジー
主人公、ファクトは親の顔も知らない孤児だった。 そんな彼は孤児院で育って10年が経った頃、突如として能力が目覚める。 なんでも見通せるという万物を見通す目だった。 目で見れば材料や相手の能力がわかるというものだった。 これは、この――能力は一体……なんなんだぁぁぁぁぁぁぁ!? その能力に振り回されながらも孤児院が魔獣の到来によってなくなり、同じ孤児院育ちで幼馴染であるミクと共に旅に出ることにした。 魔法、スキルなんでもあるこの世界で今、孤児院で育った彼が個性豊かな仲間と共に最強へと成りあがる物語が今、幕を開ける。 ※他サイトでも連載しています。  大体21:30分ごろに更新してます。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...