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まずは形から
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「とりあえずは身なりを整える事からだ。そもそもお前は何でそんな格好をしてるんだ?特に髪。邪魔だろう」
フリューゲルが俺の誘いを受けた後日、俺達は顔を合わせていた。詳しく言うとギルドの外でうろうろしてたから引っ張ってきた。
早々に会えたのは丁度いい。今日から本格的にコイツを鍛えるつもりだった。
フリューゲルは広場に設置された椅子に俯きながら座っている。
それにしても相変わらず心配になるような容姿だ。服は金が無いからというのは分かるが髪を整えようしない理由が分からなかった。
「えっと、そのぉ……いっ!?」
「……なんだ、隠してるからどんなツラしてんのかと思ったら、別に普通じゃないか」
前髪を除けた先にどんな顔があるのかと思えば、別に普通の顔だった。
少し青みがかった瞳が特徴的か。
「隈があるな……睡眠はしっかり取れ。唇も少し乾燥してる。メシもしっかり食え。髪のついでに眉やらも整えさせよう。で、なんでだ?」
「ほ、他の冒険者さんが怖くてっ、あっ、はっ、後はっ、少しでも悪く見せないと、娼館行けって言われるかもしれないって」
俺から目を逸らし、しどろもどろになりながらフリューゲルは理由を語った。
前半の理由はよく分からんが、後半は娼館行きを防ぐ為の抵抗という事だろうか。まあ、コイツがやってたようなクエストだと娼館の方が恐らく稼げるだろうな。
「大体分かった。じゃあもう必要無いな」
「へ?」
「お前はそこらの冒険者なんて比べ物にならんくらい強くなれる。なら怖がる必要は無いだろう?娼館行きなんて話も稼げば蹴っ飛ばせる。さ、行くぞ」
「ちょ、ちょっ!」
「英雄には容姿も求められる。せっかくだ、有名な理髪師に頼むぞ。後は服と……剣もだな。帯剣してない冒険者なんて話にならん」
「あっ、あっ」
☆
「旦那、こんな感じでどうでしょう?」
「良いな。化粧は要るか?」
「するとしても薄く紅を引くくらいでしょうな。素材のままで十分です。このまま仕上げますよ?」
「頼む」
「え?えっ?」
☆
「こんな感じでどう?機能性を確保しつつ華やかさも忘れないようにしてみたんだけど」
「あくまでコレは戦闘用だ。華やかさは最低限に、もっと汚れる事を視野に入れてくれ」
「分かったわ。ちょっとぉ!奥に仕舞ってたヤツも持ってきて!」
「う、え?」
☆
「ここで一番質が良いってなるとコレになるな。マナの許容量も他とは段違いだ。試し斬りするかい?」
「ああ。サイズも良い感じだな。握ってみろ」
「こっ、これっ、値段っ、値段!」
☆
「こんなもんだろう。盾や鎧、その他の細々とした道具はお前の戦闘スタイルが確立してからだな」
「……」
髪良し。服良し。帯剣良し。今のフリューゲルの恰好は小奇麗な新人冒険者といったところか。元々おつかいレベルの簡単なクエストばかり受けていたからかコイツには冒険者特有の血生臭さが無いのもそれに影響している。元々珍しい黒髪であるからか目を向ける通行人も多い。
ここからがコイツにとっての本当のスタートと言ってもいいだろう。
「あ、あの、お金……」
「?」
「お金、返せません」
「元からお前に返してもらう気は無い。……待て待て、警戒するな。俺は金に関しては余裕がある。それにこれは俺が勝手にやった事だ」
「なんで……なんでこんな」
「今に分かる」
コイツが将来稼ぐ金と得る名誉を考えればこれくらいは端金だ。だが別に俺はコイツが稼ぐ金に興味がある訳でもなかった。
俺が諦めた夢――白金等級にまで上り詰め、この国で将来語り継がれる程の英雄になる事。コイツならそれが出来る。
「さ、お前の才能を磨き始めよう。……で、なんで手で顔を隠してるんだ?」
「……は、恥ずかしくて」
フリューゲルが俺の誘いを受けた後日、俺達は顔を合わせていた。詳しく言うとギルドの外でうろうろしてたから引っ張ってきた。
早々に会えたのは丁度いい。今日から本格的にコイツを鍛えるつもりだった。
フリューゲルは広場に設置された椅子に俯きながら座っている。
それにしても相変わらず心配になるような容姿だ。服は金が無いからというのは分かるが髪を整えようしない理由が分からなかった。
「えっと、そのぉ……いっ!?」
「……なんだ、隠してるからどんなツラしてんのかと思ったら、別に普通じゃないか」
前髪を除けた先にどんな顔があるのかと思えば、別に普通の顔だった。
少し青みがかった瞳が特徴的か。
「隈があるな……睡眠はしっかり取れ。唇も少し乾燥してる。メシもしっかり食え。髪のついでに眉やらも整えさせよう。で、なんでだ?」
「ほ、他の冒険者さんが怖くてっ、あっ、はっ、後はっ、少しでも悪く見せないと、娼館行けって言われるかもしれないって」
俺から目を逸らし、しどろもどろになりながらフリューゲルは理由を語った。
前半の理由はよく分からんが、後半は娼館行きを防ぐ為の抵抗という事だろうか。まあ、コイツがやってたようなクエストだと娼館の方が恐らく稼げるだろうな。
「大体分かった。じゃあもう必要無いな」
「へ?」
「お前はそこらの冒険者なんて比べ物にならんくらい強くなれる。なら怖がる必要は無いだろう?娼館行きなんて話も稼げば蹴っ飛ばせる。さ、行くぞ」
「ちょ、ちょっ!」
「英雄には容姿も求められる。せっかくだ、有名な理髪師に頼むぞ。後は服と……剣もだな。帯剣してない冒険者なんて話にならん」
「あっ、あっ」
☆
「旦那、こんな感じでどうでしょう?」
「良いな。化粧は要るか?」
「するとしても薄く紅を引くくらいでしょうな。素材のままで十分です。このまま仕上げますよ?」
「頼む」
「え?えっ?」
☆
「こんな感じでどう?機能性を確保しつつ華やかさも忘れないようにしてみたんだけど」
「あくまでコレは戦闘用だ。華やかさは最低限に、もっと汚れる事を視野に入れてくれ」
「分かったわ。ちょっとぉ!奥に仕舞ってたヤツも持ってきて!」
「う、え?」
☆
「ここで一番質が良いってなるとコレになるな。マナの許容量も他とは段違いだ。試し斬りするかい?」
「ああ。サイズも良い感じだな。握ってみろ」
「こっ、これっ、値段っ、値段!」
☆
「こんなもんだろう。盾や鎧、その他の細々とした道具はお前の戦闘スタイルが確立してからだな」
「……」
髪良し。服良し。帯剣良し。今のフリューゲルの恰好は小奇麗な新人冒険者といったところか。元々おつかいレベルの簡単なクエストばかり受けていたからかコイツには冒険者特有の血生臭さが無いのもそれに影響している。元々珍しい黒髪であるからか目を向ける通行人も多い。
ここからがコイツにとっての本当のスタートと言ってもいいだろう。
「あ、あの、お金……」
「?」
「お金、返せません」
「元からお前に返してもらう気は無い。……待て待て、警戒するな。俺は金に関しては余裕がある。それにこれは俺が勝手にやった事だ」
「なんで……なんでこんな」
「今に分かる」
コイツが将来稼ぐ金と得る名誉を考えればこれくらいは端金だ。だが別に俺はコイツが稼ぐ金に興味がある訳でもなかった。
俺が諦めた夢――白金等級にまで上り詰め、この国で将来語り継がれる程の英雄になる事。コイツならそれが出来る。
「さ、お前の才能を磨き始めよう。……で、なんで手で顔を隠してるんだ?」
「……は、恥ずかしくて」
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