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かみなりの試練 1
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かち、かち、かち……と時計の針が時を刻む。さらさらと流れる砂時計の音が静かに響き、俺の意識が戦闘用に切り替わっていく。
「……アークさん、準備はいいですか?」
「ああ。はじめてくれ」
色素の抜けた薄紫色の髪をした12歳の少女、ソフィの問いに、俺は頷いた。
それを契機に、たいして大きくもない小屋の天井に暗雲が立ち込めていく。
暗雲の内部には青と金色の雷がひしめき合い、ゴロゴロと音を立てながら、落ちるのを今か今かと待っているのが嫌でも分かった。
なんの工夫もない小屋の中に、突如として雷雲が発生する。
この有りうべからざる現象を起こしたのは雷の魔法、そして人工の魔道士であるソフィである。
「いきますよ……?」
声などかけなくても良いと言ったのに、優しい彼女は処刑先の俺にすら情けをかけてくれるらしい。
答える必要はないと、黙ったままの俺の元に、光が届く。
雪がちらつき出した空の下で、彼女が戸惑いがちに腕を振り下ろしたからだ。
暗雲から部屋の中央に、つまり俺へ向かって雷が放たれる。
雷の速さは自然のままの雷速。
音速の何十万倍ものそれは、只人の身で避けられるようなものではなく、さながら断頭台の刃のような無慈悲さで俺を貫く。
「……!」
ーーはずだった。
「……アークさん、準備はいいですか?」
「ああ。はじめてくれ」
色素の抜けた薄紫色の髪をした12歳の少女、ソフィの問いに、俺は頷いた。
それを契機に、たいして大きくもない小屋の天井に暗雲が立ち込めていく。
暗雲の内部には青と金色の雷がひしめき合い、ゴロゴロと音を立てながら、落ちるのを今か今かと待っているのが嫌でも分かった。
なんの工夫もない小屋の中に、突如として雷雲が発生する。
この有りうべからざる現象を起こしたのは雷の魔法、そして人工の魔道士であるソフィである。
「いきますよ……?」
声などかけなくても良いと言ったのに、優しい彼女は処刑先の俺にすら情けをかけてくれるらしい。
答える必要はないと、黙ったままの俺の元に、光が届く。
雪がちらつき出した空の下で、彼女が戸惑いがちに腕を振り下ろしたからだ。
暗雲から部屋の中央に、つまり俺へ向かって雷が放たれる。
雷の速さは自然のままの雷速。
音速の何十万倍ものそれは、只人の身で避けられるようなものではなく、さながら断頭台の刃のような無慈悲さで俺を貫く。
「……!」
ーーはずだった。
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