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プロローグ 日常 あるいはかけがいのない日々の終わり
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「どっこいしょっ、と」
その日、俺は庭で洗濯物を運んでいた。雪の積もった庭の上に洗濯物の影が踊る。
「うーん、日差しが気持ちいい。もうすぐ春だね」
「いや、あと三ヶ月も先だぞ」
おかっぱ頭の妹がうーん、と伸びをする。
うちは男ばかりの大家族だし寒くて厚着をするもんだから、水を吸った洗濯物で籠が重い重い。
まだ12才の妹たちにはとても任せられない重さだ。彼女たちはいつも元気だが、あんまり体が強いわけでもないしな。
「お兄ちゃん。そろそろ時間じゃない?」
「ああ。運ぶだけ運んでおくから、干すのを手伝ってもらっていいか?」
「いいよー」
指定の時間に遅れるのではないかと心配して、寒い中手伝いに来てくれたようだ。
文句も言わずに、慣れた手つきでシャツやズボンを干していく。
相変わらず気立ての良い娘だ。これならきっと何処に行ってもやっていけるだろう。
俺も洗い場と干し場を往復して運ぶものを運ぶと、外套やブーツのような重いものを優先して干していく。
ベルトや紐など外せるものは外したが、行軍用のガチなヤツだからやっぱ重いな。
「最近お天気悪いから洗濯物が溜まっちゃうよねー」
「まったくだ。今日も午後から雪降りそうだしな」
「え!? こんなに晴れてるのに!?」
「ん? ああ、山のあたりに雪雲がかかってるだろう? あそこにかかると午後から雪が降るんだ」
「へぇー」
「だから雪が降ってくる前に取り込んでくれ。誰かしらは帰ってくるだろうし、手伝ってもらえ」
「うん、分かった。やっとくー」
俺が壊さないように優しく頭を撫でると、彼女は「髪が乱れるよー」とくすぐったそうに身をよじった。
なんてことない日常が過ぎていく。このあたりじゃ、大家族なんて珍しくもないし、なんなら一族郎党みんな一緒に住んでいる村もある。
ある程度固まって暮らした方が安全だし、薪とか水とか都合が良いしな。
「じゃ、行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
少し寂しげに手を振る妹に見送られて、俺はかつて村のあった谷へと向かった。
「その死にに行く兵隊を見る目はやめろ」
「えへへ、ごめん」
俺の日常が、ちょっと変わってるかもしれない日常が始まる。
その日、俺は庭で洗濯物を運んでいた。雪の積もった庭の上に洗濯物の影が踊る。
「うーん、日差しが気持ちいい。もうすぐ春だね」
「いや、あと三ヶ月も先だぞ」
おかっぱ頭の妹がうーん、と伸びをする。
うちは男ばかりの大家族だし寒くて厚着をするもんだから、水を吸った洗濯物で籠が重い重い。
まだ12才の妹たちにはとても任せられない重さだ。彼女たちはいつも元気だが、あんまり体が強いわけでもないしな。
「お兄ちゃん。そろそろ時間じゃない?」
「ああ。運ぶだけ運んでおくから、干すのを手伝ってもらっていいか?」
「いいよー」
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文句も言わずに、慣れた手つきでシャツやズボンを干していく。
相変わらず気立ての良い娘だ。これならきっと何処に行ってもやっていけるだろう。
俺も洗い場と干し場を往復して運ぶものを運ぶと、外套やブーツのような重いものを優先して干していく。
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「最近お天気悪いから洗濯物が溜まっちゃうよねー」
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「え!? こんなに晴れてるのに!?」
「ん? ああ、山のあたりに雪雲がかかってるだろう? あそこにかかると午後から雪が降るんだ」
「へぇー」
「だから雪が降ってくる前に取り込んでくれ。誰かしらは帰ってくるだろうし、手伝ってもらえ」
「うん、分かった。やっとくー」
俺が壊さないように優しく頭を撫でると、彼女は「髪が乱れるよー」とくすぐったそうに身をよじった。
なんてことない日常が過ぎていく。このあたりじゃ、大家族なんて珍しくもないし、なんなら一族郎党みんな一緒に住んでいる村もある。
ある程度固まって暮らした方が安全だし、薪とか水とか都合が良いしな。
「じゃ、行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
少し寂しげに手を振る妹に見送られて、俺はかつて村のあった谷へと向かった。
「その死にに行く兵隊を見る目はやめろ」
「えへへ、ごめん」
俺の日常が、ちょっと変わってるかもしれない日常が始まる。
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