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聖女アリシアの苦難 経済大臣が横領して高跳びする
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「そろそろ潮時かもしれませぬなぁ」
経済大臣は国の状況をそう俯瞰していた。国王が死亡した後の聖女アリシアは政治に関してそこまでの才覚がない。さらにはネクロマンサーであるジルの国外逃亡も痛い。彼のアンデッドは貴重な労働力でもあったのだ。
アンデッドは傷を負わないし疲労もしない。賃金も必要ないからだ。
加えて国は地震の影響でズタボロである。あまりよろしい状況ではない。復興にも時間と労力が思ったよりかかっている。
この王国で経済大臣を続ける事の意義を疑い始めていた。
「かねてより考えていたあの策を実行するとするかの」
経済大臣は不気味な笑みを浮かべた。
◆◆◆
「建築資材の輸入をしたい?」
「ええ。なんでも東にあるかの国にどんな形状にも変幻できる、便利な建築資材があるそうです」
「へー……そんなものがあるの」
「はい。つきましては、その輸入に金貨500枚程必要です」
「金貨500枚!結構な金額ね!」
アリシアは驚き声をあげる。
「はい。金額は安くはありません。しかしその建築資材を輸入できれば我が国の復興は大きく前進します。返って安くつく事は間違いなしです!」
「そう。わかったわ。構わないわ。その建築資材を輸入してちょうだい」
「仰せのままに」
その時聖女アリシアは経済大臣の笑みの裏側にあるものに気づいてはいなかった。
建築資材は届かなかった。一週間経っても二週間経っても。
「どういう事なのよ!? 建築資材が届かないじゃないの!?」
聖女アリシアは憤っていた。経済大臣は一週間程休暇を頂くと言っていた。しかし、まだ帰ってくる様子はない。
「まさか……」
聖女アリシアはある危惧を抱いた。
「建築資材の発注なんてしていないんじゃないの? 経済大臣は。それで、とんずらしたんじゃないの? その可能性は高いわ」
アリシアは使用人を呼びつけた。
「いかがされましたか? アリシア様」
「経済大臣を探しなさい」
「はっ」
使用人は経済大臣を探した。しかし、経済大臣は見つからなかったのである。
横領はこの国でも当然のように犯罪である。しかし、見つからなければ罪を罰する事はできないのは自明の理でもあった。
◆◆◆
王国よりはるか離れたところにある南国の国だった。その国には幾人もの女を侍らせている経済大臣の姿があった。
「ほっほっほっほっほ。金ならいくらでもあります。どんどんお酒を持ってきてください」
「大臣さん、お金持ちなのね」
水商売の女が経済大臣(既に元がついているが)の首筋に手を回し、胸を擦り付けてくる。この女達も何となくこの男がやばい事をして金を集めてきた事は察していた。だがそんな事は女達には関係がなかった。金は金である。綺麗も汚いもないのだ。
それに何かあっても捕まるのはこの男である。女たちは知らぬ存ぜぬを通すだけだ。
「ほっほっほっほ。良い気分ですよ。私をもっと気持ちよくさせてくれた人にはチップを弾みますよ」
元経済大臣は完全に調子に乗っていた。
「大臣さん、私にチップをくださいな」
水商売の女は腕に胸を押し付けてきた。
「ええ。私も欲しいな」
片方の腕にも胸を押し付けてきた。
「ほっほっほっほ! いい気分ですよ! 今頃聖女アリシアはどんな悲痛な顔をしているか、思い浮かべるだけで爽快です」
経済大臣は聖女アリシアの悲痛な顔を想像し、酒の肴にしていた。
経済大臣は国の状況をそう俯瞰していた。国王が死亡した後の聖女アリシアは政治に関してそこまでの才覚がない。さらにはネクロマンサーであるジルの国外逃亡も痛い。彼のアンデッドは貴重な労働力でもあったのだ。
アンデッドは傷を負わないし疲労もしない。賃金も必要ないからだ。
加えて国は地震の影響でズタボロである。あまりよろしい状況ではない。復興にも時間と労力が思ったよりかかっている。
この王国で経済大臣を続ける事の意義を疑い始めていた。
「かねてより考えていたあの策を実行するとするかの」
経済大臣は不気味な笑みを浮かべた。
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「建築資材の輸入をしたい?」
「ええ。なんでも東にあるかの国にどんな形状にも変幻できる、便利な建築資材があるそうです」
「へー……そんなものがあるの」
「はい。つきましては、その輸入に金貨500枚程必要です」
「金貨500枚!結構な金額ね!」
アリシアは驚き声をあげる。
「はい。金額は安くはありません。しかしその建築資材を輸入できれば我が国の復興は大きく前進します。返って安くつく事は間違いなしです!」
「そう。わかったわ。構わないわ。その建築資材を輸入してちょうだい」
「仰せのままに」
その時聖女アリシアは経済大臣の笑みの裏側にあるものに気づいてはいなかった。
建築資材は届かなかった。一週間経っても二週間経っても。
「どういう事なのよ!? 建築資材が届かないじゃないの!?」
聖女アリシアは憤っていた。経済大臣は一週間程休暇を頂くと言っていた。しかし、まだ帰ってくる様子はない。
「まさか……」
聖女アリシアはある危惧を抱いた。
「建築資材の発注なんてしていないんじゃないの? 経済大臣は。それで、とんずらしたんじゃないの? その可能性は高いわ」
アリシアは使用人を呼びつけた。
「いかがされましたか? アリシア様」
「経済大臣を探しなさい」
「はっ」
使用人は経済大臣を探した。しかし、経済大臣は見つからなかったのである。
横領はこの国でも当然のように犯罪である。しかし、見つからなければ罪を罰する事はできないのは自明の理でもあった。
◆◆◆
王国よりはるか離れたところにある南国の国だった。その国には幾人もの女を侍らせている経済大臣の姿があった。
「ほっほっほっほっほ。金ならいくらでもあります。どんどんお酒を持ってきてください」
「大臣さん、お金持ちなのね」
水商売の女が経済大臣(既に元がついているが)の首筋に手を回し、胸を擦り付けてくる。この女達も何となくこの男がやばい事をして金を集めてきた事は察していた。だがそんな事は女達には関係がなかった。金は金である。綺麗も汚いもないのだ。
それに何かあっても捕まるのはこの男である。女たちは知らぬ存ぜぬを通すだけだ。
「ほっほっほっほ。良い気分ですよ。私をもっと気持ちよくさせてくれた人にはチップを弾みますよ」
元経済大臣は完全に調子に乗っていた。
「大臣さん、私にチップをくださいな」
水商売の女は腕に胸を押し付けてきた。
「ええ。私も欲しいな」
片方の腕にも胸を押し付けてきた。
「ほっほっほっほ! いい気分ですよ! 今頃聖女アリシアはどんな悲痛な顔をしているか、思い浮かべるだけで爽快です」
経済大臣は聖女アリシアの悲痛な顔を想像し、酒の肴にしていた。
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