15 / 20
聖女アリシアの苦難 経済大臣が横領して高跳びする
しおりを挟む
「そろそろ潮時かもしれませぬなぁ」
経済大臣は国の状況をそう俯瞰していた。国王が死亡した後の聖女アリシアは政治に関してそこまでの才覚がない。さらにはネクロマンサーであるジルの国外逃亡も痛い。彼のアンデッドは貴重な労働力でもあったのだ。
アンデッドは傷を負わないし疲労もしない。賃金も必要ないからだ。
加えて国は地震の影響でズタボロである。あまりよろしい状況ではない。復興にも時間と労力が思ったよりかかっている。
この王国で経済大臣を続ける事の意義を疑い始めていた。
「かねてより考えていたあの策を実行するとするかの」
経済大臣は不気味な笑みを浮かべた。
◆◆◆
「建築資材の輸入をしたい?」
「ええ。なんでも東にあるかの国にどんな形状にも変幻できる、便利な建築資材があるそうです」
「へー……そんなものがあるの」
「はい。つきましては、その輸入に金貨500枚程必要です」
「金貨500枚!結構な金額ね!」
アリシアは驚き声をあげる。
「はい。金額は安くはありません。しかしその建築資材を輸入できれば我が国の復興は大きく前進します。返って安くつく事は間違いなしです!」
「そう。わかったわ。構わないわ。その建築資材を輸入してちょうだい」
「仰せのままに」
その時聖女アリシアは経済大臣の笑みの裏側にあるものに気づいてはいなかった。
建築資材は届かなかった。一週間経っても二週間経っても。
「どういう事なのよ!? 建築資材が届かないじゃないの!?」
聖女アリシアは憤っていた。経済大臣は一週間程休暇を頂くと言っていた。しかし、まだ帰ってくる様子はない。
「まさか……」
聖女アリシアはある危惧を抱いた。
「建築資材の発注なんてしていないんじゃないの? 経済大臣は。それで、とんずらしたんじゃないの? その可能性は高いわ」
アリシアは使用人を呼びつけた。
「いかがされましたか? アリシア様」
「経済大臣を探しなさい」
「はっ」
使用人は経済大臣を探した。しかし、経済大臣は見つからなかったのである。
横領はこの国でも当然のように犯罪である。しかし、見つからなければ罪を罰する事はできないのは自明の理でもあった。
◆◆◆
王国よりはるか離れたところにある南国の国だった。その国には幾人もの女を侍らせている経済大臣の姿があった。
「ほっほっほっほっほ。金ならいくらでもあります。どんどんお酒を持ってきてください」
「大臣さん、お金持ちなのね」
水商売の女が経済大臣(既に元がついているが)の首筋に手を回し、胸を擦り付けてくる。この女達も何となくこの男がやばい事をして金を集めてきた事は察していた。だがそんな事は女達には関係がなかった。金は金である。綺麗も汚いもないのだ。
それに何かあっても捕まるのはこの男である。女たちは知らぬ存ぜぬを通すだけだ。
「ほっほっほっほ。良い気分ですよ。私をもっと気持ちよくさせてくれた人にはチップを弾みますよ」
元経済大臣は完全に調子に乗っていた。
「大臣さん、私にチップをくださいな」
水商売の女は腕に胸を押し付けてきた。
「ええ。私も欲しいな」
片方の腕にも胸を押し付けてきた。
「ほっほっほっほ! いい気分ですよ! 今頃聖女アリシアはどんな悲痛な顔をしているか、思い浮かべるだけで爽快です」
経済大臣は聖女アリシアの悲痛な顔を想像し、酒の肴にしていた。
経済大臣は国の状況をそう俯瞰していた。国王が死亡した後の聖女アリシアは政治に関してそこまでの才覚がない。さらにはネクロマンサーであるジルの国外逃亡も痛い。彼のアンデッドは貴重な労働力でもあったのだ。
アンデッドは傷を負わないし疲労もしない。賃金も必要ないからだ。
加えて国は地震の影響でズタボロである。あまりよろしい状況ではない。復興にも時間と労力が思ったよりかかっている。
この王国で経済大臣を続ける事の意義を疑い始めていた。
「かねてより考えていたあの策を実行するとするかの」
経済大臣は不気味な笑みを浮かべた。
◆◆◆
「建築資材の輸入をしたい?」
「ええ。なんでも東にあるかの国にどんな形状にも変幻できる、便利な建築資材があるそうです」
「へー……そんなものがあるの」
「はい。つきましては、その輸入に金貨500枚程必要です」
「金貨500枚!結構な金額ね!」
アリシアは驚き声をあげる。
「はい。金額は安くはありません。しかしその建築資材を輸入できれば我が国の復興は大きく前進します。返って安くつく事は間違いなしです!」
「そう。わかったわ。構わないわ。その建築資材を輸入してちょうだい」
「仰せのままに」
その時聖女アリシアは経済大臣の笑みの裏側にあるものに気づいてはいなかった。
建築資材は届かなかった。一週間経っても二週間経っても。
「どういう事なのよ!? 建築資材が届かないじゃないの!?」
聖女アリシアは憤っていた。経済大臣は一週間程休暇を頂くと言っていた。しかし、まだ帰ってくる様子はない。
「まさか……」
聖女アリシアはある危惧を抱いた。
「建築資材の発注なんてしていないんじゃないの? 経済大臣は。それで、とんずらしたんじゃないの? その可能性は高いわ」
アリシアは使用人を呼びつけた。
「いかがされましたか? アリシア様」
「経済大臣を探しなさい」
「はっ」
使用人は経済大臣を探した。しかし、経済大臣は見つからなかったのである。
横領はこの国でも当然のように犯罪である。しかし、見つからなければ罪を罰する事はできないのは自明の理でもあった。
◆◆◆
王国よりはるか離れたところにある南国の国だった。その国には幾人もの女を侍らせている経済大臣の姿があった。
「ほっほっほっほっほ。金ならいくらでもあります。どんどんお酒を持ってきてください」
「大臣さん、お金持ちなのね」
水商売の女が経済大臣(既に元がついているが)の首筋に手を回し、胸を擦り付けてくる。この女達も何となくこの男がやばい事をして金を集めてきた事は察していた。だがそんな事は女達には関係がなかった。金は金である。綺麗も汚いもないのだ。
それに何かあっても捕まるのはこの男である。女たちは知らぬ存ぜぬを通すだけだ。
「ほっほっほっほ。良い気分ですよ。私をもっと気持ちよくさせてくれた人にはチップを弾みますよ」
元経済大臣は完全に調子に乗っていた。
「大臣さん、私にチップをくださいな」
水商売の女は腕に胸を押し付けてきた。
「ええ。私も欲しいな」
片方の腕にも胸を押し付けてきた。
「ほっほっほっほ! いい気分ですよ! 今頃聖女アリシアはどんな悲痛な顔をしているか、思い浮かべるだけで爽快です」
経済大臣は聖女アリシアの悲痛な顔を想像し、酒の肴にしていた。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
王子が元聖女と離縁したら城が傾いた。
七辻ゆゆ
ファンタジー
王子は庶民の聖女と結婚してやったが、関係はいつまで経っても清いまま。何度寝室に入り込もうとしても、強力な結界に阻まれた。
妻の務めを果たさない彼女にもはや我慢も限界。王子は愛する人を妻に差し替えるべく、元聖女の妻に離縁を言い渡した。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる