8 / 20
ダンピールの少女が仲間になる
しおりを挟む
聞こえてきたのは銃弾の音だ。幾多もの銃弾の中、一人の少女が舞う。
彼女は流れるような動きで銃弾を放っていた。
多くのアンデッド達が呻く。恐らくは銀性の弾丸だろう。銀は神聖な素材であり、アンデッドに対して有効なダメージを与える事ができた。アンデッドの王であるヴァンパイアにも有効である。
「へっ。来やがったぜ。あれが国王暗殺の嫌疑をかけられているジルって男だ」
恐らくはヴァンパイアハンターだろう。男達は話始める。
「横にいるのはヴァンパイアか」
「俺に何の用だ?」
「聖女アリシアからの命令だ。お前には何の恨みもねぇ。けどよ、俺達も金を貰ってるからよ。お前を殺して死体を持って行けばさらに金が貰える。だからよ。てめぇをぶっ殺すんだよ。きっけっけっけ!」
「隣にいるヴァンパイアもついでに連れてこうぜ。生け捕りだ。あれは高く売れる」
「ジル様……」
エリザは俺の後ろに隠れる。
「心配するなエリザ。お前は俺が守る」
それより、あの超人的な動きをしている女の子だ。
「……何? 見つかったの? 標的」
「ああ。アルカ、あいつだ。あの吸血鬼の隣にいる」
「アルカ?」
「え?」
二人は目を合わせその場で固まる。
「なんだ? アルカ、知り合いか?」
「知り合いっていうか。姉」
「え?」
「腹違いの姉。私と違って姉は純粋な吸血鬼」
「……アルカ! どうしてあなたが、あなたがヴァンパイアハンターなんてやっているの?」
「決まってる! 金の為! 生きていく為! その為に私はヴァンパイアハンターになった」
「アルカ……何を。あなたに何が」
「吸血鬼と人間との混血(ダンピール)に生まれたがどうなったかなんて想像がつくでしょう? まともな社会からは人間の母と同じく追放されて、まともな生活を送っていく事は困難だった。行き着く先は限られていた。身体を売るか、危険な仕事をするか。私は後者を取ったの。その危険な仕事がヴァンパイアハンターってわけ。幸いに私には吸血鬼の血が流れている。その人間離れをした能力はヴァンパイアハンターにはうってつけだったって事よ」
「そんな事がアルカの身に……」
「同情なんてしなくていい。これも私の運命なんだから」
「姉妹の再会を喜んでいる場合でもなさそうだな。やるのか?」
「当然」
「そうか。なら容赦はしない」
俺は死霊術を発動させる。アルカは飛んだ。二丁拳銃だ。その拳銃から弾丸を放つ。正確な弾丸は俺に襲いかかってくる。
デッド・ナイトを召喚した俺はそれを壁にして、弾丸をやり過ごす。
アルカは聖属性の剣を引き抜いた。アルカの狙いは最初から接近戦にあったのだ。
「はあああああああああああああああああああああ!」
アルカは斬り掛かってくる。その速度は凄まじい。人間の数倍は速い。
ネクロマンサーは肉弾戦に弱い。何せアンデッドを召喚して盾にするのがネクロマンサーの闘い方だ。それは通常の魔術師とかと同じ。距離を取りたがるのは、つまりは接近戦では雑魚だと言っているに他ならない。
「けどよ」
「え?」
「本体が使役するアンデッドより弱いなんて、恰好がつかねぇだろうが!」
「なっ!?」
俺はアルカの腹部を蹴り飛ばす。
「がはっ! ぐはっ!」
アルカは吐血した。人間のように赤い血を吐き出した。
「終わりだ」
「くっ……」
アルカは目を閉じた。死を覚悟したのだろう。しかし、俺は彼女にアンデッド・ヒールをかける。やっぱりだ。ダンピールの彼女にはアンデッド・ヒールの効果がある。
「ど、どうして! どうして私を殺さないの!?」
「お前には吸血鬼の血が流れている。半分はアンデッドの血っていう事だ。アンデッドは言わば俺の子供だ。殺せるわけもない」
俺はアルカを抱きしめる。
「今まで辛かったんだろう。ダンピールに生まれて。だけど俺が作ってやる。お前が生きやすい楽園を。必ず」
「……本当? 信じてもいいの?」
「ああ。俺を信じろ」
「じゃあ、一回だけ信じてあげる。私が誰からも迫害されない、そんな私にとっての楽園を必ず作って」
アルカは笑みを浮かべた。俺は立ち上がる。
「どうするんだ!? アルカがやられちまったぞ!」
「お前達を殺すつもりはない。だが、これ以上俺の国、この不死国を汚すというのならば容赦はしない」
「くっ! 撤退だ! 半分の金は仕方ねぇ! 命あっての物種だからな」
ヴァンパイアハンター達は撤退していった。
「アルカ、ジル様はとっても素晴らしいお方なのよ。きっと私達アンデッドをより良く導いてくれる。そう、きっとダンピールのあなたにとっても住みよい素晴らしい国を創ってくれるわ」
エリザはアルカに告げる。
「お姉ちゃん、ジル様……不束者ですがよろしくお願いします」
こうして元ヴァンパイアハンター。エリザにとっては腹違いの妹。ダンピール(混血児)のアルカが俺達の仲間になった。
彼女は流れるような動きで銃弾を放っていた。
多くのアンデッド達が呻く。恐らくは銀性の弾丸だろう。銀は神聖な素材であり、アンデッドに対して有効なダメージを与える事ができた。アンデッドの王であるヴァンパイアにも有効である。
「へっ。来やがったぜ。あれが国王暗殺の嫌疑をかけられているジルって男だ」
恐らくはヴァンパイアハンターだろう。男達は話始める。
「横にいるのはヴァンパイアか」
「俺に何の用だ?」
「聖女アリシアからの命令だ。お前には何の恨みもねぇ。けどよ、俺達も金を貰ってるからよ。お前を殺して死体を持って行けばさらに金が貰える。だからよ。てめぇをぶっ殺すんだよ。きっけっけっけ!」
「隣にいるヴァンパイアもついでに連れてこうぜ。生け捕りだ。あれは高く売れる」
「ジル様……」
エリザは俺の後ろに隠れる。
「心配するなエリザ。お前は俺が守る」
それより、あの超人的な動きをしている女の子だ。
「……何? 見つかったの? 標的」
「ああ。アルカ、あいつだ。あの吸血鬼の隣にいる」
「アルカ?」
「え?」
二人は目を合わせその場で固まる。
「なんだ? アルカ、知り合いか?」
「知り合いっていうか。姉」
「え?」
「腹違いの姉。私と違って姉は純粋な吸血鬼」
「……アルカ! どうしてあなたが、あなたがヴァンパイアハンターなんてやっているの?」
「決まってる! 金の為! 生きていく為! その為に私はヴァンパイアハンターになった」
「アルカ……何を。あなたに何が」
「吸血鬼と人間との混血(ダンピール)に生まれたがどうなったかなんて想像がつくでしょう? まともな社会からは人間の母と同じく追放されて、まともな生活を送っていく事は困難だった。行き着く先は限られていた。身体を売るか、危険な仕事をするか。私は後者を取ったの。その危険な仕事がヴァンパイアハンターってわけ。幸いに私には吸血鬼の血が流れている。その人間離れをした能力はヴァンパイアハンターにはうってつけだったって事よ」
「そんな事がアルカの身に……」
「同情なんてしなくていい。これも私の運命なんだから」
「姉妹の再会を喜んでいる場合でもなさそうだな。やるのか?」
「当然」
「そうか。なら容赦はしない」
俺は死霊術を発動させる。アルカは飛んだ。二丁拳銃だ。その拳銃から弾丸を放つ。正確な弾丸は俺に襲いかかってくる。
デッド・ナイトを召喚した俺はそれを壁にして、弾丸をやり過ごす。
アルカは聖属性の剣を引き抜いた。アルカの狙いは最初から接近戦にあったのだ。
「はあああああああああああああああああああああ!」
アルカは斬り掛かってくる。その速度は凄まじい。人間の数倍は速い。
ネクロマンサーは肉弾戦に弱い。何せアンデッドを召喚して盾にするのがネクロマンサーの闘い方だ。それは通常の魔術師とかと同じ。距離を取りたがるのは、つまりは接近戦では雑魚だと言っているに他ならない。
「けどよ」
「え?」
「本体が使役するアンデッドより弱いなんて、恰好がつかねぇだろうが!」
「なっ!?」
俺はアルカの腹部を蹴り飛ばす。
「がはっ! ぐはっ!」
アルカは吐血した。人間のように赤い血を吐き出した。
「終わりだ」
「くっ……」
アルカは目を閉じた。死を覚悟したのだろう。しかし、俺は彼女にアンデッド・ヒールをかける。やっぱりだ。ダンピールの彼女にはアンデッド・ヒールの効果がある。
「ど、どうして! どうして私を殺さないの!?」
「お前には吸血鬼の血が流れている。半分はアンデッドの血っていう事だ。アンデッドは言わば俺の子供だ。殺せるわけもない」
俺はアルカを抱きしめる。
「今まで辛かったんだろう。ダンピールに生まれて。だけど俺が作ってやる。お前が生きやすい楽園を。必ず」
「……本当? 信じてもいいの?」
「ああ。俺を信じろ」
「じゃあ、一回だけ信じてあげる。私が誰からも迫害されない、そんな私にとっての楽園を必ず作って」
アルカは笑みを浮かべた。俺は立ち上がる。
「どうするんだ!? アルカがやられちまったぞ!」
「お前達を殺すつもりはない。だが、これ以上俺の国、この不死国を汚すというのならば容赦はしない」
「くっ! 撤退だ! 半分の金は仕方ねぇ! 命あっての物種だからな」
ヴァンパイアハンター達は撤退していった。
「アルカ、ジル様はとっても素晴らしいお方なのよ。きっと私達アンデッドをより良く導いてくれる。そう、きっとダンピールのあなたにとっても住みよい素晴らしい国を創ってくれるわ」
エリザはアルカに告げる。
「お姉ちゃん、ジル様……不束者ですがよろしくお願いします」
こうして元ヴァンパイアハンター。エリザにとっては腹違いの妹。ダンピール(混血児)のアルカが俺達の仲間になった。
0
お気に入りに追加
143
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
王子が元聖女と離縁したら城が傾いた。
七辻ゆゆ
ファンタジー
王子は庶民の聖女と結婚してやったが、関係はいつまで経っても清いまま。何度寝室に入り込もうとしても、強力な結界に阻まれた。
妻の務めを果たさない彼女にもはや我慢も限界。王子は愛する人を妻に差し替えるべく、元聖女の妻に離縁を言い渡した。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる