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聖女、ジルを抹殺すべくエクソシストを派遣する
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「ふんふふふーん♪」
王国ハルギニアの実権を握った聖女アリシアは大層機嫌が良かった。邪魔だった国王を暗殺し、権力を掌握し、さらには濡れ衣を宮廷ネクロマンサーをしていたジルに着せたのだ。
まさしく一石二鳥とはこの事だった。アリシアは邪魔者二人を消す事ができたのである。
「これであの不気味なアンデッドがこの王国を闊歩する事もないわ」
窓から外を見下ろせばアンデッドが歩いていたのである、この王国は。しかし、宮廷ネクロマンサーのジル一人を追放しただけでこの王国からはアンデッドが一匹たりともいなくなった。
こんなに喜ばしい事はない。目障りな存在が一瞬にして消えたのだ。何でもアンデッドは労働力として役に立っているというのがあの宮廷ネクロマンサーをしていたジルの弁である。 確かにアンデッドが荷台を引いたり、建築資材を運んだりしているのは良く見る光景である。しかしそういった利便性を捨て置いたとしても聖女率いる王国にアンデッドが必要不可欠だとは思えなかった。
人員ならば人間がいるではないか。王国には腐る程の人間がいる。不眠不休の労働は無理でも交代させて一日中作業に当たらせる事はできる。無給は無理でも買い叩く事はできる。
アリシアはそう考えていた。
面倒な仕事は国王の下についていた六部門の大臣に丸投げしてある。既に経済大臣にアンデッドの代わりとなる人材を調達するように指示してあるのだ。
全てが滞りなく進んでいる。だから聖女アリシアは大変機嫌が良かったのだ。
だが、そんな聖女アリシアではあるがひとつだけ気がかりな事があった。あの宮廷ネクロマンサーをしていたジルの存在である。ジルは自分が国王を暗殺していない事を当然のように知っていた。誰も信じないだろうが、事実を知っている人間が生きているというのはまずい。口封じをしなければならなかった。
「来たわね」
アリシアは喜ぶ。数人の男達が現れた。神官のような厳かな恰好をしている。
彼等は聖王国リカスティアより派遣されたエクソシスト(悪魔払い)である。
言わば対アンデッドのエキスパートのような存在であった。聖王国は聖王を神のように崇める国家であり、多くのエクソシストが存在した。エクソシストだけではない。聖騎士という聖属性の武器を持ち、光魔法を操る魔法剣士のような存在も多く抱き抱えていた。
聖王国は言わば邪悪なアンデッドに対抗する為の一大組織なのである。
「はっ。アリシア様。我らが聖王国リカスティアより参りましたエクソシストであります。して、ご用件とは」
「国王を暗殺した宮廷ネクロマンサー。奴が国外逃亡をしているのよ。突き止めて始末してちょうだい」
「はっ……了解しました」
聖王国にはそれなりの援助金を支払う約束をしている。やはり人間は無料(ただ)では動かない。これは確かにジルの言う通りである。だが仕方の無い事でもあった。
これであの憎きネクロマンサーがこの世より消え去るのだと思えば安い買い物ではないか。 何せ王国は自分のものなのだ。金など税金をあげて賄えばいい。聖女アリシアは短絡的にそう考えていた。
エクソシスト達はジルの討伐へと向かう。
しかし、聖女アリシア率いる王国ハルギニアが破滅への道を辿っているという事をこの時は本人含め誰も予見していなかったのである。
王国ハルギニアの実権を握った聖女アリシアは大層機嫌が良かった。邪魔だった国王を暗殺し、権力を掌握し、さらには濡れ衣を宮廷ネクロマンサーをしていたジルに着せたのだ。
まさしく一石二鳥とはこの事だった。アリシアは邪魔者二人を消す事ができたのである。
「これであの不気味なアンデッドがこの王国を闊歩する事もないわ」
窓から外を見下ろせばアンデッドが歩いていたのである、この王国は。しかし、宮廷ネクロマンサーのジル一人を追放しただけでこの王国からはアンデッドが一匹たりともいなくなった。
こんなに喜ばしい事はない。目障りな存在が一瞬にして消えたのだ。何でもアンデッドは労働力として役に立っているというのがあの宮廷ネクロマンサーをしていたジルの弁である。 確かにアンデッドが荷台を引いたり、建築資材を運んだりしているのは良く見る光景である。しかしそういった利便性を捨て置いたとしても聖女率いる王国にアンデッドが必要不可欠だとは思えなかった。
人員ならば人間がいるではないか。王国には腐る程の人間がいる。不眠不休の労働は無理でも交代させて一日中作業に当たらせる事はできる。無給は無理でも買い叩く事はできる。
アリシアはそう考えていた。
面倒な仕事は国王の下についていた六部門の大臣に丸投げしてある。既に経済大臣にアンデッドの代わりとなる人材を調達するように指示してあるのだ。
全てが滞りなく進んでいる。だから聖女アリシアは大変機嫌が良かったのだ。
だが、そんな聖女アリシアではあるがひとつだけ気がかりな事があった。あの宮廷ネクロマンサーをしていたジルの存在である。ジルは自分が国王を暗殺していない事を当然のように知っていた。誰も信じないだろうが、事実を知っている人間が生きているというのはまずい。口封じをしなければならなかった。
「来たわね」
アリシアは喜ぶ。数人の男達が現れた。神官のような厳かな恰好をしている。
彼等は聖王国リカスティアより派遣されたエクソシスト(悪魔払い)である。
言わば対アンデッドのエキスパートのような存在であった。聖王国は聖王を神のように崇める国家であり、多くのエクソシストが存在した。エクソシストだけではない。聖騎士という聖属性の武器を持ち、光魔法を操る魔法剣士のような存在も多く抱き抱えていた。
聖王国は言わば邪悪なアンデッドに対抗する為の一大組織なのである。
「はっ。アリシア様。我らが聖王国リカスティアより参りましたエクソシストであります。して、ご用件とは」
「国王を暗殺した宮廷ネクロマンサー。奴が国外逃亡をしているのよ。突き止めて始末してちょうだい」
「はっ……了解しました」
聖王国にはそれなりの援助金を支払う約束をしている。やはり人間は無料(ただ)では動かない。これは確かにジルの言う通りである。だが仕方の無い事でもあった。
これであの憎きネクロマンサーがこの世より消え去るのだと思えば安い買い物ではないか。 何せ王国は自分のものなのだ。金など税金をあげて賄えばいい。聖女アリシアは短絡的にそう考えていた。
エクソシスト達はジルの討伐へと向かう。
しかし、聖女アリシア率いる王国ハルギニアが破滅への道を辿っているという事をこの時は本人含め誰も予見していなかったのである。
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