生贄令嬢、なぜか冷酷な吸血公爵閣下に溺愛される~義妹が代わって欲しいとせがんでくるがもう遅い~

つくも

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お屋敷で怠惰な生活を送ります

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「……はぁ~……生き返ります~」

 その日。私は朝からお風呂に入っていました。それはもう大きい、王宮にあるようなお風呂でした。しかも素材は大理石でできています。なんてゴージャスでしょうか。

 それにどういう原理なのかはわかりませんが、ぶくぶくと泡が出てくるお風呂もあってとても気持ちいいのです。

 体を冷水で拭く位しかなかったスペンサー家とは大きな違いです。

 私は朝っぱらから大浴場に入ってご満悦なのでした。

 ◇

 そしてその後、食事を取ります。豪勢な食事。暇なので基本的には散歩をします。吸血公爵様こと、ヴラド様のお屋敷の庭はとても広いのです。一周して帰ってくるだけでも数時間はかかってしまう程でした。

それから午後は読書をします。それから夕飯。

「どうぞ、カレン様。召し上がってください」

 そう執事のヴァンさんは私に食事を用意してくださいました。

「うわーーーーー! すごい豪華な食事です!」

 目の前にはおいしそうなステーキだとか、色鮮やかな野菜だとか、見た事もないほど豪華な晩御飯が並んでいるのです。

 朝御飯も昼ご飯も豪華ではありましたが、晩御飯はなおさら豪華なのです。流石は公爵家のお屋敷で出る晩御飯(ディナー)という感じではありました。

 やはりここでも吸血公爵様は口を決してつけられないのですが。少々悪い気がします。

「なんだ? どうして食べぬ?」

「ヴラド様が口をつけられないのに食べるのが申し訳なく感じます」

「たわけが……どうせ俺は人間の食事を口にしない。気にせず食べろ。残しても食材がもったいないだけだ」

「は、はい! じゃあ、頂きます!」

 私は食事に口をつけました。

「おいしいです!」

 一口、口をつけるだけで幸せの絶頂のような気分になれました。それ程おいしい食事だったのです。

「私、こんなにおいしい御飯食べた事がありません!」

「まったく……大袈裟なやつだな」

 ヴラド様はそう言ってほほ笑むのでした。

「大袈裟なんかじゃありません。本当にそうなんです」

 こうして、私は豪勢な食事を取るのです。ヴラド様はそれを見ているだけでした。やはりヴラド様は食事を取られないというので少し寂しい気分になります。

 晩御飯の時間はこうして過ぎていきます。豪勢な晩御飯ではありますが、食べているのが私だけなので少し寂しくもあるのです。ヴラド様はいつもハーブティーを飲むだけで、人間の食事は一切取られませんでした。やはり吸血鬼だからなのでしょう。

 ◇

 晩御飯を食べた私はまた入浴をし、そして豪勢なベッドに倒れこみます。なんと自堕落ではありますが、幸福な生活でありましょうか。

 私は幸福感に包まれますが、同時に空しくもあります。これでいいのか、と。

 気力が回復してくるとやれる事が増えてきます。手を持て余すようになるのです。

 自堕落で幸福な生活。夢のような快適な生活ではありますが、その生活にも段々慣れてくるとこのままでいいのか、という気分になるのです。

 平穏な日々というのはついつい、退屈してしまうものでした。

 このままではいけないとも思いつつ、このままでいたいとも思う。

 私はなんとも人間らしい、矛盾した複雑な感情を抱くのです。そしてそんな私の怠惰な日常を一変するような、ある大きな出来事が起こるのでした。あくまで私にとっては大きな出来事なのです。普通の人からすればそうは思われないかもしれません。
 
 ――その出来事とは。

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