ヒーラーの方が安上がりだと追放されたが私じゃないと患者さん死にますよ?~治せないから戻ってこい?『ドクター』スキルでもあなたたちは手遅れです

つくも

文字の大きさ
上 下
25 / 51

竜人国で竜死病を治療する

しおりを挟む
「どうやって竜人国まで行くのですか?」

 竜人国はニューヨークから近いとはいえ、それでも徒歩でいけるような距離にはない。

「簡単です。私がお運びいたします」

 ヴァイスは変化(トランス)した。光を放ち、一瞬にして巨大な白竜となる。

「行きましょうか。乗ってください」

「はい!」

「よろしくお願いします」

 私達はヴァイスさんの背中に乗り、竜人国へと向かったのである。

 ◇

 一瞬のフライトであった。瞬く間に竜人国に着く。

「ここが竜人国です」

 私達が降りるとヴァイスは元の人型に戻る。

「ここが竜人国ですか……」

 竜人国もかつての獣人国と同じように活気が失われていた。道行く人々の顔が暗い。病に毒されていない竜人までやはり身内が病んでいると精神が病んでしまうのだ。

「とりあえず竜城に来てください。シオン先生に是非治してほしい人がいるのです」

 ◇

「ばたんきゅーです……フレイム」

「もう死にそうだよ……アクア」

「エアロも……」

「ティータももう無理そう……げふっ」

 竜城には数人の竜人達が寝込んでいた。皆、ベッドで寝込んでいる。

「彼女達は?」

「彼女達はそれぞれが四大属性を持った竜人達です」

 四大属性とは要するに火、水、風、地の四つの属性(エレメント)の事である。

 名前からするにフレイム=火竜 アクア=水竜、エアロ=風竜、ティータ=地竜 であろう。

「ヴァイス様……その人は?」

「ドクターと言って、皆様を治しにきてくれたお方です」

「私達を治してくれるの?」

「わーい! 本当!?」

「死にそうなんだよ。もう高熱がして頭痛くて、咳がゲホゲホで」

「もうわたし、ダメかもしれません」

「これは大変そうですね。すぐに治療をします」

「治療!? 治してくれるの!?」

「ええ」

「やった! あたし! あたし一番!」

「ダメだよフレイム! わたしだよ! わたし!」

「エアロ! エアロが一番! こんな苦しいのもう勘弁して!」

「ティータ! ティータが一番がいい!」

「落ち着いてください。順番に診察するから。けど随分と元気がいいですね」

「元気なんてない! 苦しくて必死なだけなの!」

「そうそう! 普段はこんなもんじゃないの! もっと元気なの!」

「ドクターの先生! 治してよ! もう治して!」

 やかましかった。姦しいとは女が三人と書く。四人なのだから余計に姦しい。

「ともかく私の体はひとつしかありません! 一人ずつしか治す事はできません! 順番を決めてください」

「こうなったら!」

「揉めた時はひとつだよね!」

「「「じゃんけん!」」」

「ぽん!」

「やった! 勝った!」

 火竜の竜人娘。確か名をフレイムといったか。ガッツポーズをする。

「ずるい! フレイム、後だしした!」

「ずるくないもーん! 証拠も何もないもーん!」

「い、いいから喧嘩しないでください。こちらとしても順番さえ決まればいいのですから。では一番はフレイムさんですね」

「はい!」

「そこの椅子に座ってください」

「はい!」

 私は診察を開始する。

「聴診器を当てるので服を脱いでください」

「服!? おっぱい見せなきゃなの!?」

「そう直接的に言われるとこちらとしてもやりつらいのですが」

「まあいいや。この苦しいのが治るならおっぱいくらい。減るもんじゃないし!」

「そう! 減るもんじゃない!」

「減るもんじゃないです! 早くしてください!」

「婦女子の恥じらいが微塵もありませんね。竜人は」

 彼女達が特別なのかもしれないが。

「はい! 脱いだよ!」

 フレイムは勢いよく服を脱いで全裸になった。まるで子供のような豪快な脱ぎっぷりだ。

「誰が全裸になれと言いましたか! 上だけでいいです! まくるだけでもいいんです!」

「ええ!? そうなんだ!? まあけど別に全裸でもできるでしょ!?」

「まあ、確かにそうですが」

 こうして私は竜人達の治療行為を終えた。

 ◇

「やったーーーーーーーーーーーーーーーー! 治ったーーーーーーーーーーーーー!」

「体が軽いですーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

「ひゃっほーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」

 元気になった竜人娘たちは歓喜に震えていた。

「余計にやかましくなりましたね」

 私はため息を吐く。

「ありがとうございます。シオン先生、あなた様のおかげで竜人国は救われそうです」

「いえ。まだお礼を言うのは早いです。多くの竜人がまだ病に苦しんでいるはずですから。その治療行為があります」

「ゆくゆくは私と共に、この竜人四姉妹もシオン先生にお供させて貰えればと思っております」

「ありがとうございます。あなた達竜人が獣人国の医療を手伝ってくれる事でより多くの命を救う事ができます」

「はい。是非ご協力させてください」

 ヴァイスは笑みを浮かべる。

「そういえば、ヴァイス様のお父様やお母様はいらっしゃらないのですか?」

「父は既に亡くなっています。ただ……」

「ただ……」

「竜死病が流行った日から、母バハムートはおかしくなったのです。他の者たちとは様子が変わってしまいました。今はその対応に追われているのです」

 ヴァイスは語る。

「どうやら深刻な理由がありそうですね」

「はい」

 竜人国の問題はまだ解決していなかった様子だ。

 ◇

「凶竜ウィルス?」

 ブラックリベリオンでの会話だった。研究者とアルバートの会話だ。

「ええ。竜死病ウィルスの中には凶竜病という病を発症させるウィルスが含まれておりました」

「そのウィルスに毒されるとどうなる?」

「恐ろしく気性が荒くなり、手がつけられなくなります。敵味方関係なく、見境なく暴れるように」

「ぐっふっふ!」

「なぜ笑うのですか? アルバートギルド長」

「そんな事が起きたら竜人国は大パニックではないか。竜死病に侵された上に凶竜病まで発症すれば。いくらシオンとはいえ一泡吹くに違いない!」

「はぁ……」

「ぐっふっふ! 今頃大慌てであろうなっ! シオンの奴め! いい気味だわいっ! ぐっふっふ! ぐっふっふっふっふ!」

 アルバートの笑みは絶えなかった。
しおりを挟む
完結しました。お読みいただいた方々ありがとうございました。
感想 36

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。

つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。 そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。 勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。 始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。 だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。 これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。 ※他サイトでも公開

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...