ヒーラーの方が安上がりだと追放されたが私じゃないと患者さん死にますよ？～治せないから戻ってこい？『ドクター』スキルでもあなたたちは手遅れです

竜人国に出張へ

「むーっ！　むーっ！　むーっ！　むーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ！」

　なぜでしょうか。先ほどからユエルが不機嫌そうです。

「何を不機嫌そうにむくれているのですか？　ユエルさん」

「理由は簡単です！　先生の隣にヴァイスさんがいるからです！」

「ああ……」

　妬いているのか。そういう事か。

「けど仕方がないとは思うんです！　先生はかっこいいし！　強いし！　どんな病魔も癒せるスーパードクターですし！　先生の事を好きになる女性が今後たくさん出てきても、仕方ないとは思うんです！」

「言い過ぎですよ。ユエルさん」

「言い過ぎではありません！」

「それよりそろそろ旅館に着きますよ」

「はい！」

　◇

「あらあら。肝試しに行ってきたと思ったら女の子を連れてきたの？」

　ミシェルは驚いていた。

「ミシェル様。彼女は竜人国の王女であるヴァイス様です」

「初めまして。獣人国の王妃様。わたしの名はヴァイス。竜人国の姫であります」

「どうして、竜人国のお姫様が？」

「病気で動けないところをシオン先生が治したんです！　謎の鳴き声の正体はそのヴァイスさんの鳴き声だったんです！」

「そうなのですか。そのような事が……」

「王妃様。どうか竜人国に行く許可をください。竜人国は竜死病という病に侵されているのです！　私はドクターとして命の危機を見過ごすわけにはいかないんです！　そしてこの件は獣人国にとっても不利益な事ではありません！」

「そうなのですか？」

「ええ。その見返りとして獣人国に協力をしてくれる約束をしてくださいました。竜人の助力が得られれば獣人国にも大きな利益になります。非常事態の時に患者様を私の元に一瞬にして連れてくる事も可能なのです！」

「それはとても良い事だと思います」

「ええ！　ですので今すぐに竜人国に行かせてください！」

「それはダメです」

「な、なぜですか！？　困っている人々がいるのです！　命の危険がすぐそこに！　私は休んでいる場合ではないんです！」

「ダメです。シオン先生。今回この慰安旅行に来た意味を思い出してくださいませ」

「そ、それは……」

「それは過労で倒れられたシオン先生の労いで来ているのです。休養も仕事だと以前お伝えしたはずですよ」

「それは……わかっております。でも」

「シオン先生が倒れられたら元も子もありません。一週間しっかりと休まれて、それから竜人国に行くのでしたら許可します」

「は、はい。わかりました」

「よろしいです。ヴァイス姫。この旅館は貸し切りです。急いでもどうにもならない事もあります。よろしければくつろいでいってください」

「ありがとうございます！　王妃様！」

　ヴァイスは頭を下げた。

　◇

　かぽーん。

　その翌日の事である。

　私は再度温泉に入っていた。こんな事をしていていいのか。竜人国には今も苦しんでいる人々が沢山。

　い、いや。いかんいかん。休むのも仕事の内だ！　そう習ったではないですか。

「うわー、ヴァイスさん、肌真っ白！　うらやましいです」

「ユエルさんも綺麗な肌をしています」

　天真爛漫にじゃれあっている二人の美少女の姿があった。その美しい裸体を惜しげもなく晒している。

「けどわたしはあまりおっぱいが大きくないんです。シオン先生はやっぱりおっぱいの大きい女性がお好きなのでしょうか？」

「どうなんでしょう？　シオン先生に聞いてみない事にはわかりません。先生！　どうなんですか？」

「何がですか？」

「先生もやっぱり、おっぱいの大きい女性が好みなんですか！？」

「知りませんよ！　そんなこと！」

　私は叫んだ。こうして一週間の慰安旅行が終わる。私達はヴァイスと共に竜人国へ出張に出向くのであった。