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大帝国フィンからの報せ
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大帝国フィン。帝王ビスマルク。ルードの父親である。息子とは異なり、かなり厳格で武力派な男だ。
彼はエルフ国から息子の敗戦。及び幽閉されている旨の報せを受けた。
「なんだと! ルードが! あのバカ息子め!」
「いかがされますか? 帝王。エルフ国はもう攻め入らない事の他にいくつかの条件を要求してきました」
「馬鹿が! そんな要求飲めるか!」
「ですがよろしいのでしょうか? ルード王子の身柄はエルフ国が握っているようですが」
「構わん! 息子などまた作ればよい!」
帝王ビスマルクは幾人もの女を囲っていた。権力と金に物を言わせ。正式でない子供なら数人どころか十数人いるかもしれない。それ位のものだった。自分の子供だからと言って常に貴ばれるわけではない。
「要求は飲めぬ! ルードは好きにするがよい! あやつはもうわしの子供ではない! 負け犬など息子にしたくはないわ!」
「わかりました。ではそのように伝えておきます」
「うむ」
「それともうひとつ、我々の属国であった王国ハイゼルが寝返りました」
「なんだと! あの白豚め! ほだされよったか!」
「はい。国王エドモンドと宰相も捕らえられていたとの事。解放の条件として付きつけられ、あっさりと我々に反旗を翻したそうです」
「ふん! まあよい。エルフ国ともどもねじ伏せてやるわい!」
こうしてエルフ国の要求は撥ね返されたのだ。
「だが、今はそれどころではないわ! 人類国の武力統一が先だ! 首を洗って待っていろよ! エルフ国! 人類国を制圧した次は亜人種の制圧だ! まずはエルフ国から攻め落としてやろう」
帝王は笑った。
◆◆◆
「そうか。我々の要求は帝王ビスマスクははねのけたか。予想できた事ではあるが」
エルフ国での事だった。
「お父様、どうされますか? ルード王子から聞き出せる事は粗方聞き出せたと思います。彼の境遇は?」
聞き出せた情報には価値があった。大帝国の武具を聞き出せた事でエルフ国の軍事力もあがった。そして敵のおおよその規模、戦力もわかった。彼を生かした事は決して無駄ではなかった。
「食い扶持を無駄にするわけにもいかぬだろう」
『処刑』
その二文字をエルフ王は浮かべたのだろう。
「国王陛下。殺せばそこですべては終わりです。どんなに使えないと思った存在でも、上手く使える事もあり得ます」
俺は提言した。
「しかし、どうするというのだ?」
「俺に考えがあります」
俺は真実の首輪の他にも鍛造していた武具があったのだ。
◆◆◆◆◆
「や、やめろっ! 僕に何をするつもりだ! なんだ! その首輪は!」
「大人しくしていろ!」
「やめろっ! ぐわっ!」
ルード王子。いや、ルードはその首輪をはめさせられた。その首輪の名は『服従の首輪』。絶対遵守を誓わせるスキルが込められた首輪だ。この首輪をつけさせられたら言いなりになるしかない。
こうしてルードは解放されたのである。だが、彼の意志は永遠に囚われたままだ。彼は傀儡となったのだ。もはや操り人形である。
◆◆◆
「あのフェイ様……」
ソフィアは顔を歪めていた。
「大丈夫なのでしょうか?」
「何がだ?」
「か、彼は大帝国の王子でした。だからその、何かあるかと怖いのです」
「……ソフィア。もう彼は彼であって、彼でない。試しにソフィア、ルードに何か命令してごらん」
「はぁ……。ここの書物を図書室まで運んでおいてください」
「わかりました。ソフィア様」
執事服を着たルードは大人しく命令に従った。
「もうあいつは逆らう事はないよ。あの首輪を外さない限りは。無給無賃金で働いて、その上どんな扱いをしてもいい。そんな人材いないよ。彼にとっては死ぬよりもむごい罰だ」
「はぁ……。けどなんか違和感があります」
「すぐになれるよ。彼にはこれから死ぬまでエルフ国の為に役立ってもらう」
流石に王族の血が流れているだけあってルードは美形だ。あの性格の悪ささえなくなれば、その仕事ぶりはなかなか見れたものだった。
そのうちエルフ国の人々もなれるであろう。毒でも薬になることがある。どんな有害に見えるものでもその有効性を見出せば、社会の役に立てる事もある。
今回の件で俺はその事を身に染みた。
彼はエルフ国から息子の敗戦。及び幽閉されている旨の報せを受けた。
「なんだと! ルードが! あのバカ息子め!」
「いかがされますか? 帝王。エルフ国はもう攻め入らない事の他にいくつかの条件を要求してきました」
「馬鹿が! そんな要求飲めるか!」
「ですがよろしいのでしょうか? ルード王子の身柄はエルフ国が握っているようですが」
「構わん! 息子などまた作ればよい!」
帝王ビスマルクは幾人もの女を囲っていた。権力と金に物を言わせ。正式でない子供なら数人どころか十数人いるかもしれない。それ位のものだった。自分の子供だからと言って常に貴ばれるわけではない。
「要求は飲めぬ! ルードは好きにするがよい! あやつはもうわしの子供ではない! 負け犬など息子にしたくはないわ!」
「わかりました。ではそのように伝えておきます」
「うむ」
「それともうひとつ、我々の属国であった王国ハイゼルが寝返りました」
「なんだと! あの白豚め! ほだされよったか!」
「はい。国王エドモンドと宰相も捕らえられていたとの事。解放の条件として付きつけられ、あっさりと我々に反旗を翻したそうです」
「ふん! まあよい。エルフ国ともどもねじ伏せてやるわい!」
こうしてエルフ国の要求は撥ね返されたのだ。
「だが、今はそれどころではないわ! 人類国の武力統一が先だ! 首を洗って待っていろよ! エルフ国! 人類国を制圧した次は亜人種の制圧だ! まずはエルフ国から攻め落としてやろう」
帝王は笑った。
◆◆◆
「そうか。我々の要求は帝王ビスマスクははねのけたか。予想できた事ではあるが」
エルフ国での事だった。
「お父様、どうされますか? ルード王子から聞き出せる事は粗方聞き出せたと思います。彼の境遇は?」
聞き出せた情報には価値があった。大帝国の武具を聞き出せた事でエルフ国の軍事力もあがった。そして敵のおおよその規模、戦力もわかった。彼を生かした事は決して無駄ではなかった。
「食い扶持を無駄にするわけにもいかぬだろう」
『処刑』
その二文字をエルフ王は浮かべたのだろう。
「国王陛下。殺せばそこですべては終わりです。どんなに使えないと思った存在でも、上手く使える事もあり得ます」
俺は提言した。
「しかし、どうするというのだ?」
「俺に考えがあります」
俺は真実の首輪の他にも鍛造していた武具があったのだ。
◆◆◆◆◆
「や、やめろっ! 僕に何をするつもりだ! なんだ! その首輪は!」
「大人しくしていろ!」
「やめろっ! ぐわっ!」
ルード王子。いや、ルードはその首輪をはめさせられた。その首輪の名は『服従の首輪』。絶対遵守を誓わせるスキルが込められた首輪だ。この首輪をつけさせられたら言いなりになるしかない。
こうしてルードは解放されたのである。だが、彼の意志は永遠に囚われたままだ。彼は傀儡となったのだ。もはや操り人形である。
◆◆◆
「あのフェイ様……」
ソフィアは顔を歪めていた。
「大丈夫なのでしょうか?」
「何がだ?」
「か、彼は大帝国の王子でした。だからその、何かあるかと怖いのです」
「……ソフィア。もう彼は彼であって、彼でない。試しにソフィア、ルードに何か命令してごらん」
「はぁ……。ここの書物を図書室まで運んでおいてください」
「わかりました。ソフィア様」
執事服を着たルードは大人しく命令に従った。
「もうあいつは逆らう事はないよ。あの首輪を外さない限りは。無給無賃金で働いて、その上どんな扱いをしてもいい。そんな人材いないよ。彼にとっては死ぬよりもむごい罰だ」
「はぁ……。けどなんか違和感があります」
「すぐになれるよ。彼にはこれから死ぬまでエルフ国の為に役立ってもらう」
流石に王族の血が流れているだけあってルードは美形だ。あの性格の悪ささえなくなれば、その仕事ぶりはなかなか見れたものだった。
そのうちエルフ国の人々もなれるであろう。毒でも薬になることがある。どんな有害に見えるものでもその有効性を見出せば、社会の役に立てる事もある。
今回の件で俺はその事を身に染みた。
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