宮廷鍛冶師、贋作しか作れないと追放されたが実は本物の聖剣や魔剣を鍛錬できていた~俺の代わりが見つからずに困り果てているらしいが、もう遅い。

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銃を鍛造する

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俺は工房にいた。

「フェイ様、次は何を作られるのですか?」

 ソフィアが聞いてくる。

「大帝国が所有していた銃だよ」

「銃ですか?」

「ああ。ルードから聞き出したんだ。その製造方法を。あいつを生かしておいてよかった。魔道カノンを再現できたらいいとは思ってたんだけど、あれは非人道的な兵器だと知ったよ」

「非人道的兵器? 元々兵器は人を傷つけるものではないのですか?」

「傷つけるのは普通敵だけだよ。あの魔道カノンは人間の魔導士を何十人も中に詰め込んで、それで魔力を吸い上げて放っていたらしい。吸い上げられた人間は干物みたいになって最終的には廃棄されるらしい。彼等はそれを生体燃料と呼んでいた」

「う、うわー……酷いですね。同じ人間なのに」

「全くだよ。あの魔道カノンはいわば諸刃の剣だったんだ。だからとりあえずは銃を作ってみる事にした」

「そこで銃ですか」

「そうだ。銃だ。銃は便利は武器だよ。槍よりもリーチが長い。その上に弓よりも携帯性に優れ、連射性も優れている。恐ろしい武器だ」

「そうなのですか」

「あの時ルードを殺害しなくてよかったよ。あいつは俺達の知らない事をよく知っている。魔道カノンの内部構造を知れたのも良かった。やはり知識は身を助けるよ」

「そうですね。無知では限界がやってきます」

「そうだ」

 俺は銃を鍛造した。何丁か。

「後でエルフ兵に射撃訓練をさせよう。本格的に軍に銃を配備させるんだ」

「はい。そう致します。ですがフェイ様、少し働き詰めです。戦争が終わったのです。少しは羽根を伸ばしてはいかがでしょうか」

「……そうだな」

 エルフ王に陳情してみるか。しばらくは俺が作った銃を兵士の間で訓練させておけばいいだろう。

「皆で海とか行ってみたいな」

「海ですか」

「ああ……いいと思うんだ、きっと」

 エルフ国には海がない。だから海に俺は思いを馳せていた。湖や緑はあっても海はない。海は海でいい。無論恐ろしいところもある。だが、それゆえに恵まれたところもある。

◆◆◆

「なに!? 休暇を取りたいだと!」

 エルフ王は驚いた。

「え、ええっ。いけませんか?」

「いや。フェイ殿は仕事熱心だからの。働き詰めで倒れはしないか心配していたところじゃ。だからわしは安心したくらいじゃ」

「え、ええ。それでお願いがあるんですか。ユースとシャロ、それからソフィアにも休暇を与えてやってはくれませんか? 皆戦争で疲れたと思うのです。働き詰めは彼女たちも一緒です。少しリフレッシュする時間も必要だと思うのです」

「うむ。その通りだの。国の事で手一杯で娘達のケアまで行き届いていなかった。ユースとシャロにも休暇を与えよう」

「ありがたき幸せ」

 こうして俺達の休暇が決定した。

◆◆◆

「休暇ですか?」

 ユースは驚いていた。

「私達も?」

「うん。どうかな。それで海でも行こうかと思って」

「海ですか? いいですね。海」

「……ちょうど乗り物もチャーターできそうだから」

「乗り物?」

「エルフ国には海がない。だから歩いていくと結構大変だろう」

「は、はぁ。そうですか」

「ソフィアも連れて四人で行く予定なんだ」

「それは楽しみですね」

「ええ」

 二人も喜んでいた。ソフィアもきっと喜ぶはずだ。

 こうして俺達は休暇中に海に行く事が決定した。

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