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真実の首輪で白状させる
しおりを挟む「何を作られるのですか? フェイ様」
「アクセサリを作ろうと思うんだ」
俺は工房にいた。
「アクセサリですか?」
「アクセサリは武器や防具ではないが、それでも特殊な効果を持つ装備品なんだ」
俺はアクセサリを鍛錬する。キコンカンコン。
「できた」
出来たのは首輪だ。
「この首輪は?」
「こいつの効果は――まあいい。現地で説明した方がいい」
俺はエルフ城へ向かった。
◆◆◆
エルフ城。謁見の間での事。暗殺者は両腕を拘束され、身動きを取れなくされていた。
「言え! 何者かの要求により貴様はフェイ殿を暗殺しようとしたのだろう! 人間の暗殺者!」
「へっ。口が避けても言えねぇよ。拷問されたってな。顧客情報は秘匿するのが俺のモットーなんだよ」
暗殺者は一切真実を語ろうともしない。
「おおっ。フェイ殿ではないか」
「お待たせしました」
「何をやっていたのだ?」
「少し必要なものを鍛錬していました」
「そうか……一体何を」
「この首輪を奴につけてください」
「首輪とな? そこの兵士よ。この首輪をそこの暗殺者につけぬか」
「は、はい!」
エルフ王に言われ、兵士は首輪をつける。
「へっ。拷問器具か? そんなもんで口はわらねぇよ!」
「いいから大人しくしてろ」
「ぐっ。な、なんだ。何もねぇじゃねえか。うっ!」
突如、暗殺者の目の色が変わった。
「この首輪は真実の首輪と言う装飾品(アクセサリ)です。この首輪をつけたものは嘘を話す事ができず、真実しか話せなくなります」
「う、うむ。そうか。そんな便利なものを。ではそこの暗殺者、お前にフェイ殿を襲うように言ったのは誰じゃ? 誰か裏で糸をひいた者がいるのであろう?」
「は、はい。エルフの貴族ロイ殿であります。私は金をもらい、鍛冶師フェイを殺害するように依頼されました」
「な、なに! 貴族じゃと!」
国王は驚いた。内部からの差し金だったのだ。敵ではない。身内からの犯行である。だが、俺は驚かなかった。考え得る事だった。
「な、なぜじゃ! エルフにとってフェイ殿は功労者であり英雄であるはずだ! その英雄をなぜエルフの貴族が!」
「簡単ですよ。俺は人間です。頭の固い貴族にとって、人間が英雄としてエルフ国にいるのは都合が悪いんです。邪魔なんですよ、俺は」
「何という事だ。恩を仇で返そうとは。フェイ殿、申し訳ない」
「いえ。別に国王の責任ではありません」
「すぐに貴族ロイを連れて参れ」
「はっ!」
兵士は命令され、すぐに動く事となる。
◆◆◆
「国王陛下! 何かの間違いです! そのようなならず者の戯言! 信ずるに値しません!」
連れて来られた貴族ロイはそう反駁する。まあ、当然だった。予想出来る対応だ。
「うむ。そうか。貴公を信じたい気持ちは勿論ある。同じエルフだからの」
「国王陛下! 私を信じてください!」
「真実の首輪をこの者につけよ!」
「はっ!」
「な、何を! やめろっ! うっ!」
真実の首輪をつけられたロイは暗殺者と同じように目の色が変わる。
「答えよ。貴族ロイ。暗殺者にフェイ殿の暗殺を依頼したのは貴様だな?」
「そうです。私がやりました」
「な、なぜじゃ? なぜそんな事を」
「決まっていますよ。邪魔だからです。人間がエルフ国の貴族になるなんて事許されるはずもない。聞けばユースティア姫とも恋仲と噂されているではないですか。そんな事許せるはずがない。人間がエルフの国の王になるなんて。だから私は鍛治師フェイを殺害し、自らが国王となる事を計画したのです。死んでしまえば後はどうとでもなる、そう考えたのです」
「な、なんだと! そんな事を。もうよい、その首輪を外すがよい」
「はっ!」
「わ、私は何を!」
首輪を外されたロイの目の色が元に戻る。正気に戻ったようだ。
「貴族ロイよ」
「信じてください! 国王! 私はやってない! 潔白です!」
「もうよい。貴様の言葉は信じられぬ! ロイを地下牢へ連れて行け!」
「はっ!」
「やめろ! 私は何もやってない! 無実だぁ!」
ロイは慌てるが押さえつけられ何もできない。こうして地下牢に連れて行かれた。
◆◆◆
「国王陛下、またお客様がきましたぞ」
「はあ、そうか。どうやら今度はエルフのようだの」
「くそっ! 早く僕を離せ! 僕は大帝国フィンの王子だぞ! いつまでこんなところに閉じ込めている! だせっ!」
「ルード王子は首謀者ですけど、私達は小間使いのように近くで見ていただけです。なのになぜこんな扱いをされなければならないのでしょう?」
「仕方がなかろう。見ていたというだけで一応は加担者ではあるからの。全くの無実ではなかろうて」
「仕方がありませんな。いつか釈放される時が来るまで待つより他にありませぬ」
「入れ!」
ガチャリ。牢屋の鍵が閉められる。
「く、くそっ! ふざけるなっ! 僕はエルフの貴族だぞ! なぜ貴族がこんな扱いを!」
こうして地下牢の住人がこうしてまた一人増えたのである。
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