宮廷鍛冶師、贋作しか作れないと追放されたが実は本物の聖剣や魔剣を鍛錬できていた~俺の代わりが見つからずに困り果てているらしいが、もう遅い。

つくも

文字の大きさ
上 下
47 / 58

終戦

しおりを挟む
「や、やめろっ! 来るなっ! 僕を殺すなっ! ひいっ!」

 ルード王子は尻もちをついていた。

「何を言っとるんやろなぁ。こいつ、お前のせいで何人死んだと思っとるねん。最後くらい潔くしろや」

「フェ、フェイ殿」

「あなたは、エドモンド国王、それに宰相まで」

「わしらは何もしてないんじゃ! 何も悪い事はしてない! ルード王子に脅されて属国になって、それで言う事をきかされてただけなんじゃ!」

「い、命だけは! 命だけはお助けください!」

 国王と宰相は俺にすがってくる。懐に入られたところで指揮系統は壊滅した。

「ルード王子を殺しちゃだめだ!」

「ん? なんでや? こいつが悪いんと違うんか?」

「大帝国はまだ戦力を保有している。ルード王子を殺した場合不必要に相手を刺激する事になる。それに彼は俺達の知りえない情報を知っているはずだ。それに交渉材料にもなる。生かしておく価値があるんだ」

「……そか。まあ好きにせいや」

「国王、宰相。あなた達も捕虜になって貰います」

「い、命が保証されるなら願ったりかなったりじゃ」

「で、できれば拷問などしないで欲しいであります。知っている事なら何でも話します故」

「く、くそっ! はなせっ!」

「大人しくしていろ」

 ルード王子は拘束された。こうして大帝国により侵略戦争は一旦の終戦を迎えたのである。

◆◆◆

 エルフ城の地下牢。そこにルード王子及び国王宰相は幽閉された。

「く、くそっ! ふざけるなっ! 僕を誰だと思っているんだ! 大帝国フィンの王子だぞ! こんな薄暗い地下牢に閉じ込めやがって!」

「フェイ殿。頼む! 無罪が証明されたらわしらをできるだけ早く解放してくれっ!」

「食事は一日三回。できるだけおいしいものを届けてくれると助かります! はい!」

各々が言いたい事をただ言っていた。

「今後の事はまた伝えます。しばらくはそこで大人しくしていてください」

「くそっ! ふざけるなっ! 僕を出せっ! このっ!」

 俺達は地下牢を去った。

 ◆◆◆

「フェイ様」

 ユースは笑顔を零す。

「ユース、何とか終わったよ」

「ありがとうございます。フェイ様のおかげで私達が、いえ、国が救われました」

「いや。皆のおかげだよ」

「フェイ様」

「ユース」

「……こほん」

 シャロが咳払いをする。

「フェイ様、お姉様。まだ我々はやる事が山積みです。喜ぶのはわかりますが今は控えてください」

「そ、そのとおりね。何をやってるのでしょうか、私は」

「そうだね。今はそれどころではないね。エルフ王のところへ行こう」

「ええ」

 戦争は終わった。だが、その後始末が大変だった。それでも大事が終わったという事で俺達はほっと一息つける時間となった。

◆◆◆

「ふむ。援軍に来てくれた亜人族の者ども。そしてフェイ殿。シャロ。皆の者よくやってくれた。おかげで我がエルフ国の危機は去った」

謁見の間には亜人族と俺達が終結していた。王の隣にはユースもいる。

「必要なだけの褒美は出そう。我々にできるだけの事だがな。我々も戦争により満身創痍じゃ。あまり期待に応えられぬやもしれぬ」

 戦争は終わった。しかし多くの負傷者が出た。遺体の埋葬もある。その後始末には長い時間がかかるだろう。そして捕虜を得た事を大帝国フィンに伝えなければならない。軍事交渉をしなければならない。二度とエルフ国に攻め入らない事を誓わせないと。

無論約束を破り奇襲してきたような連中だ。だが今は捕虜としてルード王子を手に入れている。だからきっと、エルフ国にとって有利に交渉を進める事ができるはずだ。

「とりあえずはご苦労であった、皆の者。休んでいきたいものは客室を貸し出す。あまり盛大なパーティーなどできぬが食事は振舞おう」

様々な問題を抱えつつもそれでも一旦、この戦争は終わりを告げたのである。


しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ

井藤 美樹
ファンタジー
 初代勇者が建国したエルヴァン聖王国で双子の王子が生まれた。  一人には勇者の証が。  もう片方には証がなかった。  人々は勇者の誕生を心から喜ぶ。人と魔族との争いが漸く終結すると――。  しかし、勇者の証を持つ王子は魔力がなかった。それに比べ、持たない王子は莫大な魔力を有していた。  それが判明したのは五歳の誕生日。  証を奪って生まれてきた大罪人として、王子は右手を斬り落とされ魔獣が棲む森へと捨てられた。  これは、俺と仲間の復讐の物語だ――

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます

海夏世もみじ
ファンタジー
 月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。  だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。  彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

処理中です...