41 / 58
鍛冶師フェイの本領発揮
しおりを挟む
「フェイ様……」
ソフィアは不安そうだった。無理もない。俺達は今、工房にいる。
「不安になるのはわかる。だけど、俺達は俺達にできる事をするしかない」
俺は鍛冶師だ。戦闘職ではない。前線に出向いて闘うのは俺の領分ではない。俺は武具を鍛錬する事しかできない。
「そうじゃ。わしらはわしらにできる事をするしかないのだ」
鑑定士のゴンさんも来てくれていた。
「してフェイ殿。おぬしは何を鍛造するつもりなのじゃ?」
「これから援軍は必ず来てくれます。その人達に向けた武具を作ろうと考えています」
「……そうか。おぬしならきっとやってくれる。おぬしならこのエルフの国を救える。わしはそう信じておる。微力ながらわしも応援させてくれ」
「はい」
俺は鍛錬を始める。
キンコンカンコン!
「おお! 何と凄い熱の入用じゃ! これは凄いものができそうだわい!」
ゴンさんは驚いていた。
◆◆◆◆◆
それから一日程の時間が過ぎようとしていた。
「……くっ。くそっ」
シャロ率いるエルフ兵の部隊は善戦した。しかし多勢に無勢だった。持久戦を強いられたエルフ兵は続々と倒れていく。そして率いるシャロの体力も無限ではない。
対する大帝国には多くの兵力があった。そして多くが銃で武装をしていたのである。多勢に無勢だ。
「まったくよ。手こずらせやがってよ。エルフのお姫様。確か、シャロティア様だったか」
「くっ……」
シャロは既に力尽きていた。
「……闘っている時は余裕がなかったけど、こいつはえらい上玉だぜ。頑張ったかいがあったな」
「ああ。お楽しみの始まりだ」
兵士達は舌なめずりをしていた。シャロは生理的嫌悪と恐怖を覚えた。
「心配するな。てめぇの姉のユースティアもきっちりと嬲り者にしてやるからよ。姉妹仲良くな」
「クックック。これだから戦争はやめられねぇぜ」
(フェイ様……ユースお姉様、申し訳ありません)
このまま敵に辱められるぐらいなら。自害した方がいい。シャロは覚悟を決めた。
――と。その時だった。
影が見えた。巨大な影だ。これは、ドラゴンの影だ。
「おっと! それ以上はさせないだ!」
「なっ!? てめぇは!」
天空より降り立ってきたのは獣人の王レオであった。
「ぐわっ!」
兵士はその爪で切り裂かれる。
「間に合ったかにゃ!?」
ミーシャが現れる。
「くっ! くそっ! 獣人風情が!」
「うらあっ!」
「ぐわっ!」
近接戦闘では肉体能力の高い獣人に敵うはずもない。兵士達はなすすべもなく切り裂かれる。
「シャロ。間に合いましたか」
「ユースお姉さま!」
「おーい! 皆無事か!」
「フェイ様!」
フェイが姿を現す。
「おいらたちもいるだ!」
ドワーフ族が竜化しているフレイムから降りてきた。
「ドワーフ王!」
◆◆◆◆
俺が武具の鍛錬を終え、その場所にたどり着いた時には、既に援軍が駆けつけてきてくれた。何とか間に合った様子だ。
「よかった。何とか間に合った」
俺は大量の荷物を持ってきたのだ。ゴンさんとユースにも手伝ってもらった。
「……フェイ様」
「ユース。何とか間に合ったみたいだね。獣人族、ドワーフ族、そして竜人族。本当、このエルフ国の危機に馳せ参じてくれてありがとう」
「まあ、約束は約束だ。来るに決まってるだろう」
「そうだ! お前たちは命の恩人だ!」
獣人王とドワーフ王は言う。
「これは俺からの贈り物だ。まず獣人族。試してみて欲しい」
「なんだ? これは?」
「なんにゃ? これは?」
俺は爪のようなものを取り出した。
「それはミスリルクローと言っての。攻撃力があがるんじゃ。スキル攻撃力UP大がついておる。貴様獣人の攻撃がよりえげつないものになるのじゃ!」
鑑定士のゴンさんは説明をする。
「そしてドワーフ族にはハンマーを」
俺はミスリルハンマーを渡す。
「それはドワーフ族の装備のハンマーじゃ。それも攻撃力があがるんじゃ」
「おお! 実にありがたい! 木のハンマーでは些か心もとなかったのだ!」
ドワーフは喜んだ。
「そしてこいつは、シャロ。竜人用の装備だ」
「これは……?」
馬につける手綱のようだった。
「これは神竜の手綱と言って、竜騎士が乗る事により、竜の全パラメーターが10%アップするという破格の補助装備じゃ! ただでさえ強い竜が本領を発揮し、とんでもない化物になるのじゃ!」
「シャロ。君にはフレイムさんに乗って闘って欲しい。竜騎士として」
「ありがとうございます。フェイ様。ありがたく頂戴します。装着してよろしいでしょうか? フレイム様」
「うん。別にいいよーーーーーーーーーーーーーーー。後でバハムート様もくるよ」
「それは心強いです」
シャロはフレイムに神竜の手綱を装備させた。
「さあ、反撃の条件は整った」
俺は少しワクワクしていた。不謹慎かもしれない。だが、俺が鍛造した武具がどう活躍するのか、鍛冶師としてそれなりに関心があったのだ。心が高鳴った。
「反撃開始だ」
防戦一方だったエルフ国が援軍の力を得て、ついには大帝国に反撃を開始する。その時がきたのだ。
ソフィアは不安そうだった。無理もない。俺達は今、工房にいる。
「不安になるのはわかる。だけど、俺達は俺達にできる事をするしかない」
俺は鍛冶師だ。戦闘職ではない。前線に出向いて闘うのは俺の領分ではない。俺は武具を鍛錬する事しかできない。
「そうじゃ。わしらはわしらにできる事をするしかないのだ」
鑑定士のゴンさんも来てくれていた。
「してフェイ殿。おぬしは何を鍛造するつもりなのじゃ?」
「これから援軍は必ず来てくれます。その人達に向けた武具を作ろうと考えています」
「……そうか。おぬしならきっとやってくれる。おぬしならこのエルフの国を救える。わしはそう信じておる。微力ながらわしも応援させてくれ」
「はい」
俺は鍛錬を始める。
キンコンカンコン!
「おお! 何と凄い熱の入用じゃ! これは凄いものができそうだわい!」
ゴンさんは驚いていた。
◆◆◆◆◆
それから一日程の時間が過ぎようとしていた。
「……くっ。くそっ」
シャロ率いるエルフ兵の部隊は善戦した。しかし多勢に無勢だった。持久戦を強いられたエルフ兵は続々と倒れていく。そして率いるシャロの体力も無限ではない。
対する大帝国には多くの兵力があった。そして多くが銃で武装をしていたのである。多勢に無勢だ。
「まったくよ。手こずらせやがってよ。エルフのお姫様。確か、シャロティア様だったか」
「くっ……」
シャロは既に力尽きていた。
「……闘っている時は余裕がなかったけど、こいつはえらい上玉だぜ。頑張ったかいがあったな」
「ああ。お楽しみの始まりだ」
兵士達は舌なめずりをしていた。シャロは生理的嫌悪と恐怖を覚えた。
「心配するな。てめぇの姉のユースティアもきっちりと嬲り者にしてやるからよ。姉妹仲良くな」
「クックック。これだから戦争はやめられねぇぜ」
(フェイ様……ユースお姉様、申し訳ありません)
このまま敵に辱められるぐらいなら。自害した方がいい。シャロは覚悟を決めた。
――と。その時だった。
影が見えた。巨大な影だ。これは、ドラゴンの影だ。
「おっと! それ以上はさせないだ!」
「なっ!? てめぇは!」
天空より降り立ってきたのは獣人の王レオであった。
「ぐわっ!」
兵士はその爪で切り裂かれる。
「間に合ったかにゃ!?」
ミーシャが現れる。
「くっ! くそっ! 獣人風情が!」
「うらあっ!」
「ぐわっ!」
近接戦闘では肉体能力の高い獣人に敵うはずもない。兵士達はなすすべもなく切り裂かれる。
「シャロ。間に合いましたか」
「ユースお姉さま!」
「おーい! 皆無事か!」
「フェイ様!」
フェイが姿を現す。
「おいらたちもいるだ!」
ドワーフ族が竜化しているフレイムから降りてきた。
「ドワーフ王!」
◆◆◆◆
俺が武具の鍛錬を終え、その場所にたどり着いた時には、既に援軍が駆けつけてきてくれた。何とか間に合った様子だ。
「よかった。何とか間に合った」
俺は大量の荷物を持ってきたのだ。ゴンさんとユースにも手伝ってもらった。
「……フェイ様」
「ユース。何とか間に合ったみたいだね。獣人族、ドワーフ族、そして竜人族。本当、このエルフ国の危機に馳せ参じてくれてありがとう」
「まあ、約束は約束だ。来るに決まってるだろう」
「そうだ! お前たちは命の恩人だ!」
獣人王とドワーフ王は言う。
「これは俺からの贈り物だ。まず獣人族。試してみて欲しい」
「なんだ? これは?」
「なんにゃ? これは?」
俺は爪のようなものを取り出した。
「それはミスリルクローと言っての。攻撃力があがるんじゃ。スキル攻撃力UP大がついておる。貴様獣人の攻撃がよりえげつないものになるのじゃ!」
鑑定士のゴンさんは説明をする。
「そしてドワーフ族にはハンマーを」
俺はミスリルハンマーを渡す。
「それはドワーフ族の装備のハンマーじゃ。それも攻撃力があがるんじゃ」
「おお! 実にありがたい! 木のハンマーでは些か心もとなかったのだ!」
ドワーフは喜んだ。
「そしてこいつは、シャロ。竜人用の装備だ」
「これは……?」
馬につける手綱のようだった。
「これは神竜の手綱と言って、竜騎士が乗る事により、竜の全パラメーターが10%アップするという破格の補助装備じゃ! ただでさえ強い竜が本領を発揮し、とんでもない化物になるのじゃ!」
「シャロ。君にはフレイムさんに乗って闘って欲しい。竜騎士として」
「ありがとうございます。フェイ様。ありがたく頂戴します。装着してよろしいでしょうか? フレイム様」
「うん。別にいいよーーーーーーーーーーーーーーー。後でバハムート様もくるよ」
「それは心強いです」
シャロはフレイムに神竜の手綱を装備させた。
「さあ、反撃の条件は整った」
俺は少しワクワクしていた。不謹慎かもしれない。だが、俺が鍛造した武具がどう活躍するのか、鍛冶師としてそれなりに関心があったのだ。心が高鳴った。
「反撃開始だ」
防戦一方だったエルフ国が援軍の力を得て、ついには大帝国に反撃を開始する。その時がきたのだ。
0
お気に入りに追加
2,549
あなたにおすすめの小説
ユニークスキルで異世界マイホーム ~俺と共に育つ家~
楠富 つかさ
ファンタジー
地震で倒壊した我が家にて絶命した俺、家入竜也は自分の死因だとしても家が好きで……。
そんな俺に転生を司る女神が提案してくれたのは、俺の成長に応じて育つ異空間を創造する力。この力で俺は生まれ育った家を再び取り戻す。
できれば引きこもりたい俺と異世界の冒険者たちが織りなすソード&ソーサリー、開幕!!
第17回ファンタジー小説大賞にエントリーしました!
「モノマネだけの無能野郎は追放だ!」と、勇者パーティーをクビになった【模倣】スキル持ちの俺は、最強種のヒロインたちの能力を模倣し無双する!
藤川未来
ファンタジー
主人公カイン(男性 20歳)は、あらゆる能力を模倣(コピー)する事が出来るスキルを持つ。
だが、カインは「モノマネだけの無能野郎は追放だ!」と言われて、勇者パーティーから追放されてしまう。
失意の中、カインは、元弟子の美少女3人と出会う。彼女達は、【希少種】と呼ばれる最強の種族の美少女たちだった。
ハイエルフのルイズ。猫神族のフローラ。精霊族のエルフリーデ。
彼女たちの能力を模倣(コピー)する事で、主人公カインは勇者を遙かに超える戦闘能力を持つようになる。
やがて、主人公カインは、10人の希少種のヒロイン達を仲間に迎え、彼女達と共に、魔王を倒し、「本物の勇者」として人類から崇拝される英雄となる。
模倣(コピー)スキルで、無双して英雄に成り上がる主人公カインの痛快無双ストーリー
◆◆◆◆【毎日7時10分、12時10分、18時10分、20時10分に、一日4回投稿します】◆◆◆
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【オンボロ剣】も全て【神剣】に変える最強術者
月風レイ
ファンタジー
神の手違いにより死んでしまった佐藤聡太は神の計らいで異世界転移を果たすことになった。
そして、その際に神には特別に特典を与えられることになった。
そして聡太が望んだ力は『どんなものでも俺が装備すると最強になってしまう能力』というものであった。
聡太はその能力は服であれば最高の服へと変わり、防具であれば伝説級の防具の能力を持つようになり、剣に至っては神剣のような力を持つ。
そんな能力を持って、聡太は剣と魔法のファンタジー世界を謳歌していく。
ストレスフリーファンタジー。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
「ただの通訳なんて宮廷にはいらない」と追放された【言語術師】。追放された瞬間、竜も機械も使えなくなって女王様が土下座してきたけどもう遅い。
アメカワ・リーチ
ファンタジー
「ただの通訳など、我が国にはいらない」
言語術師として、宮廷に仕えていたフェイ。
しかし、新女王の即位とともに、未開の地への追放を言い渡される。
「私がいないと、ドラゴンや機械に指示を出せなくなりますよ……?」
「そんなわけないでしょう! 今だって何も困ってないわ!」
有無を言わさず追放されるフェイ。
しかし、フェイは、得意の“言術”によって未開の地を開拓していく。
機械語によって、機械の兵隊軍団を作り、
神々の言葉で神獣を創造し、
古代語でドラゴンたちと同盟を結ぶ。
ドラゴン、猫耳美女、エルフ、某国の将軍と様々な人間にご主人様と慕われながら、
こうして未開の地をどんどん発展させていき、やがて大陸一の国になる。
一方、繁栄していくフェイの国とは違い、王国はどんどん没落していく。
女王はフェイのことを無能だと罵ったが、王国の繁栄を支えていたのはフェイの言術スキルだった。
“自動通訳”のおかげで、王国の人々は古代語を話すドラゴンと意思疎通をはかり、機械をプログラミングして自由に操ることができていたが、フェイがいなくなったことでそれができなくなり王国は機能不全に陥る。
フェイを追放した女王は、ようやくフェイを追放したのが間違いだと気がつくがすでに時遅しであった。
王都にモンスターが溢れ、敵国が攻め行ってきて、女王は死にかける。
女王は、フェイに王国へ戻ってきてほしいと、土下座して懇願するが、未開の地での充実した日々を送っているフェイは全く取り合わない。
やがて王国では反乱が起き、女王は奴隷の身分に落ちていくのであった。
門番として20年勤めていましたが、不当解雇により国を出ます ~唯一無二の魔獣キラーを追放した祖国は魔獣に蹂躙されているようです~
渡琉兎
ファンタジー
15歳から20年もの間、王都の門番として勤めていたレインズは、国民性もあって自らのスキル魔獣キラーが忌避され続けた結果――不当解雇されてしまう。
最初は途方にくれたものの、すぐに自分を必要としてくれる人を探すべく国を出る決意をする。
そんな折、移住者を探す一人の女性との出会いがレインズの運命を大きく変える事になったのだった。
相棒の獣魔、SSSランクのデンと共に、レインズは海を渡り第二の故郷を探す旅に出る!
※アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、で掲載しています。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる