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エルフ姫との入浴
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「……ふぅ」
俺はエルフ城の大浴場に入っていた。ある意味疲れた。精神的に。エルフの国王が俺の事を買ってくれているのは素直に嬉しい。ユースの気持ちもそうだ。
だが俺は人間であり、ただの鍛冶師だ。それに王族でも貴族でもない。そんな簡単にその話を受けるわけにはいかない。俺達の間には障害が多いのだ。
――と。そんな時だった。風呂場の戸が開かれる。俺が入浴中である事は周知されているはずだ。偶然入ってくるなんて事は考え辛い。つまりは入ってきたのは核心的な行動だった。
「ソフィア! 入ってくるなって言っただろう! って……」
――しかし。風呂場に入ってきたのは俺が想定していた人物ではなかった。
「ユース……」
そこにいたのはユースだった。ユースは美しいその体を惜しげもなく晒している。ソフィアと比較すると若干胸に肉がなく、スレンダーな体をしているが。無駄な肉のないその体は理想的で綺麗な体だった。まるで彫刻のよう。
「ユース……どうして」
「フェイ様の日頃のご苦労を労いしようと思いまして。だめでしょうか? 私の体はお見苦しいですか?」
「いや。そんな事はない、綺麗な体だよ」
正直に思った。ユースの体はあまりに美しすぎ、性欲をかられるというよりも芸術作品を見ているかのような気分になった。
「ありがとうございます。それに、フェイ様と少々二人切りでお話をしたいと思っていました」
「昼間の話? エルフ王様との」
「は、はい。そうなります」
ユースは俺の隣の浴槽にちゃぽんと浸かる。
「フェイ様はどう考えているのですか?」
「どうって?」
「私達が夫婦として結ばれる事です」
「簡単ではないよ。俺は人間だし、ただの鍛冶師だ。貴族でも王族でもない。それにユースはエルフだし。お姫様だ。本来ならこうして入浴を共にしているだけでも大問題だろう」
しばらく暮らした限りエルフ国に混浴の文化はない。男女が入浴を共にする。それは大きな意味を持つ事だろう。
「それもそうです。ですが、障害があるだけで諦められるくらいのお気持ちですか? フェイ様にとって私は」
「え?」
「私にとってはフェイ様はそうではありません。そのくらいで諦めたくはありません。王族である事は多くの事を得る代わりに多くを諦めなければならない立場や身分かもしれませぬ。それでも私はフェイ様を諦めたくはないのです」
ユースの言葉には真剣さが伝わってくる。嘘や冗談など微塵もない。殆ど告白にも近い言葉だ。
「俺だってそうだ。俺だって諦めたくはない。ユースの事は特別だと思っている。何も将来が見えなかった俺に夢や希望を与えてくれたのは君だ。君は居場所を与えてくれた。それだけじゃない。やっぱり女性としても綺麗だし、気品もあるし。優しさや知性も兼ね揃えている。俺の理想の女性そのままだ」
「でしたら私達は相思相愛ですね」
ユースは笑みを浮かべる。
「そうだな。その通りだ」
でもだったら結婚しよう、って簡単にはいかないんだよなぁ。相手はエルフだし王女様。俺は人間だ。障害は多い。そして最終的にはエルフ国を国王として率いる覚悟がいるのだ。
「だけど何度も言うように簡単じゃない。多くの障害が俺達には存在している。だけどそのいくつもの障害をクリアしていったらその時は」
俺は告げる。
「君を妻として娶り、エルフ国を率いたいと考えている」
俺の顔は赤くなっている事だろう。のぼせているからではない。それだけ言葉に気持ちが入っているからだ。
「そうですね。その時を待っていますわ。待っているだけではない。その障害を乗り越える為に手伝える事があったら何でも致します」
「ああ……。そうしよう」
「約束ですわ。フェイ様」
ユースの顔が近づいてくる。唇が合わさった。
「え?」
さっとユースは唇を離した。浅いキスだった。
「これは誓いのキスです。約束の誓い。二人が夫婦となる為の障害を取り除いていく事に懸命になる事。そして然るべき時が来たら、夫婦となる事。それを約束するためのものです」
「あ、ああ……約束だ。必ずそうなるようにする。いつか然るべき時がきたら、君と」
俺にとってのファーストキスだった。まさかエルフのお姫様であるユースとする事になるとは夢にも思っていなかった。
その日の入浴はドキドキが止まらない、忘れられない入浴となったのだ。
俺はエルフ城の大浴場に入っていた。ある意味疲れた。精神的に。エルフの国王が俺の事を買ってくれているのは素直に嬉しい。ユースの気持ちもそうだ。
だが俺は人間であり、ただの鍛冶師だ。それに王族でも貴族でもない。そんな簡単にその話を受けるわけにはいかない。俺達の間には障害が多いのだ。
――と。そんな時だった。風呂場の戸が開かれる。俺が入浴中である事は周知されているはずだ。偶然入ってくるなんて事は考え辛い。つまりは入ってきたのは核心的な行動だった。
「ソフィア! 入ってくるなって言っただろう! って……」
――しかし。風呂場に入ってきたのは俺が想定していた人物ではなかった。
「ユース……」
そこにいたのはユースだった。ユースは美しいその体を惜しげもなく晒している。ソフィアと比較すると若干胸に肉がなく、スレンダーな体をしているが。無駄な肉のないその体は理想的で綺麗な体だった。まるで彫刻のよう。
「ユース……どうして」
「フェイ様の日頃のご苦労を労いしようと思いまして。だめでしょうか? 私の体はお見苦しいですか?」
「いや。そんな事はない、綺麗な体だよ」
正直に思った。ユースの体はあまりに美しすぎ、性欲をかられるというよりも芸術作品を見ているかのような気分になった。
「ありがとうございます。それに、フェイ様と少々二人切りでお話をしたいと思っていました」
「昼間の話? エルフ王様との」
「は、はい。そうなります」
ユースは俺の隣の浴槽にちゃぽんと浸かる。
「フェイ様はどう考えているのですか?」
「どうって?」
「私達が夫婦として結ばれる事です」
「簡単ではないよ。俺は人間だし、ただの鍛冶師だ。貴族でも王族でもない。それにユースはエルフだし。お姫様だ。本来ならこうして入浴を共にしているだけでも大問題だろう」
しばらく暮らした限りエルフ国に混浴の文化はない。男女が入浴を共にする。それは大きな意味を持つ事だろう。
「それもそうです。ですが、障害があるだけで諦められるくらいのお気持ちですか? フェイ様にとって私は」
「え?」
「私にとってはフェイ様はそうではありません。そのくらいで諦めたくはありません。王族である事は多くの事を得る代わりに多くを諦めなければならない立場や身分かもしれませぬ。それでも私はフェイ様を諦めたくはないのです」
ユースの言葉には真剣さが伝わってくる。嘘や冗談など微塵もない。殆ど告白にも近い言葉だ。
「俺だってそうだ。俺だって諦めたくはない。ユースの事は特別だと思っている。何も将来が見えなかった俺に夢や希望を与えてくれたのは君だ。君は居場所を与えてくれた。それだけじゃない。やっぱり女性としても綺麗だし、気品もあるし。優しさや知性も兼ね揃えている。俺の理想の女性そのままだ」
「でしたら私達は相思相愛ですね」
ユースは笑みを浮かべる。
「そうだな。その通りだ」
でもだったら結婚しよう、って簡単にはいかないんだよなぁ。相手はエルフだし王女様。俺は人間だ。障害は多い。そして最終的にはエルフ国を国王として率いる覚悟がいるのだ。
「だけど何度も言うように簡単じゃない。多くの障害が俺達には存在している。だけどそのいくつもの障害をクリアしていったらその時は」
俺は告げる。
「君を妻として娶り、エルフ国を率いたいと考えている」
俺の顔は赤くなっている事だろう。のぼせているからではない。それだけ言葉に気持ちが入っているからだ。
「そうですね。その時を待っていますわ。待っているだけではない。その障害を乗り越える為に手伝える事があったら何でも致します」
「ああ……。そうしよう」
「約束ですわ。フェイ様」
ユースの顔が近づいてくる。唇が合わさった。
「え?」
さっとユースは唇を離した。浅いキスだった。
「これは誓いのキスです。約束の誓い。二人が夫婦となる為の障害を取り除いていく事に懸命になる事。そして然るべき時が来たら、夫婦となる事。それを約束するためのものです」
「あ、ああ……約束だ。必ずそうなるようにする。いつか然るべき時がきたら、君と」
俺にとってのファーストキスだった。まさかエルフのお姫様であるユースとする事になるとは夢にも思っていなかった。
その日の入浴はドキドキが止まらない、忘れられない入浴となったのだ。
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