宮廷鍛冶師、贋作しか作れないと追放されたが実は本物の聖剣や魔剣を鍛錬できていた~俺の代わりが見つからずに困り果てているらしいが、もう遅い。

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エルフの国王と王妃に感謝され、娘との縁談を持ち出される

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「実によくやってくれた、鍛冶師フェイ殿」

 エルフの国に戻った俺は国王に呼び出された。発見された鉱物と宝石は炭鉱夫が何日もかけて運び出す予定だ。

「あなたの活躍のおかげで北の鉱山から貴重な貴金属が取れました。その上に宝石まで」

「その価値は最低でも金貨2000枚はあるほどだそうだ。鉱物は輸出にも使え、外貨を得ることもできる、大変貴重な資源です。フェイ殿に月金貨200枚では些か安すぎたようですな。一瞬で元が取れて、その何倍もの利益をエルフの国にもたらしてくれています。フェイ殿の賃金をもっとあげてやるべきかとわしの方は考えております」

「勿体なきお言葉。ですが私は既に十分な賃金を頂いております。使えきれない程です。得た利益はエルフの国の発展に回してください。私にとってはエルフの皆さまが喜んでいるその笑顔こそが最高の褒美です」

「な、なんと謙虚な青年だっ! ますます惚れてしまったぞっ! 君のような素晴らしい青年に国を任せられればエルフの国も安泰かもしれぬ。どうだ!? フェイ殿。ユースティアを妻として娶り、ゆくゆくは我がエルフの国を率いてはくれないか!?」

「!?」

 流石の俺も面を食らった。エルフの姫であるユースティアを娶る。それはエルフの国王となる事を示す。
 
 だが俺の種族は間違いなく人間である。エルフにとって他種族である人間を国王として迎え入れるのかは些か大きな問題がある。いくつもの障害が存在していた。

「勿体なきお言葉です。ですが、私は人間であります。エルフの民が快く迎えてくれるとは思えませぬ」

「そうだの。フェイ殿の考えている事はわかっておる。エルフと人間は他種族だ。もしフェイ殿とユースティアの間で子供が生まれれば、ハーフエルフという事になる。やはり混血に対する差別は根強く残っておる。ましてや人間が国王になる事に抵抗を示すエルフはどうしてもいなくはならぬだろう」

「左様でございます。簡単な話ではありませぬ。それにいくら国王とはいえ、娘様の気持ちを些か軽く考えすぎではないでしょうか? ユースティア様といえども本人の気持ちというものがあるでしょうに」

 国王の御前である以上、俺は『ユース』ではなく『ユースティア様』と呼ばせてもらった。

「ふむ。ユースティアよ。お主はどう考えている? フェイ殿の事を。フェイ殿を夫として迎え入れ、エルフの国を率いる事に対して、どう思っているのだ?」

「フェイ様は私の命の恩人です。それだけではありません。大変お慕い申し上げているお方です。そして、エルフの国をよりよくしていく事ができるだけのお力を持ったお方。フェイ様さえよろしければ、私を妻として迎え入れて頂きたいと思っております」

 ユースティアは顔を真っ赤にしてそう言ってくる。

「だそうだ。かといってフェイ殿にも気持ちというものがあるであろう。ユースティアの事をどう思っておるのだ? わしは自慢の娘だと思っているが、フェイ殿にとってはどうだ? わしの前だからと言って変に気を使わなくてよい。率直に言ってどうだ?」

「今までお会いしてきた女性の中でもっともお美しい方だと思っております。それだけではありません。王女としての気品に満ち溢れた、聡明な女性です。非の打ち所のない素晴らしい女性だと思っております」

 これは別に国王の前だからそう言っているわけではない。純粋にそう思っての言動だった。

「すぐにという話ではない。やはりフェイ殿の気持ちの整理もあるだろう。それにフェイ殿が言っていたように簡単な問題ではないのだ。フェイ殿は人間であるし、王族の血筋ではない。確かに貴族のうちには反対してくる者も出てくるだろう。だがな。フェイ殿が今後もこのエルフの国の発展に寄与してくれば、そういった反対意見をねじ伏せる事もできるはずだ。人間である事や王族ではない事など問題ではならぬ程に。すぐにという話ではない。ゆくゆくは考えてはくれぬかっ?」

「はっ。一介の鍛冶師でしかない私にこのようなお話、勿体ない限りであります。私には鍛冶をする事しかできません。この力を持ってエルフの国の発展に尽力し、その末に結論を出させて貰えればと考えております」

「そうだ。それでよい。期待しているぞ、フェイ殿」

 こうして俺はエルフ王からユースティアとの縁談を持ち出されたのである。





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