16 / 58
エルフの国王と王妃に感謝され、娘との縁談を持ち出される
しおりを挟む
「実によくやってくれた、鍛冶師フェイ殿」
エルフの国に戻った俺は国王に呼び出された。発見された鉱物と宝石は炭鉱夫が何日もかけて運び出す予定だ。
「あなたの活躍のおかげで北の鉱山から貴重な貴金属が取れました。その上に宝石まで」
「その価値は最低でも金貨2000枚はあるほどだそうだ。鉱物は輸出にも使え、外貨を得ることもできる、大変貴重な資源です。フェイ殿に月金貨200枚では些か安すぎたようですな。一瞬で元が取れて、その何倍もの利益をエルフの国にもたらしてくれています。フェイ殿の賃金をもっとあげてやるべきかとわしの方は考えております」
「勿体なきお言葉。ですが私は既に十分な賃金を頂いております。使えきれない程です。得た利益はエルフの国の発展に回してください。私にとってはエルフの皆さまが喜んでいるその笑顔こそが最高の褒美です」
「な、なんと謙虚な青年だっ! ますます惚れてしまったぞっ! 君のような素晴らしい青年に国を任せられればエルフの国も安泰かもしれぬ。どうだ!? フェイ殿。ユースティアを妻として娶り、ゆくゆくは我がエルフの国を率いてはくれないか!?」
「!?」
流石の俺も面を食らった。エルフの姫であるユースティアを娶る。それはエルフの国王となる事を示す。
だが俺の種族は間違いなく人間である。エルフにとって他種族である人間を国王として迎え入れるのかは些か大きな問題がある。いくつもの障害が存在していた。
「勿体なきお言葉です。ですが、私は人間であります。エルフの民が快く迎えてくれるとは思えませぬ」
「そうだの。フェイ殿の考えている事はわかっておる。エルフと人間は他種族だ。もしフェイ殿とユースティアの間で子供が生まれれば、ハーフエルフという事になる。やはり混血に対する差別は根強く残っておる。ましてや人間が国王になる事に抵抗を示すエルフはどうしてもいなくはならぬだろう」
「左様でございます。簡単な話ではありませぬ。それにいくら国王とはいえ、娘様の気持ちを些か軽く考えすぎではないでしょうか? ユースティア様といえども本人の気持ちというものがあるでしょうに」
国王の御前である以上、俺は『ユース』ではなく『ユースティア様』と呼ばせてもらった。
「ふむ。ユースティアよ。お主はどう考えている? フェイ殿の事を。フェイ殿を夫として迎え入れ、エルフの国を率いる事に対して、どう思っているのだ?」
「フェイ様は私の命の恩人です。それだけではありません。大変お慕い申し上げているお方です。そして、エルフの国をよりよくしていく事ができるだけのお力を持ったお方。フェイ様さえよろしければ、私を妻として迎え入れて頂きたいと思っております」
ユースティアは顔を真っ赤にしてそう言ってくる。
「だそうだ。かといってフェイ殿にも気持ちというものがあるであろう。ユースティアの事をどう思っておるのだ? わしは自慢の娘だと思っているが、フェイ殿にとってはどうだ? わしの前だからと言って変に気を使わなくてよい。率直に言ってどうだ?」
「今までお会いしてきた女性の中でもっともお美しい方だと思っております。それだけではありません。王女としての気品に満ち溢れた、聡明な女性です。非の打ち所のない素晴らしい女性だと思っております」
これは別に国王の前だからそう言っているわけではない。純粋にそう思っての言動だった。
「すぐにという話ではない。やはりフェイ殿の気持ちの整理もあるだろう。それにフェイ殿が言っていたように簡単な問題ではないのだ。フェイ殿は人間であるし、王族の血筋ではない。確かに貴族のうちには反対してくる者も出てくるだろう。だがな。フェイ殿が今後もこのエルフの国の発展に寄与してくれば、そういった反対意見をねじ伏せる事もできるはずだ。人間である事や王族ではない事など問題ではならぬ程に。すぐにという話ではない。ゆくゆくは考えてはくれぬかっ?」
「はっ。一介の鍛冶師でしかない私にこのようなお話、勿体ない限りであります。私には鍛冶をする事しかできません。この力を持ってエルフの国の発展に尽力し、その末に結論を出させて貰えればと考えております」
「そうだ。それでよい。期待しているぞ、フェイ殿」
こうして俺はエルフ王からユースティアとの縁談を持ち出されたのである。
エルフの国に戻った俺は国王に呼び出された。発見された鉱物と宝石は炭鉱夫が何日もかけて運び出す予定だ。
「あなたの活躍のおかげで北の鉱山から貴重な貴金属が取れました。その上に宝石まで」
「その価値は最低でも金貨2000枚はあるほどだそうだ。鉱物は輸出にも使え、外貨を得ることもできる、大変貴重な資源です。フェイ殿に月金貨200枚では些か安すぎたようですな。一瞬で元が取れて、その何倍もの利益をエルフの国にもたらしてくれています。フェイ殿の賃金をもっとあげてやるべきかとわしの方は考えております」
「勿体なきお言葉。ですが私は既に十分な賃金を頂いております。使えきれない程です。得た利益はエルフの国の発展に回してください。私にとってはエルフの皆さまが喜んでいるその笑顔こそが最高の褒美です」
「な、なんと謙虚な青年だっ! ますます惚れてしまったぞっ! 君のような素晴らしい青年に国を任せられればエルフの国も安泰かもしれぬ。どうだ!? フェイ殿。ユースティアを妻として娶り、ゆくゆくは我がエルフの国を率いてはくれないか!?」
「!?」
流石の俺も面を食らった。エルフの姫であるユースティアを娶る。それはエルフの国王となる事を示す。
だが俺の種族は間違いなく人間である。エルフにとって他種族である人間を国王として迎え入れるのかは些か大きな問題がある。いくつもの障害が存在していた。
「勿体なきお言葉です。ですが、私は人間であります。エルフの民が快く迎えてくれるとは思えませぬ」
「そうだの。フェイ殿の考えている事はわかっておる。エルフと人間は他種族だ。もしフェイ殿とユースティアの間で子供が生まれれば、ハーフエルフという事になる。やはり混血に対する差別は根強く残っておる。ましてや人間が国王になる事に抵抗を示すエルフはどうしてもいなくはならぬだろう」
「左様でございます。簡単な話ではありませぬ。それにいくら国王とはいえ、娘様の気持ちを些か軽く考えすぎではないでしょうか? ユースティア様といえども本人の気持ちというものがあるでしょうに」
国王の御前である以上、俺は『ユース』ではなく『ユースティア様』と呼ばせてもらった。
「ふむ。ユースティアよ。お主はどう考えている? フェイ殿の事を。フェイ殿を夫として迎え入れ、エルフの国を率いる事に対して、どう思っているのだ?」
「フェイ様は私の命の恩人です。それだけではありません。大変お慕い申し上げているお方です。そして、エルフの国をよりよくしていく事ができるだけのお力を持ったお方。フェイ様さえよろしければ、私を妻として迎え入れて頂きたいと思っております」
ユースティアは顔を真っ赤にしてそう言ってくる。
「だそうだ。かといってフェイ殿にも気持ちというものがあるであろう。ユースティアの事をどう思っておるのだ? わしは自慢の娘だと思っているが、フェイ殿にとってはどうだ? わしの前だからと言って変に気を使わなくてよい。率直に言ってどうだ?」
「今までお会いしてきた女性の中でもっともお美しい方だと思っております。それだけではありません。王女としての気品に満ち溢れた、聡明な女性です。非の打ち所のない素晴らしい女性だと思っております」
これは別に国王の前だからそう言っているわけではない。純粋にそう思っての言動だった。
「すぐにという話ではない。やはりフェイ殿の気持ちの整理もあるだろう。それにフェイ殿が言っていたように簡単な問題ではないのだ。フェイ殿は人間であるし、王族の血筋ではない。確かに貴族のうちには反対してくる者も出てくるだろう。だがな。フェイ殿が今後もこのエルフの国の発展に寄与してくれば、そういった反対意見をねじ伏せる事もできるはずだ。人間である事や王族ではない事など問題ではならぬ程に。すぐにという話ではない。ゆくゆくは考えてはくれぬかっ?」
「はっ。一介の鍛冶師でしかない私にこのようなお話、勿体ない限りであります。私には鍛冶をする事しかできません。この力を持ってエルフの国の発展に尽力し、その末に結論を出させて貰えればと考えております」
「そうだ。それでよい。期待しているぞ、フェイ殿」
こうして俺はエルフ王からユースティアとの縁談を持ち出されたのである。
0
お気に入りに追加
2,546
あなたにおすすめの小説

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。

裏切られ追放という名の処刑宣告を受けた俺が、人族を助けるために勇者になるはずないだろ
井藤 美樹
ファンタジー
初代勇者が建国したエルヴァン聖王国で双子の王子が生まれた。
一人には勇者の証が。
もう片方には証がなかった。
人々は勇者の誕生を心から喜ぶ。人と魔族との争いが漸く終結すると――。
しかし、勇者の証を持つ王子は魔力がなかった。それに比べ、持たない王子は莫大な魔力を有していた。
それが判明したのは五歳の誕生日。
証を奪って生まれてきた大罪人として、王子は右手を斬り落とされ魔獣が棲む森へと捨てられた。
これは、俺と仲間の復讐の物語だ――
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

聖剣を錬成した宮廷錬金術師。国王にコストカットで追放されてしまう~お前の作ったアイテムが必要だから戻ってこいと言われても、もう遅い!
つくも
ファンタジー
錬金術士学院を首席で卒業し、念願であった宮廷錬金術師になったエルクはコストカットで王国を追放されてしまう。
しかし国王は知らなかった。王国に代々伝わる聖剣が偽物で、エルクがこっそりと本物の聖剣を錬成してすり替えていたという事に。
宮廷から追放され、途方に暮れていたエルクに声を掛けてきたのは、冒険者学校で講師をしていた時のかつての教え子達であった。
「————先生。私達と一緒に冒険者になりませんか?」
悩んでいたエルクは教え子である彼女等の手を取り、冒険者になった。
————これは、不当な評価を受けていた世界最強錬金術師の冒険譚。錬金術師として規格外の力を持つ彼の実力は次第に世界中に轟く事になる————。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

【完結】投げる男〜異世界転移して石を投げ続けたら最強になってた話〜
心太
ファンタジー
【何故、石を投げてたら賢さと魅力も上がるんだ?!】
(大分前に書いたモノ。どこかのサイトの、何かのコンテストで最終選考まで残ったが、その後、日の目を見る事のなかった話)
雷に打たれた俺は異世界に転移した。
目の前に現れたステータスウインドウ。そこは古風なRPGの世界。その辺に転がっていた石を投げてモンスターを倒すと経験値とお金が貰えました。こんな楽しい世界はない。モンスターを倒しまくってレベル上げ&お金持ち目指します。
──あれ? 自分のステータスが見えるのは俺だけ?
──ステータスの魅力が上がり過ぎて、神話級のイケメンになってます。
細かい事は気にしない、勇者や魔王にも興味なし。自分の育成ゲームを楽しみます。
俺は今日も伝説の武器、石を投げる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる