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第12話
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「お前のせいだ! 全部お前が悪いんだ!」
カルロス様は私に刃物を突き立てようとしてきます。
「アリス!」
「レナード!」
礼服を着たレナードが待合室に飛び込んできます。
「く、来るな! 来たらこの女を殺すぞ!」
カルロス様は完全に気が立っていました。しかし、レナードはそれにも関わらずこちらに向かってきます。
「アリスを放せ」
「馬鹿かお前は……わざわざ殺されに来るなんて!」
「レナード!」
私は声を張り上げます。
「死ねっ!」
グサっ!
「うっ!」
カルロスのナイフがレナードに突き刺さります。
「馬鹿めっ! 死ねばいいんだよ! お前なんか!」
「貴様! そこで何をやっている!」
「や、やばい! 逃げないと!」
屋敷にいる使用人数人がカルロスを囲い込みます。ナイフをレナードに突き刺し、武器の無くなった彼はもうどうしようもない様子でした。
「大人しくしろ!」
「は、放せ!」
使用人数人でカルロス様を押さえつけます。
「くっ! 放せぇ! 放せぇ!」
カルロス様は必死に抵抗します。当然のように使用人たちが彼を解放するはずがありませんでした。
「レナード! ……レナード!」
「ううっ……」
ナイフがお腹に刺さったレナードは実に苦しそうでした。血の水たまりを作っていきます。
「し、しっかり! しっかりして! レナード!」
私はレナードに声をかけます。
「だ、誰か! 手当を早くしてください!」
「し、しっかりしてくださいレナード様」
使用人数人がかりでレナードはベッドのある部屋に運ばれて行きます。
当然のように結婚式は中止になりました。白い紳士服も白いウエディングドレスも血の色ですっかり汚れてしまったのです。
お越しにいらしていた沢山の方々には残念ながらお帰りいただく事になりました。
◇
「……ううっ……ここは」
レナードは病院で目を覚まします。応急処置を受けたレナードは病院に運ばれていったのです。
そして三日三晩、生死の境を彷徨いました。しかし何とか彼は目を覚ましたのです。
「レナード!」
私はレナードに抱き着きます。
「アリス……」
「よかった……レナード。もう二度と目を覚まさないかと思いました」
私はレナードに抱き着きます。
「うっ……ううっ」
レナードは痛み、苦しみます。無理もありません。刺されてからまだそれほど時間が経過していないのですから。
「ご、ごめんなさい! レナード! 痛みましたか!」
私は放れます。
「……いいんだ。アリス。そういえばあの男はどうなった?」
「カルロス様なら……」
私は目を伏せます。彼は今、獄中にいます。不法侵入をした上に殺人未遂を犯したのですから。当然のようにただでは済みませんでした。当然の帰結と言えます。
「結婚式……できなかったな」
レナードは嘆きます。
「無理もありません……しばらくはじっくりと静養してください。結婚式を挙げるのはそれからでもいいんですから」
私は笑みを浮かべます。
「ああ……そうだな」
レナードが運び込まれた病院はかつて私が入院していた病院でした。
私はレナードの見舞いにかつての病院まで足を運びます。
かつての私では考えられない事でした。レナードと会える病院にいる時間がかつてないほど幸福な時間になったのです。かつて私が入院生活を送っていた時には考えられない事です。
「はい。レナード。あーん」
「あーん……って、なんだか、恥ずかしいな」
私はレナードにリンゴを食べさせます。
「何に恥ずかしがるのです。ここには私達しかいませんよ」
病室は個室だったのです。ですので何の問題もありませんでした。
「はい! あーん」
「あーん」
こうして病院にお見舞いに来る日々が退院するまで続きました。
退院できたらついに念願の結婚式ができます。
私とレナードの結婚式。あの日できなかった結婚式。
その結婚式ができる日を夢見て、私は今日も病院に足を運ぶのです。
カルロス様は私に刃物を突き立てようとしてきます。
「アリス!」
「レナード!」
礼服を着たレナードが待合室に飛び込んできます。
「く、来るな! 来たらこの女を殺すぞ!」
カルロス様は完全に気が立っていました。しかし、レナードはそれにも関わらずこちらに向かってきます。
「アリスを放せ」
「馬鹿かお前は……わざわざ殺されに来るなんて!」
「レナード!」
私は声を張り上げます。
「死ねっ!」
グサっ!
「うっ!」
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「馬鹿めっ! 死ねばいいんだよ! お前なんか!」
「貴様! そこで何をやっている!」
「や、やばい! 逃げないと!」
屋敷にいる使用人数人がカルロスを囲い込みます。ナイフをレナードに突き刺し、武器の無くなった彼はもうどうしようもない様子でした。
「大人しくしろ!」
「は、放せ!」
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「くっ! 放せぇ! 放せぇ!」
カルロス様は必死に抵抗します。当然のように使用人たちが彼を解放するはずがありませんでした。
「レナード! ……レナード!」
「ううっ……」
ナイフがお腹に刺さったレナードは実に苦しそうでした。血の水たまりを作っていきます。
「し、しっかり! しっかりして! レナード!」
私はレナードに声をかけます。
「だ、誰か! 手当を早くしてください!」
「し、しっかりしてくださいレナード様」
使用人数人がかりでレナードはベッドのある部屋に運ばれて行きます。
当然のように結婚式は中止になりました。白い紳士服も白いウエディングドレスも血の色ですっかり汚れてしまったのです。
お越しにいらしていた沢山の方々には残念ながらお帰りいただく事になりました。
◇
「……ううっ……ここは」
レナードは病院で目を覚まします。応急処置を受けたレナードは病院に運ばれていったのです。
そして三日三晩、生死の境を彷徨いました。しかし何とか彼は目を覚ましたのです。
「レナード!」
私はレナードに抱き着きます。
「アリス……」
「よかった……レナード。もう二度と目を覚まさないかと思いました」
私はレナードに抱き着きます。
「うっ……ううっ」
レナードは痛み、苦しみます。無理もありません。刺されてからまだそれほど時間が経過していないのですから。
「ご、ごめんなさい! レナード! 痛みましたか!」
私は放れます。
「……いいんだ。アリス。そういえばあの男はどうなった?」
「カルロス様なら……」
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レナードは嘆きます。
「無理もありません……しばらくはじっくりと静養してください。結婚式を挙げるのはそれからでもいいんですから」
私は笑みを浮かべます。
「ああ……そうだな」
レナードが運び込まれた病院はかつて私が入院していた病院でした。
私はレナードの見舞いにかつての病院まで足を運びます。
かつての私では考えられない事でした。レナードと会える病院にいる時間がかつてないほど幸福な時間になったのです。かつて私が入院生活を送っていた時には考えられない事です。
「はい。レナード。あーん」
「あーん……って、なんだか、恥ずかしいな」
私はレナードにリンゴを食べさせます。
「何に恥ずかしがるのです。ここには私達しかいませんよ」
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「はい! あーん」
「あーん」
こうして病院にお見舞いに来る日々が退院するまで続きました。
退院できたらついに念願の結婚式ができます。
私とレナードの結婚式。あの日できなかった結婚式。
その結婚式ができる日を夢見て、私は今日も病院に足を運ぶのです。
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