義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される

つくも

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第9話(カルロス視点)

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「くそっ!」

 アリシアのあまりの振る舞いに腹を立てたカルロスであった。その鬱憤とした気持ちを自宅でヤケ酒する事で晴らしている。

 思ったようにいかない現実に段々と嫌気がさしていた。

「なんなんだ! あのアリシアの態度! 堂々と浮気しておいて、その現場を見られたら逆上してきやがった! まるで僕の度量が小さいみたいに! くそっ!」

 カルロスは近くにあったツボを押しのける。高級なツボが地面に落ちてガシャンと割れた。この片付けを誰がやるというのか。無論、カルロスはやらない。使用人がやるのだ。
 使用人の仕事が無駄に増えるだけの実に迷惑な振る舞いであった。

「……こんなつもりじゃなかった。こんなつもりじゃ」

 カルロスは頭を抱えた。これではアリスの方がマシであった。アリスは病弱ではあったが性格はまともであった。優しい性格をしていた。

 自分の方がよほど苦しいであろうに、婚約者であった自分の体調をいつも気にかけてくれていた。

 アリシアのような我儘も言わない。アリシアと新たに婚約した今、カルロスはアリスがいかにまともな相手だったかを気づいたのだ。

「こんな事なら! こんな事ならアリスと婚約していた方がマシだった!」

 カルロスは激しく嘆いた。思いっきり後悔していた。

「そうだ……まだ何とかなるかもしれない! まだ何とか!」

 カルロスはそう考えた。アリスは気の優しい女性だ。きっと自分が誠心誠意を込めて頼み込めば、復縁する事を許してくれる可能性があった。

 図々しく都合のいい考えではあったが、カルロスはきっと何とかなると思っていた。

「アリスなら、きっと許してくれるさ。気の迷いだったんだ。僕がアリスの真なる魅力に気づいたと訴えれば。そして僕にはアリスが必要なんだといえば、きっと。また婚約者に戻れるはずだ」

 そのためには……とりあえずはあの我儘な義妹、アリシアとの婚約を破棄しなければ。

 カルロスはアリシアとの婚約を破棄するため、会いに行く事にしたのである。

 ◇

「え? なんと申しました? カルロス様」

「僕との婚約関係を解消して欲しいんだ。アリシア」

 カルロスはアリシアと二人きりで出会う。

「僕はもう君とはやっていられないよ。だから――」

「そんな、カルロス様、もう両家に話を通しているのですよ。そんな我儘が今更通るわけ――と、言いたいところですけど、カルロス様がそうまでおっしゃるなら、考えてあげなくもないですわ」

 アリシアは不敵な笑みを浮かべた。

「ほ、本当か! いいのか! アリシア! 婚約関係を解消してくれるのか!」

「ただし条件がありますわ」

「条件? どんな条件だ?」

「お金ですわ。私のいい値をお支払いください」

「お金? ……い、いくらだ? いくらなんだ?」

 がめつい女め。なんでも金か。カルロスは毒づいた。

 アリシアは金額を告げる。その金額とは大体、まともな労働者、一生分の賃金に相当する金額だ。

「ふ、ふざけるな! そんな金額を払えというのか!」

「いやなら婚約関係解消はできませんわよ。もう両家にも話を通していますもの。今更話がこじれるのはマーガレット家にとっても大きな損失ですもの」

「わ、わかった……支払おうじゃないか」

 渋々、カルロスはアリシアに膨大な金を支払う事にした。流石に手持ちの金では足りずに、ある程度を借金で賄う事になった。

 こうしてアリシアとの婚約を解消できたカルロスは、アリスの元へ向かうのではあるが、既に病院にはアリスの姿はなかった。

「え? アリスがいないんですか?」

「ええ……アリスさんなら退院して、公爵家のお屋敷にいかれましたが」

 そう看護師が答える。

「公爵家? どこの公爵家ですか? 教えてください」

 カルロスは教えてもらった公爵家の屋敷に向かう。

 詳しい事はカルロスにはわからない。だが、何となく嫌な予感がしていたのである。


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