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第8話
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こうして諸々の手続きが済み、私はレナードの屋敷に住む事ができるようになったのです。
「見てごらん、アリス。これが僕たちの新居だよ」
レナードは指を指します。目の前にあるのは立派なお屋敷でした。広くて大きなお屋敷ではありますが、庭木も綺麗に整っています。恐らくは相当な労力をかけて手入れがされているのでしょう。
私達は様々な障害を乗り越え、正式に婚約者となったのでした。私は大好きな幼馴染であるレナードと婚約者になったのです。これは私にとって、いえ、私達にとって大きな前進だったのです。
「ここで僕達は暮らすんだ」
「……ええ。楽しみです。レナード。レナードと一緒ならきっとどんな生活でも楽しいのに、こんな素敵なお屋敷で生活できるなんて。まるで夢みたいです」
大好きな人と一緒に生活できる。病院に入院していた頃は考えられなかった生活だ。私は病院でずっと孤独だったし、病を患っていた事で精神的に落ち込んでいた。未来を悲観していた。
今の私は確かに健康ではないかもしれない。普通の人のように走ったり、どこかへ行ったりもできないかもしれない。日常生活を送るだけでも介助を必要とする。
そのことはかつてと変わらない。だが、大好きな幼馴染にして、今では私の新たな婚約者。
レナードと一緒にいられるというだけで心持が全く異なったのだ。私は未来に希望を持てるようになっていた。新生活に心が躍ったのだ。
「僕もだよ。アリス。僕も君とずっと一緒にいたかったんだ。君と一緒に生活する事をこの10年間、心待ちにしていたんだよ」
「レナード……」
「アリス……」
私達は見つめあいます。私の体が健康で思うように動くのでしたら、すぐにでもレナードに抱き着き、見つめあい、そして唇を交わしたくなる、かもしれません。
それくらい、私の胸は高鳴っていたのです。きっとレナードも同じ気持ちだと私は信じています。
「ここで見つめあってても仕方ないね。屋敷の中に入ろうか。アリスの介助をする使用人も紹介したいし」
「はい。私もお世話になる旨のご挨拶をしたいです」
私はそれから屋敷の中での生活を説明された。介助の説明。そして訪問医の説明。そういった医療体制も屋敷で私が生活していく上で必要だったのです。
こうして私の新生活は始まりました。相変わらず体は病に侵されはいるため、日常生活を送るだけでも私には大きなハードルでした。
ですがレナードが隣にいるのです。私は乗り越えていけると確信しています。
様々な問題がありつつも幸せな日常を送っていた時の事でした。
私の目の前に思いもよらぬ人物が姿を現すのです。
――その人物とは。
「見てごらん、アリス。これが僕たちの新居だよ」
レナードは指を指します。目の前にあるのは立派なお屋敷でした。広くて大きなお屋敷ではありますが、庭木も綺麗に整っています。恐らくは相当な労力をかけて手入れがされているのでしょう。
私達は様々な障害を乗り越え、正式に婚約者となったのでした。私は大好きな幼馴染であるレナードと婚約者になったのです。これは私にとって、いえ、私達にとって大きな前進だったのです。
「ここで僕達は暮らすんだ」
「……ええ。楽しみです。レナード。レナードと一緒ならきっとどんな生活でも楽しいのに、こんな素敵なお屋敷で生活できるなんて。まるで夢みたいです」
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「僕もだよ。アリス。僕も君とずっと一緒にいたかったんだ。君と一緒に生活する事をこの10年間、心待ちにしていたんだよ」
「レナード……」
「アリス……」
私達は見つめあいます。私の体が健康で思うように動くのでしたら、すぐにでもレナードに抱き着き、見つめあい、そして唇を交わしたくなる、かもしれません。
それくらい、私の胸は高鳴っていたのです。きっとレナードも同じ気持ちだと私は信じています。
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私の目の前に思いもよらぬ人物が姿を現すのです。
――その人物とは。
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