義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される

つくも

文字の大きさ
上 下
8 / 12

第8話

しおりを挟む
こうして諸々の手続きが済み、私はレナードの屋敷に住む事ができるようになったのです。

「見てごらん、アリス。これが僕たちの新居だよ」

 レナードは指を指します。目の前にあるのは立派なお屋敷でした。広くて大きなお屋敷ではありますが、庭木も綺麗に整っています。恐らくは相当な労力をかけて手入れがされているのでしょう。

 私達は様々な障害を乗り越え、正式に婚約者となったのでした。私は大好きな幼馴染であるレナードと婚約者になったのです。これは私にとって、いえ、私達にとって大きな前進だったのです。

「ここで僕達は暮らすんだ」

「……ええ。楽しみです。レナード。レナードと一緒ならきっとどんな生活でも楽しいのに、こんな素敵なお屋敷で生活できるなんて。まるで夢みたいです」

 大好きな人と一緒に生活できる。病院に入院していた頃は考えられなかった生活だ。私は病院でずっと孤独だったし、病を患っていた事で精神的に落ち込んでいた。未来を悲観していた。

 今の私は確かに健康ではないかもしれない。普通の人のように走ったり、どこかへ行ったりもできないかもしれない。日常生活を送るだけでも介助を必要とする。

 そのことはかつてと変わらない。だが、大好きな幼馴染にして、今では私の新たな婚約者。

 レナードと一緒にいられるというだけで心持が全く異なったのだ。私は未来に希望を持てるようになっていた。新生活に心が躍ったのだ。

「僕もだよ。アリス。僕も君とずっと一緒にいたかったんだ。君と一緒に生活する事をこの10年間、心待ちにしていたんだよ」

「レナード……」

「アリス……」

 私達は見つめあいます。私の体が健康で思うように動くのでしたら、すぐにでもレナードに抱き着き、見つめあい、そして唇を交わしたくなる、かもしれません。

 それくらい、私の胸は高鳴っていたのです。きっとレナードも同じ気持ちだと私は信じています。

「ここで見つめあってても仕方ないね。屋敷の中に入ろうか。アリスの介助をする使用人も紹介したいし」

「はい。私もお世話になる旨のご挨拶をしたいです」

 私はそれから屋敷の中での生活を説明された。介助の説明。そして訪問医の説明。そういった医療体制も屋敷で私が生活していく上で必要だったのです。

 こうして私の新生活は始まりました。相変わらず体は病に侵されはいるため、日常生活を送るだけでも私には大きなハードルでした。

 ですがレナードが隣にいるのです。私は乗り越えていけると確信しています。

 様々な問題がありつつも幸せな日常を送っていた時の事でした。
 
 私の目の前に思いもよらぬ人物が姿を現すのです。

 ――その人物とは。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす

まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。  彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。  しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。  彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。  他掌編七作品収録。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」  某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。 【収録作品】 ①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」 ②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」 ③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」 ④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」 ⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」 ⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」 ⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」 ⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです

珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。 そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた 。

【完結】婚約破棄される未来見えてるので最初から婚約しないルートを選びます

21時完結
恋愛
レイリーナ・フォン・アーデルバルトは、美しく品格高い公爵令嬢。しかし、彼女はこの世界が乙女ゲームの世界であり、自分がその悪役令嬢であることを知っている。ある日、夢で見た記憶が現実となり、レイリーナとしての人生が始まる。彼女の使命は、悲惨な結末を避けて幸せを掴むこと。 エドウィン王子との婚約を避けるため、レイリーナは彼との接触を避けようとするが、彼の深い愛情に次第に心を開いていく。エドウィン王子から婚約を申し込まれるも、レイリーナは即答を避け、未来を築くために時間を求める。 悪役令嬢としての運命を変えるため、レイリーナはエドウィンとの関係を慎重に築きながら、新しい道を模索する。運命を超えて真実の愛を掴むため、彼女は一人の女性として成長し、幸せな未来を目指して歩み続ける。

【完結】婚約破棄されたけど、なぜか冷酷公爵が猛アプローチしてきます

21時完結
恋愛
婚約者である王太子からの突然の婚約破棄。 「お前とは政略結婚だったが、本当に愛する人と結婚する」 そう言われた公爵令嬢のエリスは、社交界の前で屈辱を味わう。だが、そこで思いがけない人物が口を開いた。 「ならば、俺と結婚しよう」 冷酷と名高い公爵、アレクシスが突如彼女に求婚したのだ。戸惑うエリスだったが、彼の真剣な眼差しに流されるように婚約を承諾することに。 しかし、結婚後の彼はなぜか溺愛モード全開! 「お前は俺のものだ。他の男に微笑むな」 「昔からお前が欲しくてたまらなかった」 冷徹な仮面を外し、愛を隠そうとしない公爵に、エリスは困惑するばかり。 さらには、婚約破棄したはずの王太子が、彼女を取り戻そうと動き出して…? これは、婚約破棄から始まる、冷酷公爵の一途な溺愛物語。 「もう絶対に離さない」 ――愛を隠していた男の、猛攻が今始まる!

【完結】真実の愛はおいしいですか?

ゆうぎり
恋愛
とある国では初代王が妖精の女王と作り上げたのが国の成り立ちだと言い伝えられてきました。 稀に幼い貴族の娘は妖精を見ることができるといいます。 王族の婚約者には妖精たちが見えている者がなる決まりがありました。 お姉様は幼い頃妖精たちが見えていたので王子様の婚約者でした。 でも、今は大きくなったので見えません。 ―――そんな国の妖精たちと貴族の女の子と家族の物語 ※童話として書いています。 ※「婚約破棄」の内容が入るとカテゴリーエラーになってしまう為童話→恋愛に変更しています。

それだけは絶対にお断りします!

きんのたまご
恋愛
絶対に離縁したい妻と妻が好きで絶対に離縁したくない夫の攻防戦。

お兄様の指輪が壊れたら、溺愛が始まりまして

みこと。
恋愛
お兄様は女王陛下からいただいた指輪を、ずっと大切にしている。 きっと苦しい片恋をなさっているお兄様。 私はただ、お兄様の家に引き取られただけの存在。血の繋がってない妹。 だから、早々に屋敷を出なくては。私がお兄様の恋路を邪魔するわけにはいかないの。私の想いは、ずっと秘めて生きていく──。 なのに、ある日、お兄様の指輪が壊れて? 全7話、ご都合主義のハピエンです! 楽しんでいただけると嬉しいです! ※「小説家になろう」様にも掲載しています。

処理中です...