義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される

つくも

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第7話(カルロス視点)

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「まったくもう……」

 カルロスは明らかに新たな婚約者であるアリシアに辟易しだしていた。やはり美人でも我儘であったり世間ずれした金銭感覚では何かと困るものだ。美人とは往々にしてそういうものだが、物事にはなんでも許容限度というものが存在する。

アリシアのズレっぷりはその許容限度を明らかに超えていたのだ。

だが、病弱だったアリスと婚約破棄をしてせっかくアリシアと新たに婚約したのだ。カルロスはアリシアの行動が改善される事を祈っていたし、何とか忍耐をするつもりだったのだ。

だが、ここでカルロスはさらにアリシアが信じられない行動を起こしている事に気づく。

 カルロスはアリシアの実家であるマーガレット家を訪問していた。

 ガサゴソ。茂みで音がしたのだ。そこで二人の男女の姿が見えた。

「やだ……もう、ルークったら」

「でもいいのか? アリシア……君には婚約者が」

「あんな堅物で器の小さい男どうでもいいのよ……ねぇ、それより続きをしましょう」

「あ、ああ……」

 そのまさかであった。アリシアは茂みで他の男と密会していたのだ。

「そこでなにをやっている!」

「ん? ……あっ! カルロス様!」

「や、やべぇ!」

 密会相手の男はカルロスを見るなり、どこかへ走り去っていた。

「何をやっていた! アリシア! 答えろ!」

 カルロスは激怒した。大抵の事は許すつもりではあったが、アリシアの振る舞いは婚約者として、その限度をはるかに超えていたのだ。

 これは明らかな浮気現場ではないか。いかに寛大に振舞おうとしても限度というものが存在している。

「アリシア、なんなんだ! 君は何をしていた!」

「……別に、何でもありませんわ。カルロス様」

 アリシアは着衣の乱れを直しつつ、素知らぬ顔をする。

「嘘だろ! 何でもない状況じゃなかった! さっきの男は誰だ?」

「そ、それは……ただのお友達ですわ」

「嘘だ! とても友達相手とは思えなかった! アリシア、君は浮気していたんだろ!」

「ふん! うるさいですわね! 肝の小さい男はこれだから! 浮気の1回や2回、許せませんの!」

 アリシアは開き直っていた。明らかにアリシアに非があるのに、まるでカルロスの度量の小ささを責めるように。

「くっ……ふざけるなよ、アリシア! ほかの事ならできるだけ我慢しようと思って君と婚約したけど、いくらなんでも、浮気は、浮気はあんまりだろうが!」

 カルロスは嘆いた。そして段々とあの病弱ではあったが、大人しくて可憐でもあった元婚約者アリスへの気持ちが大きくなっていったのである。

 カルロスの後悔はいよいよ極限にまで達する事となる。
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