義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される

つくも

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第5話(カルロス視点)

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「な、なんだって! もう一度言ってもらっていいか? アリシア」

 それはカルロスが再びアリシアと会った時の事だ。

「だからカルロス様、前買って貰った服とかバッグ、殆ど友達にあげちゃったの。だから、またお買い物に行きましょう」

 アリシアは無邪気な笑顔でおねだりしてくる。その要求の図々しさに全く自覚がないようであった。苦労を知らない箱入り娘はこれだから困る。カルロスも似たような境遇ではあるが、それでもアリシア程世間を知らないわけではなかった。

 冗談ではない。既に大金を支払わされたのだ。これで同じように負担を強いられたら、カルロスの実家がいかに裕福とはいえ、傾きかねない。

 いくら余裕があるとはいえ、その余裕にも限度があるのだ。金が湯水のように湧き上がってくるわけでもない。物事には明確な限界というものが存在する。

「だめだ」

 仕方なくカルロスはアリシアのおねだりを突っぱねた。

「えーーーーーーーーーーー!」

「だめなものはだめだ。君はこの前いくら使ったかわかっていないだろう? 普通の労働者が10年は働かなければ得られない金額を1日で使ったんだぞ。君はただの一日たりとも働いた事がないだろう」

 とはいえ、そう責めているカルロスはろくに自分で働いた事もない。親の脛をかじているボンボンである事は一切否定できない。

「アリシア、君は労働の大変さを知らないんだ。一日たりとも働いた事がないだろう? 恐らく君は一日たりとも労働に耐えられないだろう。それが10年続くと考えてみろ。お金は貴重なんだ。その事をわかっているのか?」

 カルロスはアリシアのあまりの我儘っぷり、金銭感覚の異様さに気づき、辟易していた。
 
 とても我慢しきれなくなったカルロスは思わずアリシアに本音を告げる。

「ふん! ……わかりましたわ。カルロス様」

 アリシアはわかりやすくへそを曲げた。そしてカルロスの元を去っていった。

 機嫌を損ねたとはカルロスは思った。だが、婚約者という事はゆくゆくは結婚して妻となるという事だった。妻となる人間がそう我儘でも金銭感覚が異様では敵わない。
何事も限度というものがある。無論人間は完璧ではない。多少ならば許されてしかるべきであろう。
だがアリシアはその限度を軽く飛び越していた。

これに懲りて少しはアリシアが改心して大人しくなる事を望んだカルロスではあるが、アリシアの奔放ぷりは留まる事を知らなかった。

カルロスをさらなる後悔が襲う。
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