義妹に婚約者を寝取られた病弱令嬢、幼馴染の公爵様に溺愛される

つくも

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第1話

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「アリス、君との婚約を破棄させてくれ」

 私は病室で婚約者である伯爵家のご子息、カルロス様にそう告げられるのです。

 私の名はアリス・マーガレット。マーガレット家の令嬢ではあるのですが、最近病気がちで病院にいる事が殆どです。

今日は婚約者であるカルロス・ケンブリッジ様がお見舞いに来てくれたと思っていたのですが、切り出された言葉は予想外のものでありました。

「どうしてなのですか? なぜ急に婚約破棄なのだと」

「そんな事はひとつだろう? アリス、君が病気を患っているからだよ」

 確かに私は病を患ってはおります。ですが、誰だって好きで病にかかるわけでもありません。

「君がその様子では僕はどこにも遊びに行く事もできない。その様子では君に僕の妻は務まらないよ」

「そんな……カルロス様」

 病める時に支えるのが、本当の婚約者というものではないのですか。私は突然の婚約破棄の申し出に大変なショックを受けました。

「君よりも、君の義妹のアリシアの方が僕には相応しいよ。アリシアの方が健康な身体をしているからね。どこに行くのも自由にできるし、きっとアリシアなら健康な世継ぎを産んでくれる事だろう」

「そ、そんな……あまりに身勝手すぎます。長年、婚約者であった私に対して、それはあんまりではありませんか」

「とにかく、納得してくれよ。アリス。僕の心はもう君にはないんだ。君の実家であるマーガレット家にはうちから婚約解消の連絡はしておくよ」

 もはやどうしようもないようでした。確かにカルロス様のお気持ちは既に私にはない様子。

でもあんまりではないですか。私は御覧の通り、病気で病院から一歩も出られないのです。いつ完治するかもわからぬ不治の病を患っている中、心の支えであったカルロス様までいなくなる。

それでどれほど私が不安になる事か。ですが仕方ないのです。人の気持ちというものはどうしようもなく移ろいやすいもの。

私はカルロス様の申し出を受け入れざるを得ませんでした。

「わかりました……カルロス様の気持ちが既に私にないのでしたら仕方ありません。婚約破棄の申し出、お受けします」

「ありがとう、アリス、これで遠慮なく、義妹のアリシアと婚約できるよ。ふふふっ! 君と婚約していた時はどこにも行けなかったけど、これからはアリシアとどんなところにだって行けるよ。毎度、見舞いに行かなきゃで僕もストレスだったんだよなぁ」

 カルロス様は病気の私を責めてきました。

「そんな……誰も病気になりたくてなっているわけではありません。そのような口ぶりはあんまりではありませんか」

「へへっ。そうだったか。それじゃあ、アリス。君の幸運を祈るよ。これから僕はアリシアとデートしてくるから」

 身勝手な事を言い残し、カルロス様は私の元を去っていきます。

 こうして私は婚約破棄をされたのです。





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