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ラインハルト王子が国王を説得してくれます
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「……なんだ? ラインハルト」
「父上」
私達は再び国王陛下の前に立つことになるんです。今度は隣にラインハルト王子もいます。その点が前回とは異なる事です。
「ラインハルト……調子を崩したそうだが、無事だったのか!?」
「国王! あんた、自分の息子だろ! 仕事が忙しいのかもしれねぇけどよ! 顔くらい出したらどうなんだよ!」
レオ王子は言い放ちます。
「口の利き方はなっていませんが、私も同感です。実の息子が重篤な状態であるにも関わらず、親としていかがなものでしょうか?」
エル王子も同調します。確かに私もそう思いますが、その通りの事でも口に出すと問題になる時があります。黙っておくに限ります。沈黙は金なのです。
「ふざけるな! 余所者が出しゃばってきて何を言っておる! 大体、わしは国王だ! 医療の専門家でもないのに、わしが顔を見せたところで息子が治るわけでもあるまい! わしは国の仕事でやる事が山盛りなのじゃ!」
「それはそうかもしれません。父上。父上は自国の事で頭がいっぱいなのです。そして余裕というものを欠いているのです」
「うむ……なんじゃ、ラインハルト! 貴様は何が言いたいのだ!」
「父上! どうか再びこの者たち! 隣国ルンデブルグからの使者、エル王子とレオ王子、そして薬師のアイリス様のお言葉を聞いてください! 確かにこの度の戦争は我々の王国には実害のない可能性があります! 確かに対岸の火事です!」
「そうだ! その通りだ! 対岸の火事だ! そうであるが故に愛する自国民の兵士を危険に晒すわけにもいかまい! 兵士は確かに戦いに出向くものだ! だがそれはあくまでも自国を守る為に戦うのだ! 決して他国を守る為ではない!」
「ですが父上! いえ! 国王陛下! 対岸の火事とはいえ、火は飛び火してくるものです! 今ここで帝国の侵略戦争の出鼻を挫かねば、その戦火の炎は飛び火し、必ずしや我が国にも降り注いでくるでしょう! そしてその被害は兵士にとどまらないのです。何の力も持たない女子供にまで及ぶことでしょう!」
「それはあくまでも可能性の話じゃ! 今すぐにではない!」
「今すぐではなくとも、いずれは起こりうる現実です! 国王陛下は帝国が隣国ルンデブルグを植民地化した後、どうするとお考えですか? そこで満足するとでも! 人間の欲求は無限です! とどまる事を知らない」
「うむ……確かにそうだ。強欲な帝国がそこで侵略戦争を止めるとは思わない。奴らはもっと欲しがるに決まっているのだ」
「その通りです! 国王陛下! 我々の国だけでは強大な帝国には歯向かえないかもしれない! しかし二つの国が手を取り合えば必ずや帝国の脅威を退けられるはずです! 一本の矢よりも二本の矢が結束した時の方が矢は強く、折れづらいはずです!」
「ふむ……それもそうだな。ふっ。ラインハルトよ。貴様、ただの小僧だと思っていたが、言うようになったものだ。仕事にかまけてばかりでろくに子育てなど協力したこともないが、親はいなくても子は育つとはよく言ったものだ」
国王陛下は笑います。何となくその笑みは嬉しそうです。なんだかんだで子供の成長を親は喜ばしく思うのでしょう。
「良いだろう! この件はお前に任せるとしよう! 必要なだけの兵力をお前に貸し与える! ラインハルト! お前が部隊を率いろ!」
「ありがとうございます! 国王陛下!」
「やった! アイリスやったぞ!」
「ええ。やりましたね。ラインハルト王子が説得してくださいました」
「ああ……やったな。これで帝国に対して僅かではあるが勝機が見いだせた。連中の好きにはさせられない。あいつ等の暴挙を僕達がここで止めるんだ」
こうしてルンデブルグは隣国アーガスから援軍を借り受ける事ができたのでした。
その対価として資金援助などをしなければならなくなりましたが、今はとにかく援軍を期待できるようになったという事を、私達は素直に喜ぶのでした。
「父上」
私達は再び国王陛下の前に立つことになるんです。今度は隣にラインハルト王子もいます。その点が前回とは異なる事です。
「ラインハルト……調子を崩したそうだが、無事だったのか!?」
「国王! あんた、自分の息子だろ! 仕事が忙しいのかもしれねぇけどよ! 顔くらい出したらどうなんだよ!」
レオ王子は言い放ちます。
「口の利き方はなっていませんが、私も同感です。実の息子が重篤な状態であるにも関わらず、親としていかがなものでしょうか?」
エル王子も同調します。確かに私もそう思いますが、その通りの事でも口に出すと問題になる時があります。黙っておくに限ります。沈黙は金なのです。
「ふざけるな! 余所者が出しゃばってきて何を言っておる! 大体、わしは国王だ! 医療の専門家でもないのに、わしが顔を見せたところで息子が治るわけでもあるまい! わしは国の仕事でやる事が山盛りなのじゃ!」
「それはそうかもしれません。父上。父上は自国の事で頭がいっぱいなのです。そして余裕というものを欠いているのです」
「うむ……なんじゃ、ラインハルト! 貴様は何が言いたいのだ!」
「父上! どうか再びこの者たち! 隣国ルンデブルグからの使者、エル王子とレオ王子、そして薬師のアイリス様のお言葉を聞いてください! 確かにこの度の戦争は我々の王国には実害のない可能性があります! 確かに対岸の火事です!」
「そうだ! その通りだ! 対岸の火事だ! そうであるが故に愛する自国民の兵士を危険に晒すわけにもいかまい! 兵士は確かに戦いに出向くものだ! だがそれはあくまでも自国を守る為に戦うのだ! 決して他国を守る為ではない!」
「ですが父上! いえ! 国王陛下! 対岸の火事とはいえ、火は飛び火してくるものです! 今ここで帝国の侵略戦争の出鼻を挫かねば、その戦火の炎は飛び火し、必ずしや我が国にも降り注いでくるでしょう! そしてその被害は兵士にとどまらないのです。何の力も持たない女子供にまで及ぶことでしょう!」
「それはあくまでも可能性の話じゃ! 今すぐにではない!」
「今すぐではなくとも、いずれは起こりうる現実です! 国王陛下は帝国が隣国ルンデブルグを植民地化した後、どうするとお考えですか? そこで満足するとでも! 人間の欲求は無限です! とどまる事を知らない」
「うむ……確かにそうだ。強欲な帝国がそこで侵略戦争を止めるとは思わない。奴らはもっと欲しがるに決まっているのだ」
「その通りです! 国王陛下! 我々の国だけでは強大な帝国には歯向かえないかもしれない! しかし二つの国が手を取り合えば必ずや帝国の脅威を退けられるはずです! 一本の矢よりも二本の矢が結束した時の方が矢は強く、折れづらいはずです!」
「ふむ……それもそうだな。ふっ。ラインハルトよ。貴様、ただの小僧だと思っていたが、言うようになったものだ。仕事にかまけてばかりでろくに子育てなど協力したこともないが、親はいなくても子は育つとはよく言ったものだ」
国王陛下は笑います。何となくその笑みは嬉しそうです。なんだかんだで子供の成長を親は喜ばしく思うのでしょう。
「良いだろう! この件はお前に任せるとしよう! 必要なだけの兵力をお前に貸し与える! ラインハルト! お前が部隊を率いろ!」
「ありがとうございます! 国王陛下!」
「やった! アイリスやったぞ!」
「ええ。やりましたね。ラインハルト王子が説得してくださいました」
「ああ……やったな。これで帝国に対して僅かではあるが勝機が見いだせた。連中の好きにはさせられない。あいつ等の暴挙を僕達がここで止めるんだ」
こうしてルンデブルグは隣国アーガスから援軍を借り受ける事ができたのでした。
その対価として資金援助などをしなければならなくなりましたが、今はとにかく援軍を期待できるようになったという事を、私達は素直に喜ぶのでした。
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