嘘つきの義妹に婚約者を寝取られ、婚約破棄されましたが、何故か隣国の王子に求婚されています。私の作った薬が必要と言われても、もう遅いです!

つくも

文字の大きさ
上 下
44 / 57

ロズワール様は変わり果ててしまっていました

しおりを挟む
「ど、どうしてなのです!? どうしてロズワール様がこんなことに!」

 私は変わり果てたロズワール様を見て、驚いてしまいました。

「アイリスか……」

「……ん? アイリス、この汚いおっさんと知り合いなのか?」

「レオ、流石に失礼だろ」

「この方は私の婚約者だったロズワール様という方です。ディアンナに嘘をつかれ、婚約破棄をされてしまいましたが……」

 今ではもう遠い思い出です。そんなに前ではない。せいぜい数か月くらい前の出来事なのですが、もう何年も経っている気がしました。

 それだけ色々な出来事があったからに違いありません。

「アイリスはこんな浮浪者みたいなおっさんと婚約してたのか?」

「レオ! 口を慎め!」

 エル王子は怒鳴ります。普段は温厚な方ですが、やはり肉親相手では態度が違います。良くも悪くもそれが近親者という事なのでしょう。

「いえ、ロズワール様は名家の嫡男のお方でした。身なりの整った素敵なお方で」

「それが一体、どうしてこんなことに?」

「私が聞きたいくらいです」

「アイリス? 知りたいか!? どうして僕がこんな事になったのかを!」

 ロズワール様は語り始めます。

 あれからロズワール様とディアンナの新たな婚約者であるアンナ。その二人及び肉親が件の伝染病にかかったそうです。その結果ロズワール様一家は私の処方した薬を購入するために多額の費用を捻出する必要がありました。

 ディアンナと同じです。その結果としてロズワール様はありとあらゆる私財を失い、こうして路上生活者になってしまったそうです。

 なんという転落劇でしょうか。流石に私も想像する事すらできませんでした。

「どうだ!? 惨めだろ! 今の僕は!?」

「そ、そんな惨めだなんて!」

「アイリス! 内心お前も僕を見下しているだろ!? 隣にいる美しい男達はなんだ!? お前の新しい婚約者か!」

「婚約者ではありません。隣国であるルンデブルグのエル王子とレオ王子です。私は王宮で薬師として働いているのです」

「へー……王子ね。随分違いだな。僕はこんなにも落ちぶれたのに、アイリス、君は随分と良い生活をしているようだね。アイリス、君、僕との婚約が破棄されてよかったと思っただろ? 今君は心の中で僕を笑っているだろ!?」

「そ、そんな事ないです」

「嘘だ」

 ロズワール様は私に掴みかかってきます。目が怖いです。

「おっさん、被害妄想も大概にしろよ。アイリスが怖がってるだろ」

 レオ王子がロズワール様を引きはがします。

「くっ。なあ! アイリス、元婚約者のよしみでお願いがあるんだ」

「お願いですか?」

「金だよ! 金を貸してくれないか! 今日の飯にも僕は困ってるんだよ!」

「貸すって……」

 路上生活をしているロズワール様にとても返すアテがあるとは思えません。これではくれてあげるようなものです。

「ほらよ」
 
 レオ王子は金貨を道に転がします。コロコロと金貨が転がっていくのです。

「わっ! 金貨だっ! 待て! 待てぇ!」

「おっさん、これ持って失せな。それでもう二度とアイリスには近づくな」

「拾うな! 拾うな! その金貨は僕のだぞ!」

 ロズワール様は金貨を必死に追いかけ、そして覆いかぶさるのです。誰にも奪われないように。

「へへっ! これでしばらく生活できそうだ!」

 目が血走っています。さらには食事を想像して唾液まで垂れ流しています。まるで別人です。

 衣食住が保証されなくなることで、人間はここまで品性がなくなってしまうというのでしょうか。
 
 とてもかつてのロズワール様と同一人物とは思えません。

「いくぞ……アイリス。あのおっさんに付き合っててもいい事なんてない。不愉快なだけだし、時間の無駄だ」

「はい……」

 こうして私はロズワール様から離れていくのです。それから彼がどうなったのか、私には知る由もありませんでした。

 



しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた

菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…? ※他サイトでも掲載中しております。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

【短編】捨てられた公爵令嬢ですが今さら謝られても「もう遅い」

みねバイヤーン
恋愛
「すまなかった、ヤシュナ。この通りだ、どうか王都に戻って助けてくれないか」 ザイード第一王子が、婚約破棄して捨てた公爵家令嬢ヤシュナに深々と頭を垂れた。 「お断りします。あなた方が私に対して行った数々の仕打ち、決して許すことはありません。今さら謝ったところで、もう遅い。ばーーーーーか」 王家と四大公爵の子女は、王国を守る御神体を毎日清める義務がある。ところが聖女ベルが現れたときから、朝の清めはヤシュナと弟のカルルクのみが行なっている。務めを果たさず、自分を使い潰す気の王家にヤシュナは切れた。王家に対するざまぁの準備は着々と進んでいる。

【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。 わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。 サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。 「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」 レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。 オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。 親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか

あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。 「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」 突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。 すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。 オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……? 最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意! 「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」 さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は? ◆小説家になろう様でも掲載中◆ →短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます

処理中です...