42 / 57
【元婚約者SIDE】ロズワールの家、破綻する
しおりを挟む
あれからの事であった。
ロズワールがディアンナとの婚約を破棄したのは前の通りである。
あれからロズワールはお見合いで知り合った令嬢と懇意になっていた。
「やだもー……ロズワール様ったら」
「はは……アンナ、君が可愛いからだよ」
「そ、そんなもう……」
ロズワールと見合い相手のアンナは知り合ってすぐに婚約した。ロズワールにとっては三人目の婚約者だ。いい加減、婚約ではなく、その先に進みたいとロズワールは考えていた。
それはロズワールとアンナが公園で人目も憚らずにいちゃついていた時の事でした。
「でも嫌ですわ、ロズワール様。世の中、何かと暗い話題ばかりで。噂を知ってます事?」
「噂?」
「なんでも隣国のルンデブルグと帝国ビスマルクが戦争を始めるそうですのよ。嫌ですわね。戦争なんて。人が死ぬのは嫌ですわ。血生臭くって」
「そうだな……その通りだよ」
「それにもしかしたら戦火はこちらの国にまで飛び火してくるかもしれないではないですか。そうなると対岸の火事では済みませんもの」
ロズワールはそれなりの名家の嫡男である。故に戦争が起こったとしても自分には関係ない事と思っていた。
地獄の沙汰も金次第。それなりの金を詰めば、例え徴兵されるにしてもそれを回避できるとも考えていた。
自分が戦争に直接行く事はない。そう他人事のように考えていた。
「それに戦争だけではありませんわ。よく話題に上がる伝染病もそうです」
正体不明の伝染病。主な治療方法は未だ開発されていない。かかったら最後、自然治癒する可能性はさほどなく、死亡する確率が非常に高い流行り病である。
「嫌になる話題ばかりですわ」
「そうだね。アンナ。けど君となら僕はどんな困難も乗り越えていける気がするよ」
「ロズワール様。わたくしもそう思いますわ」
「アンナ」
「ロズワール様」
二人は見つめ合う。目を閉じた。そして自然と唇が近づいてくる。
――だが、その時の事であった。
「ごほっ! ごほっ! げほっ! ごほっ!」
アンナが突然咳き込み始めた。それも激しい咳である。
「どうしたんだ? アンナ!」
ロズワールはアンナの身を案じた。
「なんでもありませんわ……ロズワール様。ごほっ! ごほっ!」
なんでもないようには思えない。アンナの様子は。話題にも出ていた流行り病。そういえば、その初期症状のひとつとして激しい咳があったそうだ。
そしてその伝染病は人に感染する事も判明している。
「ごほっ! ごほっ!」
ロズワールもまたアンナのように咳き込み始めた。
「ま、まさか!」
ロズワールは恐れ、慄いた。そう、この時ロズワールはアンナと同じく、件の流行り病にかかったのである。
その後の事であった。ロズワールの一家はそろってディアンナ達と同じように流行り病にかかり、その結果アイリスの作った薬を闇市場から高値で購入せざるを得なくなった。
その費用を捻出するためにロズワール家は屋敷を売り払わなければならず、結果として一家は破綻する事となった。
ロズワールはディアンナと同じように落ちぶれていく事となったのである。
当然のようにその新たな婚約者アンナとの婚約が破談になった事は言うまでもない事であった。
ロズワールがディアンナとの婚約を破棄したのは前の通りである。
あれからロズワールはお見合いで知り合った令嬢と懇意になっていた。
「やだもー……ロズワール様ったら」
「はは……アンナ、君が可愛いからだよ」
「そ、そんなもう……」
ロズワールと見合い相手のアンナは知り合ってすぐに婚約した。ロズワールにとっては三人目の婚約者だ。いい加減、婚約ではなく、その先に進みたいとロズワールは考えていた。
それはロズワールとアンナが公園で人目も憚らずにいちゃついていた時の事でした。
「でも嫌ですわ、ロズワール様。世の中、何かと暗い話題ばかりで。噂を知ってます事?」
「噂?」
「なんでも隣国のルンデブルグと帝国ビスマルクが戦争を始めるそうですのよ。嫌ですわね。戦争なんて。人が死ぬのは嫌ですわ。血生臭くって」
「そうだな……その通りだよ」
「それにもしかしたら戦火はこちらの国にまで飛び火してくるかもしれないではないですか。そうなると対岸の火事では済みませんもの」
ロズワールはそれなりの名家の嫡男である。故に戦争が起こったとしても自分には関係ない事と思っていた。
地獄の沙汰も金次第。それなりの金を詰めば、例え徴兵されるにしてもそれを回避できるとも考えていた。
自分が戦争に直接行く事はない。そう他人事のように考えていた。
「それに戦争だけではありませんわ。よく話題に上がる伝染病もそうです」
正体不明の伝染病。主な治療方法は未だ開発されていない。かかったら最後、自然治癒する可能性はさほどなく、死亡する確率が非常に高い流行り病である。
「嫌になる話題ばかりですわ」
「そうだね。アンナ。けど君となら僕はどんな困難も乗り越えていける気がするよ」
「ロズワール様。わたくしもそう思いますわ」
「アンナ」
「ロズワール様」
二人は見つめ合う。目を閉じた。そして自然と唇が近づいてくる。
――だが、その時の事であった。
「ごほっ! ごほっ! げほっ! ごほっ!」
アンナが突然咳き込み始めた。それも激しい咳である。
「どうしたんだ? アンナ!」
ロズワールはアンナの身を案じた。
「なんでもありませんわ……ロズワール様。ごほっ! ごほっ!」
なんでもないようには思えない。アンナの様子は。話題にも出ていた流行り病。そういえば、その初期症状のひとつとして激しい咳があったそうだ。
そしてその伝染病は人に感染する事も判明している。
「ごほっ! ごほっ!」
ロズワールもまたアンナのように咳き込み始めた。
「ま、まさか!」
ロズワールは恐れ、慄いた。そう、この時ロズワールはアンナと同じく、件の流行り病にかかったのである。
その後の事であった。ロズワールの一家はそろってディアンナ達と同じように流行り病にかかり、その結果アイリスの作った薬を闇市場から高値で購入せざるを得なくなった。
その費用を捻出するためにロズワール家は屋敷を売り払わなければならず、結果として一家は破綻する事となった。
ロズワールはディアンナと同じように落ちぶれていく事となったのである。
当然のようにその新たな婚約者アンナとの婚約が破談になった事は言うまでもない事であった。
0
お気に入りに追加
3,654
あなたにおすすめの小説
[完結]本当にバカね
シマ
恋愛
私には幼い頃から婚約者がいる。
この国の子供は貴族、平民問わず試験に合格すれば通えるサラタル学園がある。
貴族は落ちたら恥とまで言われる学園で出会った平民と恋に落ちた婚約者。
入婿の貴方が私を見下すとは良い度胸ね。
私を敵に回したら、どうなるか分からせてあげる。
断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた
リオール
恋愛
だから?
それは最強の言葉
~~~~~~~~~
※全6話。短いです
※ダークです!ダークな終わりしてます!
筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。
スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。
※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
ある公爵令嬢の生涯
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。
妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。
婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。
そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが…
気づくとエステルに転生していた。
再び前世繰り返すことになると思いきや。
エステルは家族を見限り自立を決意するのだが…
***
タイトルを変更しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる