上 下
19 / 57

レオ王子に突然キスをされてしまいます

しおりを挟む
【第二王子レオ視点】

 日の光が差し込んできた。チュンチュンチュン。小鳥のさえずりが聞こえてくる。

「うっ……俺は」

 レオは目を覚まします。体には包帯が巻かれていた。

「俺は……そうだ。あの時軍事演習の時俺は、馬に吹き飛ばされて、それで」

 最後に覚えている光景。それは杭に落ちる自分の姿。

「すーっ……すーっ……すーっ」

 規則正しい寝息が聞こえてきた。ベッドに顔を伏せて眠っていたのは例の彼女であった。

「こいつは……あの地味女……俺をずっと看病してくれていたのか」

「はい。その通りです。レオ王子」

「お前は……ヴィンセント」

 レオの前にヴィンセントが姿を現す。

「彼女は付きっ切りであなたを看病していたのです。様態が落ち着いたから使用人が代わるといったのですが、様態が急変するかもしれないと一晩中看病を代わりませんでした。その結果、朝には疲れ果てて眠ってしまっていたのです」

「俺は……この女に助けられたのか」

「ええ。その通りです。ですからどうか命の恩人を『地味女」など呼ばない事です。いくら王子でもバチが当たりますよ。それではしばらく彼女の事はそのまま眠らせてあげてください。王子の看病で余程疲れているようですから」

 そういってヴィンセントは去っていく。

「俺は……間違っていたのかもしれねぇな。兄貴の事も、この女の事も」

「すーっ……すーっ……すーっ」

 規則正しい寝息。愛らしく無邪気な寝顔にレオは微笑を浮かべた。

「ったく、この地味女、そんな寝方してると風邪ひくぞ」

 レオは羽織ものをかける。

「って、また『地味女』って言っちまったな。アイリスだったか」

 レオは笑った。

 ◇

「うっ……ううっ……ここは。私、眠っていたのですか」

 私はどうやらレオの看病をしていた時に眠むってしまっていたようです。私は目を覚まします。

「よっ。おはようアイリス」

 レオ王子が私にそう挨拶をしてきます。

「レオ王子……体の具合はよくなったんですか?」

「ああ。見ての通りだ。ピンピンしてるぜ」

 レオは無理に体を動かそうしていました。元気だというアピールがしたいようです。

「よかった。ですが無理をしないでください。それだけの重傷だったのですから」

「アイリス、ありがとうな。あれだけこっぴどく地味だのなんだの言っていた俺を助けてくれて、本当感謝しているよ」

「何を言っているんですか。人の命を助けるのは薬師として当然の事です。それに少し悪口言われたくらい平気です。そういう事は言われ慣れてますから。逆に久しぶりだったんで新鮮なくらいでした」

 私は笑みを浮かべます。ストレス耐性ができた事に関してだけは義妹と継母に感謝して良いところかもしれません。

「それとすまなかったな。俺達とお前じゃ立場が違うとかいろいろ、偉そうにひどい事言って」

「何を言っているんですか。レオ様は王子ですし。私はただの雇われの薬師です。使用人ではないかもしれませんが、立場の違いはあって当然ですよ」

「立場の違いか……確かに兄貴の気持ちが少しわかってきた気がするよ」

「え? 何がわかったんですか?」

「アイリス」

「えっ!? きゃっ!?」

 レオ王子はいきなり私を抱きしめてきました。な、なんでしょうか。命が救われてそんなに嬉しかったんでしょうか。それにしてもいきなりの事なのでとてもびっくりしてしまいます。さらには心臓もとてもドキドキとしてしまうのです。

 無理もありません。レオもエルとはタイプは違いますが、とびっきり素敵な王子様である事に変わりはないのですから。

「な、何をするんですか、レオ王子。んっ、んんっ!」

 驚きました。レオ王子はいきなり私の唇に――自分の唇を重ねてきたのです。つまりはキスなのです。キス。私は今までキスをした事がありませんでした。つまりはファーストキスです。あまりにいきなりの事すぎてびっくりでした。

 私の頭の中が真っ白になります。レオ王子は唇を離しました。

「えっ……な、何をいきなり……するんですか?」

「兄貴になんてゆずらねぇ。アイリス。俺の女になれ」

 そう突然に告白されてしまいます。

「えっ!? どういう事ですか!? レオ王子」

「だから、何度も言わせんな。恥ずかしいんだから。俺の女になれ。俺のモノになれって言ってんだよ」

「それは妾とか……体だけの都合のいい女になれって事ですか?」

「違うっての。そういうのじゃない。だからアイリス、一度しか言わないからよく聞けよ」

 レオ王子は告げてきます。

「結婚して俺の嫁になれって言ってるんだ」

 どうやら間違いないです。これは間違いなく求婚です。

「えっ、ええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 私は思わず叫びました。王宮中に響き渡りかねないほどの二度目の絶叫です。叫ばざるを得なかったのです。だってまさか人生で王子様から二度も求婚されるとは思ってもみなかったのですから。
しおりを挟む
感想 121

あなたにおすすめの小説

私が妻です!

ミカン♬
恋愛
幼い頃のトラウマで男性が怖いエルシーは夫のヴァルと結婚して2年、まだ本当の夫婦には成っていない。 王都で一人暮らす夫から連絡が途絶えて2か月、エルシーは弟のような護衛レノを連れて夫の家に向かうと、愛人と赤子と暮らしていた。失意のエルシーを狙う従兄妹のオリバーに王都でも襲われる。その時に助けてくれた侯爵夫人にお世話になってエルシーは生まれ変わろうと決心する。 侯爵家に離婚届けにサインを求めて夫がやってきた。 そこに王宮騎士団の副団長エイダンが追いかけてきて、夫の様子がおかしくなるのだった。 世界観など全てフワっと設定です。サクっと終わります。 5/23 完結に状況の説明を書き足しました。申し訳ありません。 ★★★なろう様では最後に閑話をいれています。 脱字報告、応援して下さった皆様本当に有難うございました。 他のサイトにも投稿しています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

お馬鹿な聖女に「だから?」と言ってみた

リオール
恋愛
だから? それは最強の言葉 ~~~~~~~~~ ※全6話。短いです ※ダークです!ダークな終わりしてます! 筆者がたまに書きたくなるダークなお話なんです。 スカッと爽快ハッピーエンドをお求めの方はごめんなさい。 ※勢いで書いたので支離滅裂です。生ぬるい目でスルーして下さい(^-^;

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

処理中です...