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私は偽物の婚約者を演じます
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私達はホテルのロビーでヴィンセントの両親と面会します。
「……きたきた。ヴィンセント。だ、誰なんだ!? その女性は」
ヴィンセントの父親。流石にヴィンセントの父親だけあって若くてかっこいい素敵なお父さんだった。
「ま、まあ。誰なのヴィンセント。その女性は?」
お母さま――これまた大きい子供がいるとは思えないほど若くて綺麗な麗人であった。
二人とも驚きます。当然です。なぜなら両親には全く話を通していないのです。驚くのも当然の話と言えましょう。
「はじめまして。アイリス・ギルバルトです」
「彼女は同じ宮廷で働いている薬師のアイリスさんです」
「そ、そうですか……私がヴィンセントの父です」
「母です……」
「そ、それでどういう関係なんだ? これから見合いなのはわかっているだろう? なぜその女性を!?」
当然のようにヴィンセントの両親もただならぬ意味を感じ取っていた。だが一応は口で聞いておかなければおさまりがつかないのだ。
「お父様、お母様。彼女は私の婚約者なのです」
「「婚約者!?」」
両親は驚いたように口を開ける。
「はい。婚約者です」
「で、でもどうしていきなり」
「あなた私達に何も言っていなかったわよね」
両親は戸惑っていた。
「彼女は最近この王宮で薬師として働く事になったのです。私が彼女の専属執事に任命され、その過程でお互いに愛し合うようになり、自然と婚約を結ぶ事になった次第であります」
ヴィンセントはそう説明する。婚約した事以外は真実だった。嘘を作る時は真実の中に僅かな嘘を入れた方が良い。その方がリアリティが出るからだ。
「で、でも……どうするんだ!! そんな事知らないから僕たちも見合い相手を用意してしまっていたんだ」
「そ、そうよ。何も知らなかったから」
「見合いですから。断ればいいだけの事でしょう」
冷静にヴィンセントは告げる。
「聞き捨てなりませんわ」
その時であった。凄い美少女がやってきた。ただ目のきつい、強気そうな少女だ。
「ヴィンセント様……お初にお目にかかります。私はフランソワーズ家の令嬢。名をローズと申します」
ローズはそう挨拶してきた。
「はじめまして。ヴィンセントと申します」
「さっきから二人の様子はどことなくおかしいんですの。あなた達、本当の婚約者ですか?」
ぎくっ。という感じになった。核心をつかれたのだ。
「ええ。本当の婚約者です」
「本当にぃ~!? 私との婚約を断りたかっただけではございません事?」
正確に真実を言い当ててくる。彼女は。
「そ、そんな事は……」
「わかりました。認めて差し上げます。ただし」
彼女は条件を設けてきた。
「私の目の前で口づけをしてみてください」
く、口づけ。な、何をいっているのかしら。この娘は。それじゃあ、わ、私とヴィンセントが口づけをするって事? 私の心臓の鼓動が高まり、止まらなくなってきた。
「お互いに愛し合っているのなら、できるはずでしょう? できたら本物だと認めてあげるわよ」
「何をいっているのですか。ローズ嬢。私達は清いお付き合いをしているんです。人前で接吻などそんな破廉恥な真似到底できません」
「本当かしら。やっぱり本物の婚約者じゃないんじゃない? だからできないんじゃ? やっぱり偽物なんじゃないの?」
「くっ……」
「え?」
ヴィンセントはの顔が近づいてくる。
「す、すみません。アイリス様」
「えっ!? そんないきなり待って!! そ、そんな心の準備が!!」
ヴィンセントの顔が近づいてくる。私の心臓の音が人に聞こえるのではないかという程高まっていった。
――と、その時であった。ガシャン。花瓶が倒れる音がした。
周囲の視線が集まる。そこにいたのは。
「エル王子……」
変装したエルの姿があった。
「す、すまない。気になってつい……」
エルはそう謝ってきた。
「きゃあああああああああああああああああ!!! エル王子!」
ローズがエルに駆け寄っていく。
「すっごい、お会いしたかったです。この国にはすっごいかっこいい王子がいるって聞いていて。噂通りです。すっごい。私の理想通りの王子様です!」
ローズは目を輝かせた。
「ははっ……それは嬉しいな」
エルは愛想笑いを浮かべた。
「お父様、お母様。このように私には心に決めたお方がいます。ですから今日のところはローズ嬢を連れてお引き取りください」
「わかったわ。そうまでいうなら」
「そうだね。そうしよう」
「帰りましょうか。ローズ嬢」
「や、やだ! やだやだ! まだエル王子と一緒にいたいーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
帰る時ローズは駄々をこねていた。
「はは……」
私は笑った。こうして何とかヴィンセントのお見合い騒動は丸く収まったのである。
◇
「ありがとうございました。アイリス様。先日はご協力いただき」
後日、ヴィンセントは私にそうお礼を言ってきた。
「いえ。お役に立てたなら何よりです。ヴィンセントさんには普段助けて頂いてますので。でもヴィンセントさん、今度は偽物の婚約者ではなく、本物の婚約者を連れて行ってください。やっぱり心に決めた人をつれていくのが本当は良い事だと思います」
「それはその通りです……ですが」
「え?」
ヴィンセントは神妙な顔つきで呟く。
「心に決めた人なら既におります」
そう、呟いてきた。風が強くてよく聞き取れなかった。
「な、なにヴィンセントさん、今なんて?」
「な、なんでもありません」
割と無表情なヴィンセントは顔を赤くしていた。
それってまさか……。考えすぎよね。そうに決まっている。私はそう思いました。
こうして、王宮での幸せな生活は過ぎていくのであった。
「……きたきた。ヴィンセント。だ、誰なんだ!? その女性は」
ヴィンセントの父親。流石にヴィンセントの父親だけあって若くてかっこいい素敵なお父さんだった。
「ま、まあ。誰なのヴィンセント。その女性は?」
お母さま――これまた大きい子供がいるとは思えないほど若くて綺麗な麗人であった。
二人とも驚きます。当然です。なぜなら両親には全く話を通していないのです。驚くのも当然の話と言えましょう。
「はじめまして。アイリス・ギルバルトです」
「彼女は同じ宮廷で働いている薬師のアイリスさんです」
「そ、そうですか……私がヴィンセントの父です」
「母です……」
「そ、それでどういう関係なんだ? これから見合いなのはわかっているだろう? なぜその女性を!?」
当然のようにヴィンセントの両親もただならぬ意味を感じ取っていた。だが一応は口で聞いておかなければおさまりがつかないのだ。
「お父様、お母様。彼女は私の婚約者なのです」
「「婚約者!?」」
両親は驚いたように口を開ける。
「はい。婚約者です」
「で、でもどうしていきなり」
「あなた私達に何も言っていなかったわよね」
両親は戸惑っていた。
「彼女は最近この王宮で薬師として働く事になったのです。私が彼女の専属執事に任命され、その過程でお互いに愛し合うようになり、自然と婚約を結ぶ事になった次第であります」
ヴィンセントはそう説明する。婚約した事以外は真実だった。嘘を作る時は真実の中に僅かな嘘を入れた方が良い。その方がリアリティが出るからだ。
「で、でも……どうするんだ!! そんな事知らないから僕たちも見合い相手を用意してしまっていたんだ」
「そ、そうよ。何も知らなかったから」
「見合いですから。断ればいいだけの事でしょう」
冷静にヴィンセントは告げる。
「聞き捨てなりませんわ」
その時であった。凄い美少女がやってきた。ただ目のきつい、強気そうな少女だ。
「ヴィンセント様……お初にお目にかかります。私はフランソワーズ家の令嬢。名をローズと申します」
ローズはそう挨拶してきた。
「はじめまして。ヴィンセントと申します」
「さっきから二人の様子はどことなくおかしいんですの。あなた達、本当の婚約者ですか?」
ぎくっ。という感じになった。核心をつかれたのだ。
「ええ。本当の婚約者です」
「本当にぃ~!? 私との婚約を断りたかっただけではございません事?」
正確に真実を言い当ててくる。彼女は。
「そ、そんな事は……」
「わかりました。認めて差し上げます。ただし」
彼女は条件を設けてきた。
「私の目の前で口づけをしてみてください」
く、口づけ。な、何をいっているのかしら。この娘は。それじゃあ、わ、私とヴィンセントが口づけをするって事? 私の心臓の鼓動が高まり、止まらなくなってきた。
「お互いに愛し合っているのなら、できるはずでしょう? できたら本物だと認めてあげるわよ」
「何をいっているのですか。ローズ嬢。私達は清いお付き合いをしているんです。人前で接吻などそんな破廉恥な真似到底できません」
「本当かしら。やっぱり本物の婚約者じゃないんじゃない? だからできないんじゃ? やっぱり偽物なんじゃないの?」
「くっ……」
「え?」
ヴィンセントはの顔が近づいてくる。
「す、すみません。アイリス様」
「えっ!? そんないきなり待って!! そ、そんな心の準備が!!」
ヴィンセントの顔が近づいてくる。私の心臓の音が人に聞こえるのではないかという程高まっていった。
――と、その時であった。ガシャン。花瓶が倒れる音がした。
周囲の視線が集まる。そこにいたのは。
「エル王子……」
変装したエルの姿があった。
「す、すまない。気になってつい……」
エルはそう謝ってきた。
「きゃあああああああああああああああああ!!! エル王子!」
ローズがエルに駆け寄っていく。
「すっごい、お会いしたかったです。この国にはすっごいかっこいい王子がいるって聞いていて。噂通りです。すっごい。私の理想通りの王子様です!」
ローズは目を輝かせた。
「ははっ……それは嬉しいな」
エルは愛想笑いを浮かべた。
「お父様、お母様。このように私には心に決めたお方がいます。ですから今日のところはローズ嬢を連れてお引き取りください」
「わかったわ。そうまでいうなら」
「そうだね。そうしよう」
「帰りましょうか。ローズ嬢」
「や、やだ! やだやだ! まだエル王子と一緒にいたいーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
帰る時ローズは駄々をこねていた。
「はは……」
私は笑った。こうして何とかヴィンセントのお見合い騒動は丸く収まったのである。
◇
「ありがとうございました。アイリス様。先日はご協力いただき」
後日、ヴィンセントは私にそうお礼を言ってきた。
「いえ。お役に立てたなら何よりです。ヴィンセントさんには普段助けて頂いてますので。でもヴィンセントさん、今度は偽物の婚約者ではなく、本物の婚約者を連れて行ってください。やっぱり心に決めた人をつれていくのが本当は良い事だと思います」
「それはその通りです……ですが」
「え?」
ヴィンセントは神妙な顔つきで呟く。
「心に決めた人なら既におります」
そう、呟いてきた。風が強くてよく聞き取れなかった。
「な、なにヴィンセントさん、今なんて?」
「な、なんでもありません」
割と無表情なヴィンセントは顔を赤くしていた。
それってまさか……。考えすぎよね。そうに決まっている。私はそう思いました。
こうして、王宮での幸せな生活は過ぎていくのであった。
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